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 言うもサラナリであるが、三赤新聞筆頭・朝日新聞と私とは、デフォルトで対立状態だ。不倶戴天の的であるかどうかは朝日次第であり、戦時中は散々「軍国的提灯記事(※1)」を朝日が書いていた以上、予断は許さぬモノがあるが(※2)、現状ではそうだ。

 殊に、福島原発事故を経てなお原発推進論を公言する私と、「脱原発」の一点でスーパーゾンビ菅直人を首相をして座にあることを支持した朝日とでは、海よりも深く山よりも高い乖離がある。

そんな乖離を、改めて感じさせてくれるのが、引用した社説だ。

まずは御一読、願おうか。
 

<注釈>

(※1) その一例が大陸線での大ボラ「百人切り」報道であろう。奇跡でも起きない限り物理的に不可能な「日本刀による百人切り」を提灯記事として報じた挙げ句に、その「百人切り」実施者として刑死者を出したのは、朝日新聞の責任だ。
 
(※2) 断って置くが、私は大ボラをそのまま報道記事にしてしまった「百人切り記事」は、報道の恥だと思っている。それは「労働英雄」と同様、宣伝記事でしかない。
 私は右翼ではあるが、同時に、魂の自由を愛する者だ。
 「私は君の意見には反対だが、君がその意見を開陳する自由なら、死んでも守る。」と宣言したヴォルテールに、満腔の敬意を示す者だ。
 その意味で、朝日がその私とは天と地ほども離れた意見、私からすると暴論でしかない意見を、開陳する自由なら、「死んでも守らなければならない」とは思っている。
 実際、実行できるかは、正直、心許ないんだが。ヴォルテールに、叱られるなぁ。
 
転載開始============================================

朝日社説 発電のコスト―やはり原発は高くつく 

 http://www.asahi.com/paper/editorial20111027.html?ref=any
 原子力発電にかかる費用は、高かった。
 福島第一原発事故による損害はあまりに大きく、まだ全体を計算できない。だが、今わかっている範囲で、内閣府の原子力委員会が発電費用への上乗せがどうなるか試算した。事故のコストは電気1キロワット時あたり最大で1.2円になった。
 今回、原子炉3基で炉心溶融が起きた。日本にある約50基の原発の運転年数を足し、福島の事故炉の数で割ると、この規模の事故は平均して「原発1基あたりで、ほぼ500年に1度発生する」確率になる。その計算から割り出した。
 この事故コストを加えると、原子力発電のコストは1キロワット時あたり6.8円になる。石炭火力の5.7円や、液化天然ガス火力の6.2円を上回る。
 いずれも大ざっぱな計算であり、今後は膨大な除染もある。また、全国の原発から出る放射性廃棄物の最終処分も残り、さらに割高になるのは確実だ。
 これまで「安く、安全に大量の発電をする」と宣伝されてきた原発だが、事故の危なさに加え経済面の優位も崩れた。
 原子力委はもう一つの計算もした。日本は、使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取りだし、それを燃やす「再処理路線」をとる。これは1キロワット時あたり2円かかる。
 一方、ウラン燃料を1回だけ燃やして、廃棄物は捨てる「直接処分」の費用は半分の1円で済むことがわかった。
 この差は大きい。もし、直接処分に変えれば、発電コストは1円安い5.8円になる。
 原子力委は7年前にもこの比較をした。結果は今回とほぼ同じだったが、再処理の路線を変えなかった。理由は「政策変更コスト」だった。「過去の投資が無駄になり、新たな研究も必要だ。立地自治体との関係も悪くなる」という論法だ。
 もう同じ手は使えない。事故を経験した今は、国民の原発への不信が大きい。高い費用をかけて「ウラン燃料を少し節約する」再処理に説得力はない。
 二つのコスト計算は、数字で日本の原子力の現状を浮かび上がらせた。
 戦後一度も大きく変えることのなかった原子力政策を変更するときだ。政府のエネルギー・環境会議の責任は大きい。
 原発をなくす道に向き合うしかない。同時に、必要性が疑問になった核燃料再処理から撤退する議論も始めよう。政府は今度こそ、政策変更コストに取り組まなくてはいけない。
 その準備を始めるときだ。

古典的名著「統計で嘘をつく法」

 ダレル・ハフ著の「統計で嘘をつく法」は、もはや古典的と言って良い名著である。統計という「数学的処理」は、数学であり科学であるから「真実を伝える」と思いこまれがちであるが、種々の方法で強い的な印象を与えることは十分可能であることが、分かりやすい例示と共に示される。
 たとえば「平均所得」と言ったとき、その「平均」を「相加平均」=所得額の総計÷総世帯数 で表すのと、「最頻値」=最も多くの人がとる値(普通は幅)で表すのとでは、値も印象も多いに異なる例が「三人の大金持ち」として示される。
「統計で嘘をつく法」と言う逆説的なタイトルが意味する所は、統計と言う一見定量的であり客観的とも思えるデータも使い方次第で相当に与える印象を変えられるということである。況や、数字ならぬ定性的事象であれば、喩え事実だけ並べ立てても相当に「嘘」がつける。

で、今回取り上げたのは例に拠っての朝日社説であり、例の如くの「脱原発論」「反原発論」である。今回は、原発の発電コストが焦点である。

朝1>  今わかっている範囲で、内閣府の原子力委員会が発電費用への上乗せがどうなるか試算した。
朝2> 事故のコストは電気1キロワット時あたり最大で1.2円になった。
朝3>  今回、原子炉3基で炉心溶融が起きた。
朝4> 日本にある約50基の原発の運転年数を足し、福島の事故炉の数で割ると、
朝5> この規模の事故は平均して「原発1基あたりで、ほぼ500年に1度発生する」確率になる。その計算から割り出した。
朝6>  この事故コストを加えると、原子力発電のコストは1キロワット時あたり6.8円になる。
朝7> 石炭火力の5.7円や、液化天然ガス火力の6.2円を上回る。
朝8>  いずれも大ざっぱな計算であり、今後は膨大な除染もある。
朝9> また、全国の原発から出る放射性廃棄物の最終処分も残り、さらに割高になるのは確実だ。
朝10>  これまで「安く、安全に大量の発電をする」と宣伝されてきた原発だが、事故の危なさに加え経済面の優位も崩れた。
朝11>  原子力委はもう一つの計算もした。日本は、使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取りだし、それを燃やす「再処理路線」をとる。これは1キロワット時あたり2円かかる。
朝12>  一方、ウラン燃料を1回だけ燃やして、廃棄物は捨てる「直接処分」の費用は半分の1円で済むことがわかった。
朝13>  この差は大きい。もし、直接処分に変えれば、発電コストは1円安い5.8円になる。
 
 さて、議論を単純化するために、当該社説で朝日が上げた数値は、此の引用の範囲内で「正しい」数値であると仮定しよう。その上で、朝日社説によるならば、上記朝2>及び朝6>から「福島原発事故発生以前の原発の発電コスト」は、6.8 - 1.2 =5.6 円/kw・時 の筈である。此の数値は上記朝7>で朝日が掲げる「石炭火力の5.7円」に対して確かに安い値段であるが、その差は僅かに0.1円/kw・時 である。上記朝10>で「これまで安く、安全に大量の発電をする」と宣伝されてきた原発と言うのが此の僅かな差によるとするならば、なるほど甚だ心もとない「経済面の優位」であった事になる。
さらには、上記朝11>~朝13>で朝日自らが計算して見せるとおり、「再処理路線をやめて直接処分路線に転換」し、発電コストを1円/kw・時 引き下げたとしても、原発の発電コストは「5.8円(/kw・時 )になる」だけだから、「石炭火力の5.7円」に対して確かに高い値段であるが、その差はこれまた僅かに0.1円/kw・時 である。当該社説に掲げられた発電コストの数字が、実によく朝日主張にマッチしている事がわかる。そう、恣意的な数字ではないかと疑われるほどに。

だがまあ、此処は先に宣言したとおり朝日社説の掲げる数字に従って話を進めるとしよう。

当該社説の数字しか読まないような朝日読者ないし朝日信者であっても、次の事には気付かなければならないはずだ(※1)。即ち「発電コストが1円/kw・時 高いとされる再処理路線は、発電コストは高いかも知れないが、核廃棄物は減らすはずだ。」と言う事に。それは、コスト的にもさることながら、安全面でもメリットな筈だ。

朝14> 原子力委は7年前にもこの比較をした。結果は今回とほぼ同じだったが、再処理の路線を変えなかった。
 
と、朝日社説は国の原子力政策を批判するが、コスト的な評価が7年前と変わらないのならば、福島原発事故と再処理路線との間に直接の関係はないのだから、再処理路線を変更する理由にはなるまい。関係があるとするならば「原発事故により高くなった発電コストを削減するための脱再処理路線」でしかない。何しろ朝日の計算によっても、「脱際処理路線」により、福島事故後でも原発の発電コストは石炭火力並みで天然ガス火力よりも低い発電コストになるのだから。
 
 さらには、朝日が上記朝2>事故のコストは電気1キロワット時あたり最大で1.2円になった。」とシレッと書いてある通り、上記の発電コストは1.2円/kw・時 と言う「現状で判っている最大値」で計算している。その根拠は上記朝3>~朝5>に記してある通り、事故発生率を我が国の原発稼動開始から福島第1原発事故までの実績によって「500年に一度」と算定しての数字だ。
 「500年に一度」と言うと低い確率と思えるかも知れないが、その根拠からわかるとおり、この「500年」は正確には「500年・基」ののべ数である。現在我が国並みの50基を稼動していれば「10年に一度」と言う結構な頻度。結構な頻度なのは当たり前だ。「実績どおり」とは即ち「安全性」が全く改善されないと仮定しているのだから。
 高い事故発生率から計算すれば、発電コストの増分も大きくなるのは当然だ。

さらに言うならば、福島原発事故を経て尚安全性を現状以上に向上しないなどと言う怠慢は、どこぞの独裁国家ならいざ知らず、我が国も私も許容しない。

他の報道によれば、原子力委員会は福島事故による発電コストアップを「1キロワット時当たり、0・1~1円とすることで合意した。」とある(※2)から、此の程度の事故発生率低減=安全性向上は可能との判断であり、0.1円/kw・時 のコストアップならば、朝日社説の数値に従っても「原発の発電コスト優位は崩れた」とは言えないのである

朝14> 二つのコスト計算は、数字で日本の原子力の現状を浮かび上がらせた。
 
朝日社説は息巻く。
 だが、数値で嘘をついているのは、誰か。
 
 如何に、国民。

 

<注釈>

(※1) ああ、朝日信者にとって私は昇進署名掛け値なしの「異教徒」だから、何を言ったところで無駄かも知れないが。
 
(※2) 原発事故によるコスト上昇 1キロワット時最大1円に 原子力委が試算(10/25 11:32、10/25 17:18 更新)  http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/327558.html