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「ひゅうが」級がワリャーグ並みの「空母」と言う暴論
AFP通信が報じるのは、中国には3隻以上の空母が必要だと言う中国軍少将の発言。
1> 中国人民解放軍軍事科学院(Academy of Military Sciences of the People's Liberation Army)副秘書長の羅援(Luo Yuan)少将
と報じられる件の中国軍少将は、結構な肩書きをお持ちだが、「中国人民解放軍軍事科学院」の「秘書長」の「副」だから、えらいんだかえらくないんだか良く判らない。いずれにせよ「秘書長」且つ「副」なのだから、トップではありようが無く、その発言は後からどうとでも言い繕えると言う事だろう。「アレは副秘書長が、勝手にした発言です。」とかナントカ。
とは言え、トップならずとも少将は少将、将官の発言だ。が、報じられるところでは「中国に三隻以上の空母が必要な理由」は以下の如しだと言う。
2> 「近隣諸国のことを考慮すると、インドは2014年までに空母3隻を保有する予定で、日本も2014年までに空母3隻を保有する」
3> 「ゆえに、中国の権利や海洋権益を効果的に守るためには、中国の(空母の)数も、3隻未満であってはならないと思う」
3> 「ゆえに、中国の権利や海洋権益を効果的に守るためには、中国の(空母の)数も、3隻未満であってはならないと思う」
「インドの空母」と言うと、1959年に英空母Hermesとして就航した超ベテラン空母( 艦齢既に52歳!!)Viraatが現役だが、流石に新空母Vikrantの2013就役に伴い交替する予定、と手元メモにある。従って、中国軍少将の言う「インドは2014年までに空母3隻を保有する」の根拠はわからない。超ベテランのViraatを延命する可能性はあるかも知れないが、既に艦齢50歳を超える空母。幾ら伝統と実績の英国製軍艦とは言え(*1)そう長くはもつまいし、もたせても「空母は新旧各1隻の2隻」でしかない。
インド空母 Viraat
;満載排水量; 28,700t
;全長; 226.9m
;幅; 27.4m 飛行甲板最大幅48.8m
;吃水; 8.7m
;主機; 蒸気タービン×2 2軸
;出力; 76,000HP
;速力; 28kt
;兵装;バラク短SAM用VLS×2(16セル)
;航空機;V/STOL×12 ヘリコプター×7
;乗員;1,350名
インド新空母 Vikrant
;満載排水量; 37,500t
;全長; 256m
;幅; m 飛行甲板最大56m
;吃水; 7.5m
;速力; 28kt
;兵装;SAM CIWS
;航空機;CTOL(Mig-29)×12 ヘリコプター×10
;乗員;1400名
「日本も2014年までに空母3隻を保有する」の方はもっと酷い。思い当たるのは残念ながら全通甲板を有する「ヘリ搭載護衛艦」DDH(*2)-181「ひゅうが」級2隻と、二廻りほど拡大したその後継艦があるきり。確かにヘリの離発着に使える全通甲板を持つが、スキージャンプすらないのだから、CTOL通常型航空機の運用能力は無く、VTOL運用能力も(仮にあったとしても)相当制限される。基本的にヘリ空母にしかならず、インドの旧式空母Viraatniにすら、航空機収容能力では劣ると断ぜざるを得ない。
無論、搭載しているのがヘリだけとは言え、それを運用する能力では我らが海自、中国やインドの海軍におさおさヒケは取らないのであるが。
無論、搭載しているのがヘリだけとは言え、それを運用する能力では我らが海自、中国やインドの海軍におさおさヒケは取らないのであるが。
DDH-181「ひゅうが」級
;基準排水量;13,500t
;満載排水量;18,000t
;全長;197m
;幅;33m
;吃水;7m
;主機;GT×4 COGAG 2軸
;出力;100,000HP
;速力;30kt
;兵装;Mk41 VLS(ESSM,ASROC SUM用)×1 (16cell) 20mmCIWS ×2 三連装短魚雷発射管×2
;航空機;SH-60K哨戒ヘリ×3 MCH-101掃海・輸送ヘリ×1 最大10機
;乗員;347名(個艦322名 司令部25名)
;同型艦;DDH181 ひゅうが 2009/3竣工, DDH182 いせ 2011/3竣工19,500t型DDH
;基準排水量;19,500t
;全長;248m
;幅;38m
;吃水;7.3m
;速力;30kt
;兵装;20mmCIWS ×2 Sea RAM CIWS×2
;航空機;SH-60K哨戒ヘリ×7 救難・輸送ヘリ×2 最大14機
;乗員;347名(個艦322名 司令部25名)
一方の中国空母 施琅・元ロシア空母ワリャーグの諸元は以下の通り。
中国空母 施琅 Shilang (旧Admiral Kuznetsov級(11435型))
;満載排水量;59,439t
;全長;304.5m
;幅;37m 甲板最大幅70m
;吃水;10.5m
;主機;蒸気タービン4基 4軸
;出力;200,000HP
;速力;30kt
;兵装;HQ-10近距離防御SAM発射機×4、30mmCIWS×2、RBU600 12連装対潜ロケット発射機×2 その他にHQ-16短SAM搭載との情報あり
;航空機;CTOL ×18機 ヘリコプター×若干機
;乗員;1,334名 航空要員626名 司令部要員40名
「ソビエト連邦最期の栄光」で建造した正規空母だけに、インドの新型空母Vikramt級よりも大型で、満載排水量で1.5倍もある。
この他に、中国製新型空母を建造中との観測しきりである。またそうであればこそ、中国軍少将の言う「中国の空母保有3隻以上」なのであろう。未だ秘密のベールに包まれる中国空母は詳細不明だが、施琅(旧ワリャーグ)より小型の空母となるようなことは先ずあるまい。
つまり、件の中国海軍少将ドノは、インドの超ベテラン空母や、我が国のせいぜいがヘリ空母を根拠に、「中国空母3隻以上」の保有を正当化して見せているのである。
この他に、中国製新型空母を建造中との観測しきりである。またそうであればこそ、中国軍少将の言う「中国の空母保有3隻以上」なのであろう。未だ秘密のベールに包まれる中国空母は詳細不明だが、施琅(旧ワリャーグ)より小型の空母となるようなことは先ずあるまい。
つまり、件の中国海軍少将ドノは、インドの超ベテラン空母や、我が国のせいぜいがヘリ空母を根拠に、「中国空母3隻以上」の保有を正当化して見せているのである。
さはさりなが、
上記2>~3>の理屈で行くならば、我が国も中国人民解放軍に対抗して、100万の軍隊と数千発の弾道弾を装備して良いわけだ。無論、核弾頭を含めてであるし、インドも同様の必要がある。まあ、インドは既に核弾頭を保有しているし、人口も多いから、その「必要」を満たすのに我が国ほどには苦労しないだろうが。
軍拡開始!(*3)
<注釈>
(*1) うーん、伝統は兎も角、実績は相当疑問だぞ。WWIでは巡洋戦艦が天蓋ぶち割られて次々爆沈したし、フォークランド紛争では「弾頭が爆発しなかった対艦ミサイル」で火災を起こして駆逐艦シェフィールドが沈んでいる。(*2) この艦種名及び艦種記号が「不当表示」である事は多くの海軍関係者が同意するところではあろうが。それでもせいぜいが「ヘリ空母」だろう。(*3) と言うよりも、我が国が出遅れているだけで、中国もインドも既に開始しているな。