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 産経新聞が月一程度のペースで掲載する「社説検証」は、特定テーマについて各紙の社説を比較するもので、おこがましいようだが当ブログ「社説比較」シリーズのカウンターパート(*1)だ
 その産経・社説検証が「首相の人事と退陣条件」として、以下URLの当ブログ記事と同じ題材を取り上げている。
 
四大紙+三紙社説比較―ゾンビ内閣改造と退陣三条件 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35550351.html
 これを見逃す手はあるまい。
 
 先ずは産経「社説検証」をご一読願おうか。
 
転載開始==============================================================================

【社説検証】 首相の人事と退陣条件

民主党に行動を促す産経 朝日は自民党の度量期待

 大震災からの復興が進まない。6月2日の民主党会合で退陣表明したはずの菅直人首相が、閣僚などの人事を強行したうえ「退陣3条件」まで提示した。異常な政権運営である。
 産経は6月28日付で「政権延命のための悪あがきの人事としか思えない」と言い切った。他紙も大半が厳しい論調だ。
 首相は、松本龍防災担当相を東日本大震災復興担当相に起用し、細野豪志首相補佐官を原発事故収束・再発防止担当相に充てた。一方で自らの進退は平成23年度第2次補正予算案と再生エネルギー特別措置法案、特例公債法案の3つの成立が「一つのめどになる」と表明した。
 それには野党の協力が不可欠なのに、自民党に離党届を出した浜田和幸参院議員を復興担当の総務政務官に引き抜いた。退陣条件が揃(そろ)わないようにする小細工との疑念も生じよう。
 東京は浜田氏の「一本釣り」について「協力機運に水を差し、復興推進に悪影響を与える禁じ手」と厳しく批判した。
 日経も「混乱を拡大させるような判断」と断じ、退陣3条件の中の再生エネルギー特措法案にもふれて「民主党内の亀裂や野党との対立は深刻さを増す」と予測した。
 読売は、首相が閣僚人事の過程で亀井静香国民新党代表に副総理を打診したことについて「政権末期の混乱を露呈するだけの結果」と論評し、「これ以上、政治空白や政策の停滞を長引かせてはならない」と改めて早期辞任を迫っている。
 6紙の中では毎日だけが異なったスタンスで論じていた。毎日は松本、細野両氏の起用について、それぞれが被災者支援、原発事故に対処してきた経緯から「継続性を重視した人事」と肯定的に評価した。退陣3条件についても「与野党はこれを率直に受けとめるべきだ」と合意形成への努力を求めている。
 産経と朝日は首相の退陣問題を2日連続で論じた。6月29日付では、産経が与党民主党に現状打開への具体的行動を迫り、朝日は野党第一党の自民党の度量に期待を寄せる対照的な社説となった
 産経はこう主張する。首相が退陣3条件を示した翌日に開かれた民主党両院議員総会を、首相に退陣時期の明確化を求め、復旧・復興が進まない現状を打開する機会としなければならなかったのだ、と。
 「だが、執行部や所属議員は、首相に党代表解任動議を突き付けるなど具体的行動はとらなかった。これでは政治空白の拡大は止めようもない」
 閣僚や党幹部が首相の手法を公然と批判するようになった今、民主党は「執行部も首相批判を具体的な行動で示すべきだろう」と首相退陣を実現させる行動への決断を促している。
 これに対し、朝日は自民党に対し「もっと大人になってほしい」「冷静に考えてみよう」などと呼びかける。
 退陣3条件はどれも当たり前の内容だ。特例公債法なしでは復興対応もままならない。原発の是非はどうあれ、太陽光や風力の普及を図ることに異論はないはずだ、と朝日は論じる。
 「懸案を速やかに処理して、被災者やこれからの日本のために仕事をする。それで菅政権に終止符を打つ。それこそが長く政権を担ってきた自民党の本領ではないか」
 「ポスト菅」政権の一刻も早い登場が待たれる。脱原発の風潮に惑わされないエネルギー政策を注文しておきたい。(鳥海美朗)
                   ◇
 ■菅首相の人事と退陣条件に関する主な社説
産経
・(閣僚人事)延命の悪あがきにすぎぬ(6月28日付)
・(民主党)「人災」の共犯になるのか(29日付)
朝日
・(復興関連人事)被災者を忘れてないか(28日付)
・(退陣3条件)自民党よ大人になって(29日付)
毎日
・(首相退陣条件)延命優先せぬ幕引きを(28日付)
読売
・(首相退陣条件)復興へ政治空白長引かせるな(28日付)
日経
・政治混乱を拡大させる人事と首相発言(28日付)
東京
・(菅内閣人事)復興推進できる態勢か(28日付)
 <注>いずれも東京本社発行の最終版
==============================================================================転載完了
 

<注釈>

(*1) 流石に「ライバルだ」とは大手紙ではない産経といえども言い難い。社会的影響力は産経と当ブログでは比較にならないからだ。
  「今のところは」とは言いたくなるが。
 

文筆業とは売文屋と見つけたり

 さて、如何であろうか。
 
 先ず、短く上手くまとまった文章だと感じる。
 私は理系人間で、国語はそこそこ好き、漢文はもっと好き、古典は好きな部分もあって、文学史は大嫌いと言う程度の人間であるから、文章を評論するなんてのは、少なくとも専門ではないのだが、ともするとYahooブログの文字数制限 5000字を平気で超えてしまう当ブログの記事に対し、正味1400字程で朝日・読売・毎日・日経の四大紙と東京、それに自紙・産経の六紙を比較して見せている。
 その短縮を可能にしたのは対立軸、当ブログ「社説比較」シリーズで言うところの「評価項目」の取り方と絞込みであろう。だから、朝日と産経以外の各紙は、二、三行触れるだけでその差異を明示できている。
 
 自紙・産経と朝日についてはもっと字数をかけてその対比を明確にしている。我田引水承知で書くならば、「日本の新聞各紙の社説を比較するならば、朝日と産経を比較するのが早道だ。」と言うのは「社説比較」シリーズ発足当初からの当ブログ主張である。それは兎も角、今回産経社説検証が指摘する朝日と産経の対比が、サブタイトルにもなっている通り、「民主党に行動を促す産経 朝日は自民党の度量期待」なのである。
 
 さらに総括として、次の一文が効いている。
 
> 「ポスト菅」政権の一刻も早い登場が待たれる。
> 脱原発の風潮に惑わされないエネルギー政策を注文しておきたい。
 
 上手いもんだ。
 
 文筆業と言うのは、文章を書いて金を貰う人。その多くはその金で生計を立て、糊口を凌ぐ人であろう。作家、小説家、エッセイスト、新聞記者なんかがこれであり、書いた文章を商品にしている。だから章題にした「売文屋」などと言うのは文筆業の卑称・俗称ではあろうが、この俗称は本質を突いている。著名作家であるとか、文豪であるとか、大手新聞社論説委員であるとかの肩書きや属人特性ではなく、文章そのものが文筆業者の評価対象であり、商品であり、評価基準なのである。
 早い話、何某作とか誰某記とかが不明であっても評価される、高く売れる文章が文筆家の理想。
 
 その意味で、鳥海美朗記者の手による上掲記事は、プロの仕事、売れる文章だと、私には思われる。