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 キャッチーな、と言うよりは、トリッキーなタイトルであろう。
 
 もとい。(*1)
 
 鬼面人を驚かすような、と言うよりは、羊頭狗肉と言うべき表題であろう。それは承知の上だ。だからこそ末尾に「か?」をつけて、伝説の「東スポ」こと「東京スポーツ」の見出しを真似ているのである。(*2)
 
 ま、細かいことは後回しだ。先ずは問題の沖縄タイムス社説を、ご一読願おうか。
 

<注釈>

(*1) 何とまあ当ブログにご来訪いただいた(らしい)社会学者・加藤秀俊氏に敬意を表して。
 
(*2) 急いで付け加えるならば、私は「東スポ」の記事を、伝説としてしか知らない。
 
転載開始=========================================

沖縄タイムス社説 [普天間問題]官僚任せでは解決無理 

 http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-09-05_23026/
 2011年9月5日 09時15分
 
 野田佳彦首相は、2日の就任会見で、外交・安全保障政策について「軸となるのは日米関係」だと語り、両国の関係を「より深化、発展させていく」ことを明らかにした。
 会見では、懸案である米軍普天間飛行場の移設問題には触れていない。
 玄葉光一郎外相は外交・安保分野の経験が乏しく、農政通の一川保夫防衛相は「安全保障の素人」を自認する。
 野田首相も玄葉外相も一川防衛相も、過去の経歴からして、沖縄の基地問題に詳しいとはいえない。その分、官僚への依存度が高くなるかもしれない。
 辺野古移設に固執する政府関係者の話を注意深く追っていると、彼らの考えの中に、二つの前提があるらしいことが分かる。
 その1。仲井真弘多知事はもともと県内移設に賛成しており、手を尽くして説得し、要望通りの振興策を示せば、翻意は十分可能である、という見方。仲井真知事に対するこうした期待感は、米国政府の中にもある。
 その2。人口密集地にある普天間飛行場を返還し、代替施設を辺野古に移設することは、事故の危険や騒音などの面で確実に負担軽減につながる、という見方だ。
 この二つの前提はそれ自体、疑問点が多いが、これに財政負担の問題を加味すると、辺野古移設への疑問はますます膨らむ。
 戦況を直視せず、都合の悪い情報は排除し、「かくあってほしい」という願望に基づいて机上で作戦を立案した戦中の大本営に似ているのだ。
 その1。仲井真知事は、県内移設に反対する民意に支えられ、県民大会でも慰霊の日の平和宣言でも、「辺野古ノー」の意思を明確に表明した。名護市も支持母体の自民党県連・公明党県本も県議会野党も、こぞって知事のこの姿勢を評価している。もはや後戻りはできない状況だ。
 その2。辺野古移設は、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に象徴されるように、代替施設建設というよりも、新たな機能を付与した新基地建設というべきである。
 那覇空港の自衛隊機増強も計画されている中で、本島中央部に巨大な嘉手納基地を抱えたまま、辺野古に新基地を建設するということは、負担軽減に著しく反する。
 辺野古移設は、米軍統治以来基地の過重負担に苦しめられてきた沖縄にとっては「負担の軽減」ではなく「負担の恒久化」というしかない。
 米上院軍事委員会のレビン委員長らは、辺野古移設を「非現実的」だと指摘し、計画の見直しを提言した。財政事情が厳しいからだ。
 震災後の日本もゆとりはない。震災復興のための増税が取り沙汰され、それとは別に、社会保障制度を維持するための、消費税を想定した増税も検討されている。
 そんな折、負担軽減効果の乏しい辺野古移設のために巨額の税金を投入することが許されるのか。官僚任せにしては、普天間問題の解決はできない。国会はもっとチェック機能を発揮すべきである。
=================================転載完了

「軟化の兆候」と言えない事もない

 如何であろうか。
 
 これが沖縄タイムスの社説であると知るからこそ、「言わんとする所は「辺野古移設反対=絶対県外移設」だな。と推測が働く。が、この論説が、例えば産経の社説として、或いは朝雲新聞(*1)の社説として掲載されていたらどうであろうか。果たして、「絶対県外移設」と読み取れるだろうか。
 
 論旨を追ってみよう。
 
 導入部は野田新政権に対する苦言である。首相・外相・防衛相に「基地問題の経験が少ない」と言うのが批判の種になるのは沖縄紙ならではあるが、「外交安保分野に経験不足の外相」や「安全保障に素人と辞任する、もとい、自認する防衛相」を非難するのは私も同意できる。これらは産経でも非難しそうなところだろう。
 
 続くパラグラフでは「辺野古移設に固執する政府関係者」を槍玉に挙げ、彼ら(*2)には二つの前提条件があるようだと分析する。即ち①仲井間知事は辺野古推進派に翻意しうる。 ②辺野古移設=普天間返還であるから、基地負担は軽減される。
 
 次のパラグラフではその二つの前提条件を否定する。つまり、①仲井間知事は決して翻意しない ②辺野古にはMV-22オスプレイが配備されるぐらいだからこれは新基地の建設だ。と主張する。(*3)
 
 で、後段は、辺野古移設を財政面から否定する。平たい話、日米両政府とも懐は苦しいのだから、辺野古移設はやめてしまえと言い、国会はちゃんとチェックしろと社説を〆る。
 
 「以上おしまい」である。縦から見ても横から見ても、「普天間基地の辺野古移設」を否定しているだけで、先述の通り「県外移設」は行間ないし掲載紙を読まないと、読めない。
 
 これは、何を意味するのだろうか。
 
 「辺野古移設が出来ないのならば、デフォルト状態は普天間基地の継続使用である。」と言うのは当ブログでも何度も主張してきたところ。移設先が決まらないのだから、理の当然であろう。この場合は「日本政府としては何もしない」のだから、日本の財政的には楽になる選択である。米側の方は米軍再編との絡みがあるから一概には言えないが、辺野古移設より安く上がりそうではある。であればこそ、「鬼面人を驚かす」タイトルにもしたとおり、当該沖縄タイムス社説が「辺野古移設に反対し、普天間基地継続使用を主張している」と言う解釈も成り立ちうる。もしそうならば、俄かには信じ難い、眉に唾つけたくなるほどの、沖縄タイムスの方針転換である。先行記事とした琉球新報射設と比べると、その差はさらに際立つ。
 
思考停止は琉球新報―琉球新報社説「普天間と安保 「思考停止」から脱却を」を斬る!  
 
 だが、まあ、よくよく見ればそんな「鬼面人を驚かすような」事態ではなさそうだ。当該社説中ほどに曰く。
 
1>  辺野古移設は、米軍統治以来基地の過重負担に苦しめられてきた沖縄にとっては
2> 「負担の軽減」ではなく「負担の恒久化」というしかない。
 
即ち、沖縄が「基地の過重負担に苦しめられてきた」と言う認識や「負担の恒久化」に反対する主張は相変わらずであるし、
 
3>  那覇空港の自衛隊機増強も計画されている中で、
4> 本島中央部に巨大な嘉手納基地を抱えたまま、辺野古に新基地を建設するということは、
5> 負担軽減に著しく反する。
 
とも記述されているから、やっぱり「基地負担軽減」が金科玉条なのである。
 章題には「軟化の兆候」としたが、やっぱり沖縄タイムスは沖縄タイムスであり、三赤新聞の下っ端(*4)なのである。つまりは記事タイトルを、伝説の「東スポ」見出しになぞらえたのは、正しいということだ。
 
 まあ、そもそも論から言うと、私の考えでは、基地負担の軽減も、財政負担の軽減も、安全保障上の制約に抵触しない範囲で達成されるべき、副次目標に過ぎないのだがね。早い話が、おまけだ。
 

<注釈>

(*1) ・・・に社説ってあったっけ?
 
(*2) 私自身は政府関係者ではないが、「辺野古移設に固執して」は居るので、やはり避難の対象と考えるべきだろう。だから、此処は「我ら」と表記すべきかも知れない。
 
(*3) この主張で否定になっていると言うのも奇妙な話だ。上記①「仲井間知事がどう転ぶか」は私の知るところではないが、上記②「新基地の建設だから基地負担の軽減ではない。」と言うのは実に粗雑な議論だ。普天間基地は返還されるのだから、その新基地=辺野古の建設は基地周辺への影響のトレードオフになる筈だ。で、私はやはり「辺野古新基地建設と普天間返還がなされれば、現在よりは基地負担は軽減する。と主張する。ついでに言えば、仲井間知事の動向なんぞ、私の主張には影響していないし、前提にもしていない。
 
(*4) 兄貴分が朝日だから、多寡が知れているが。