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 中国空母「ワリャーグ(*1)」に関しては、産経報道を中心に先行記事としたが、何とまあ朝日新聞では社説に取り上げた。しかもタイトルは「今は「張子の虎」でも」と来た。
 
 これは看過もなるまい。
 
 先ずはご一読願おうか。
 
パクリ空母、発進す- http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35805898.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35805969.html
 

<注釈>

(*1) 私が中国名「施琅 Shilang 」を知りつつ、産経採用のこの呼称を使うのは、無論「我が国の縁起を担いだ」為であって「仁川に早く沈んでしまえ」と言う呪詛ではない。ま、どちらにしても、大差はないが。
 「ワリャーグ」って艦はSF空戦ゲームStar Lancerにも登場して、やっぱりやられ役だったな。
 

中国空母―今は「張り子の虎」でも

  http://www.asahi.com/paper/editorial20110817.html?ref=any
 中国初の空母が出航した。地元の大連だけでなく、中国各地で多くの人々が喝采した。
 列強の侵略を受けた記憶がまだ生々しい中国だからこそ(*1)、強国の象徴として空母が国民から歓迎されるのだろう。(*2)
 しかし、近隣国は心穏やかにはいられない。南シナ海の島々をめぐり、中国と領有権を争うベトナムなどからすれば、脅威と映るのは当然だ。
 とはいえ、この空母は旧ソ連が1980年代に建造を始めたものの、崩壊とともに投げ出された旧世代の艦である。
 全面的に改修されたようではあるが、艦載機はまだ配備されていない。エンジンやレーダーなどの性能を確認するのが当面の航行目的だ。
 毛沢東はかつて、米国の原子爆弾を「張り子の虎」と呼んだ。これに倣えば、試験航行したばかりの空母も、今の段階では「張り子の虎」に過ぎないといえるかもしれない。名前もまだつけられていない。 (*3)(*4)
 問題は、中国が今後、空母をはじめとする海軍力をどのように展開していくかだ。
 中国は経済発展とともに、世界中に「国益」を広げてきた。シーレーンや資源の確保のため、これまでも海軍力を目覚ましく増強させてきた。
 公表されていないが、上海では初の国産空母を建造中だ。試験航行している空母のデータは国産空母に活用されるという。米軍空母も目標とできる対艦弾道ミサイルも開発中だ。
 中国への警戒感から、東南アジア各国は米軍との共同軍事演習に力を入れるとともに、国防予算を増やしている。潜水艦や艦船の導入を急ぎ、装備の更新に余念がない。すでに空母を持つインドは新空母を建造中で、潜水艦の整備も進めている。 (*5)
 その一方で、各国とも中国との経済的な結びつきは強まるばかりだ。
 中国をはじめアジアの経済は大きく発展しているが、国内の経済格差は拡大している。社会保障の充実やインフラ整備に注ぐべき財源を軍備拡張に多く費やすのはいかがなものか。 (*6)
 各国とも地道な外交努力を通じて信頼醸成をめざす道を優先させるべきだ。その際、圧倒的な力を持つ中国の責任の大きさを改めて指摘しておきたい。
 日本も東シナ海で中国と対立している。南シナ海の情勢もひとごとではない。
 日米同盟を軸にアジア諸国と協調しながら中国に向き合う。その基本線を押さえたうえで、中国との直接的な関係を深める努力もこれまで以上に必要だ。 (*7)
 

<注釈>

(*1) オーイ、「列強の侵略を受けた記憶」の生々しさならば、日本以外の殆どのアジアの国は共通だ。中国ばかりが特別ではない。
 
(*2) 奇妙な解釈だ。ならばアジアでもう一国の空母保有国がタイなのは何故かね。
 
(*3) 「張子の虎」は「かも知れない」だから良いとしても、だ。「名前もまだ付けられていない」と言うのはどう言う訳だ? 「施琅 Shilang」と言う中国名は、漢字表記は兎も角、我が国の「世界の艦船」誌にも英国のJane年鑑にも共通して居ると言うのに。朝日の事だから、中国共産党上層部からの秘密情報でも、あるのかも知れないが・・・・単に朝日の調査不足認識不足でなければ、だが。
 
(*4) 此処までは、中国空母試験航行のニュースを伝え、周辺国が脅威とすることを認めつつ、空母「ワリャーグ」自体の能力を疑問視している。
 
(*5) このパラグラフまでは中国の軍拡を説きその「脅威」を強調している。
 
(*6) 此処では一転して中国の経済に言及し、その発展と各国との結びつきについて触れ、「軍拡より社会保障とインフラ整備」と、中国政府に忠告している。
 
(*7) で、オチが、「中国様との関係を深めよ」と来たもんだ。
 

朝日は今日も朝日だった―ま、明日はわからないが

 如何であろうか。
 
 適宜突っ込みも入れたが、重複覚悟で以下に当該朝日社説の論旨をまとめてみよう。
 
(1) 中国初の空母出航は中国各地で喝采される一方、周辺国から脅威と見られている。

(2) だが中国空母は古いソ連空母の改装で、艦載機もまだ搭載されず、今は「張子の虎」かも知れない。

(3) 一方で、中国海軍が大増強され、国産空母も建造中で、経済発展と共に世界中に「国益」を拡大している。

(4) これに応じて周辺国、インドなどで軍備が拡張している

(5) 他方で各国と中国の経済的結びつきも強まる一方だ。

(6) 中国政府はその経済発展で、軍拡ではなくインフラ整備と社会保障に注力すべきではないか。

(7) 各国は地道な外交努力を通じて信頼醸成をめざすべきだ。

(8) 日本もまた、中国と直接的な関係を深める必要がある。
 
 「論旨をまとめる」と言った割には上記のように8項目もあり、聊か冗漫だが、これは元になった朝日社説の論旨が、少なくとも私にとって明快さも単純さも欠いているから、だ。何しろ上記8項目の中で、論旨の逆説や転換が、上記(2)(3)(5)(6)の各冒頭と、4回も起きている。その中で最も大きな転換は上記(5)「各国の中国との経済的結びつき」であろう。それ以前はタイトル通りに中国空母を題材に、主として軍事的側面から論旨を進めているが,此処で一転して経済的視点が入って来る。
 
 で、私にはなかなか判らなかったのが、それ以降の論旨展開だ。当記事のサブタイトルを「精神分裂」とした所以は、この論旨展開の難解さないし強引さゆえ、だ。
 
 上記(1)~(4)までは、論旨が首尾一貫はしていない、所かフラフラしているものの、「今回出航した中国空母は張子の虎かも知れない。が、中国海軍の増強や「国益」拡大は事実であり、周辺国もこれ手に対応して軍拡している。」とまとめる事が出来る。
 
 だが、(5)以降は?・・・敢えてまとめるとすると・・・・
 「一方中国と各国の経済的結びつきは高まっているのだから、中国はその経済発展で軍拡ではなくインフラ整備に注力すべきだし、各国は軍拡ではなく外交努力で信頼醸造すべきだ。日本もまた中国との関係を深めるべきだ。」
 
 と、「論旨が通らない」と思っていた当該朝日社説を、私としては無理矢理論旨にまとめる過程で、ようやく見えてきた「朝日節」と言うか、「朝日読者ならば当然判る暗黙の了解」が見えてきたように思う。それは以下の2項目にまとめられる。
 
 ① 外交努力で信頼性醸造する事は絶対善であり、常に努力するべき事である。

 ② 経済的結びつきが強まれば平和的になり、戦争になり難い。
 
 上記②の「暗黙の了解」=前提条件があるから、「経済的結びつきが強まる」と言う一言で軍拡を完全否定して上記(6)~(8)の様な論旨展開になる。
 当該社説の結論が上記(7)~(8)なのは、上記①が前提条件になっているから。そう考えると、得心が行く。
 
 と、ようやく「精神分裂」の分析が完了し、得心は行ったが、章題にもしたとおり「朝日は今日も朝日だった」であり、
私何ぞとは人種が違うと改めて確認できた次第だ。
 
 何度も書くが、
外交の目的は国益の追求であり、「弾丸を使わない戦争」なのである。したがって信頼性醸造も緊張緩和も、緊張醸造と同様に手段であって目的ではない。言い換えれば、国益確保のためには意図的に緊張を高める事もありうるし、高めるべきだと言う事だ。

 緊張の高まりと経済的結びつきとは原則的に反するものではある。が、上記②「経済的結びつきが強まれば平和的になる」と言うのも、相当眉唾であろう。この世に戦争のネタはごまんとあるが、そのウチの一つが「経済的対立」と言うのがある。経済的対立は、ある程度の経済的結びつきが無ければ生じようがない。無論、経済的対立による戦争は「商売敵を叩き潰す」よりも「商売敵を乗っ取り、その経済的資材(市場シェア、会社組織、技術、人員、資産など)を収奪する」方が戦果として大きいから、虐殺などの可能性は低い、と期待出来る。そうは言っても、戦争は戦争だが。
 
 上記①の背景には、十七条憲法で「和を以って尊し」として具現化して以来の日本的精神がありそうだが、「話せばわかる」も相手によるのが国際社会であり、中国なんてのは現状の世界情勢ではトップクラスに「話しても判らない」相手である
 
 日本の国益のためには、日中冷戦・日中戦争を辞さない、少なくとも覚悟が必要だと当ブログは訴え続けているが、如何であろうか。