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チェルノブイリ時原発事故の影響で脱原発を決め、既に国内の原発を廃止していたイタリアは、同時に電気料金の高さと、8割に上る火力発電による「二酸化炭素排出」、及び慢性的な電力不足と時に停電に悩まされていた。欧州には国境を越えて送電する電力網があり、事実お隣の原発大国フランスから電力を輸入しながらなお停電が起きると言うのだから、イタリアの電力不足は深刻だった。か現職のイタリア首相・ベルルスコーニ氏は「原発再開」を掲げて先の選挙に勝っており、その公約たる「原発再開」を賭けたイタリア国民投票が行なわれ・・・福島原発事故の影響を受けたと言う下馬評通りに実に94%と言う圧倒的な多数で「原発再開」は否決された。
上記を受けての各紙社説が、概ね6/15付けで出揃った。社説は出揃ったが、その論旨はバラけて居る。これは「社説比較」シリーズにとっては理想的な状態だ。看過する手もあるまい。
上記を受けての各紙社説が、概ね6/15付けで出揃った。社説は出揃ったが、その論旨はバラけて居る。これは「社説比較」シリーズにとっては理想的な状態だ。看過する手もあるまい。
今回比較したのは、四大紙のうち読売を除いた朝日、毎日、日経の3紙とレギュラーメンバーの産経に、東京新聞、琉球新報、沖縄タイムスの3紙を加えた合計7紙。各社説のタイトルとURLは以下の通り。
社説一覧
(1)産経 伊も脱原発 日本から流れを変えよう http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110615/plc11061503060004-n1.htm
(2)日経 「脱原発」欧州の不安と現実 http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E2E6E0E2E6EBE2E3E7E2E4E0E2E3E38297EAE2E2E3?n_cid=DSANY001
(3)読売 (該当なし)
(4)毎日 欧州の脱原発 フクシマの衝撃は重い http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110615k0000m070117000c.html
(5)朝日 原発と民意―決めよう、自分たちで http://www.asahi.com/paper/editorial20110615.html?ref=any
(6)東京 イタリア脱原発 欧州からの新たな警鐘 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011061502000059.html
(7)琉球新報 イタリア国民投票 脱原発へ各国は共に歩め http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-178221-storytopic-11.html
(8)沖縄タイムス [イタリア国民投票]加速する脱原発の流れ(*1) http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-06-15_19173/
比較項目は、例によって朝日と産経の社説を両睨みにして決めた以下の項目。
(1) イタリア国民投票結果の評価
(2) イタリア国民投票結果の影響
(3) イタリアと日本の類似点・相違点
(4) 日本の取るべき方針
(5) その他留意すべき事項
(1) イタリア国民投票結果の評価
(2) イタリア国民投票結果の影響
(3) イタリアと日本の類似点・相違点
(4) 日本の取るべき方針
(5) その他留意すべき事項
比較表の方は、例によって朝日の方の主張を赤字で、産経の方の主張を青字で、両紙にはない主張で各紙独自の物は太字下線で示した。

いつもの通りに、朝日と産経の主張は相容れない。今回の社説比較もまた、「日本の新聞社説を比較するならば、朝日と産経を比べるのが早道だ。」と言う「社説比較」シリーズ始まって以来(*2)の持論が裏書された形だ。尤も、今回のように「朝日グループ」「産経グループ」と二分できないような場合は、この二紙社説を読んだだけでは「異説を尽くした」ことにはならない。
朝日と産経の社説を上記比較項目に従って比べると、朝日社説が評価項目(2)「イタリア国民投票結果の影響」及び(3)「イタリアと日本の類似点・相違点」を「(言及なし)」で済ませてしまっているのが目立つ。即ち、今回国民投票で「脱原発を決めた」とされる、実質は「脱原発を止める事を止めた」イタリア国民投票の結果がどう影響するかも評価せず、日本とイタリアの類似点や相違点も論じることなく、ただ、「イタリア脱原発」の結果を見て評価項目(4)「日本の取るべき方針」について、縷々述べているのが、今回朝日社説の特徴だ。其処にはあれやこれやと書かれているが、結局のところ言っている事はただ一つ。「日本でも、脱原発を決めるための国民投票を実施しろ。」でしかない。
対する産経は、タイトルこそ「日本から流れを変えよう」と、取り様によっては「日本も脱原発を決めろ」と読めないこともないタイトルながら、中身は全く異なって、逆に、「脱原発の流れを日本で止めるのが、日本の責務だ。」と、朝日社説とは真っ向から対立するスタンス。こうでなければいけない、とも思うし、予てから明言している通り私は福島原発事故にま関わらず原発推進論者であるから、産経社説とはこの点で同意権である。朝日と対立する産経は当然ながら,朝日がスルーした評価項目(2)及び(3)にも相応に触れており、評価項目(2)では英仏の原発推進に触れつつ欧州の一部で勢いを増す原発離れに懸念を表明し、日本も同じ動きをしていると誤解される事を恐れている。また、評価項目(3)ではイタリアと日本の類似点にも触れつつ、外国から電力を買えることが決定的に異なると断じている。
評価項目(3)でイタリアと日本の相違点も見ていればこそ、朝日のような「イタリアに倣って日本も国民投票だ!(そして脱原発だ!!)」にはならず、「持続可能なエネルギー政策を冷徹に見極める」事を評価項目(4)「日本の取るべき方針」に記す。そうであればこそ、先述の通り、「軽挙妄動的な(*3)脱原発の流れを日本で止めるのが、日本の責務だ。」と、朝日とは全く反対の方針を示している。
日経社説はもう少し捻っている。先ず評価項目(2)「イタリア国民投票結果の影響」で福島原発事故以降も尚原発推進を打ち出す英仏及びチェコ、ポーランド(*4)を挙げて「欧州内で同じ(脱原発の)機運が高まっているわけではない。」と断じる。評価項目(3)「イタリアと日本の類似点・相違点」では産経と同様のイタリアと日本の相違点に触れるほか、その「現時点ですでに脱原発」のイタリアが高い電力コストと電力不足に悩まされていた事に触れ、それ故に現首相が「脱原発の停止」を賭けて今回の国民投票に臨んだことを記している。また、評価項目(5)「その他留意すべき事項」では朝日が全く触れていない(*5)「現イタリア首相に対する不信任が投票結果に影響している」事にも触れている。
以上の論点からすれば、評価項目(4)「日本の取るべき方針」が、朝日のような手放しの脱原発にはならないのは当然だ。「原発のあり方や再生エネルギー活用の全体像」を、コスト、技術、環境など総合的視点から考えろ、と言うのは、玉虫色の見解、両論併記ともいえるが、それでも「今流行の脱原発にのろう。バスに乗り遅れるな!」と言うのよりは遥かに理性的であるし、正論だろう。
毎日社説はかなり技巧的だ。「独伊の脱原発」については、「コストよりも安全を選んだ決断」と評価項目(1)で誉めそやし、電力輸入に頼れるというイタリアの利点は評価項目(3)で「そう言う見方もある」と触れはするが、支持はしない。評価項目(4)「日本の取るべき方針」でも、原発推進をなお主張する米・中・印の例を挙げるが、日本はチェルノブイリやスリーマイルに次ぐ原発事故の震源地となったことを示して「将来の原発政策を腰を据えて考えたい。」と結論付ける。この結論自体は「産経と同種の主張」と青字に記したが、上記の前後説明からは、かなり「原発に否定的な原発政策」を示唆していよう。
その示唆は、評価項目(5)「その他留意すべき事項」に記した「ドイツは「脱核兵器」にも積極的」と言う記述により明示されている。核兵器と原発を関連付けて、原発のイメージダウンを図った記述であると思って間違いなかろう。その「ドイツ配備の米軍戦術核兵器を、ドイツ軍も使用することになっていた点にはまるで触れていないのだから、なおさらだ。ドイツは、核兵器保有国ではないが、核攻撃能力保有国ではあるのだ。
Luftwaffeの核攻撃機 -剣は自らの手にあるべきだ。- http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/15114557.html
朝日と産経の社説を上記比較項目に従って比べると、朝日社説が評価項目(2)「イタリア国民投票結果の影響」及び(3)「イタリアと日本の類似点・相違点」を「(言及なし)」で済ませてしまっているのが目立つ。即ち、今回国民投票で「脱原発を決めた」とされる、実質は「脱原発を止める事を止めた」イタリア国民投票の結果がどう影響するかも評価せず、日本とイタリアの類似点や相違点も論じることなく、ただ、「イタリア脱原発」の結果を見て評価項目(4)「日本の取るべき方針」について、縷々述べているのが、今回朝日社説の特徴だ。其処にはあれやこれやと書かれているが、結局のところ言っている事はただ一つ。「日本でも、脱原発を決めるための国民投票を実施しろ。」でしかない。
対する産経は、タイトルこそ「日本から流れを変えよう」と、取り様によっては「日本も脱原発を決めろ」と読めないこともないタイトルながら、中身は全く異なって、逆に、「脱原発の流れを日本で止めるのが、日本の責務だ。」と、朝日社説とは真っ向から対立するスタンス。こうでなければいけない、とも思うし、予てから明言している通り私は福島原発事故にま関わらず原発推進論者であるから、産経社説とはこの点で同意権である。朝日と対立する産経は当然ながら,朝日がスルーした評価項目(2)及び(3)にも相応に触れており、評価項目(2)では英仏の原発推進に触れつつ欧州の一部で勢いを増す原発離れに懸念を表明し、日本も同じ動きをしていると誤解される事を恐れている。また、評価項目(3)ではイタリアと日本の類似点にも触れつつ、外国から電力を買えることが決定的に異なると断じている。
評価項目(3)でイタリアと日本の相違点も見ていればこそ、朝日のような「イタリアに倣って日本も国民投票だ!(そして脱原発だ!!)」にはならず、「持続可能なエネルギー政策を冷徹に見極める」事を評価項目(4)「日本の取るべき方針」に記す。そうであればこそ、先述の通り、「軽挙妄動的な(*3)脱原発の流れを日本で止めるのが、日本の責務だ。」と、朝日とは全く反対の方針を示している。
日経社説はもう少し捻っている。先ず評価項目(2)「イタリア国民投票結果の影響」で福島原発事故以降も尚原発推進を打ち出す英仏及びチェコ、ポーランド(*4)を挙げて「欧州内で同じ(脱原発の)機運が高まっているわけではない。」と断じる。評価項目(3)「イタリアと日本の類似点・相違点」では産経と同様のイタリアと日本の相違点に触れるほか、その「現時点ですでに脱原発」のイタリアが高い電力コストと電力不足に悩まされていた事に触れ、それ故に現首相が「脱原発の停止」を賭けて今回の国民投票に臨んだことを記している。また、評価項目(5)「その他留意すべき事項」では朝日が全く触れていない(*5)「現イタリア首相に対する不信任が投票結果に影響している」事にも触れている。
以上の論点からすれば、評価項目(4)「日本の取るべき方針」が、朝日のような手放しの脱原発にはならないのは当然だ。「原発のあり方や再生エネルギー活用の全体像」を、コスト、技術、環境など総合的視点から考えろ、と言うのは、玉虫色の見解、両論併記ともいえるが、それでも「今流行の脱原発にのろう。バスに乗り遅れるな!」と言うのよりは遥かに理性的であるし、正論だろう。
毎日社説はかなり技巧的だ。「独伊の脱原発」については、「コストよりも安全を選んだ決断」と評価項目(1)で誉めそやし、電力輸入に頼れるというイタリアの利点は評価項目(3)で「そう言う見方もある」と触れはするが、支持はしない。評価項目(4)「日本の取るべき方針」でも、原発推進をなお主張する米・中・印の例を挙げるが、日本はチェルノブイリやスリーマイルに次ぐ原発事故の震源地となったことを示して「将来の原発政策を腰を据えて考えたい。」と結論付ける。この結論自体は「産経と同種の主張」と青字に記したが、上記の前後説明からは、かなり「原発に否定的な原発政策」を示唆していよう。
その示唆は、評価項目(5)「その他留意すべき事項」に記した「ドイツは「脱核兵器」にも積極的」と言う記述により明示されている。核兵器と原発を関連付けて、原発のイメージダウンを図った記述であると思って間違いなかろう。その「ドイツ配備の米軍戦術核兵器を、ドイツ軍も使用することになっていた点にはまるで触れていないのだから、なおさらだ。ドイツは、核兵器保有国ではないが、核攻撃能力保有国ではあるのだ。
Luftwaffeの核攻撃機 -剣は自らの手にあるべきだ。- http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/15114557.html
つまり、毎日社説は巧みに「朝日グループ以外」を装い、産経と同種の主張に触れつつも、美事「脱原発推進=朝日グループ」の主張を為しているのである。実に大したものである。
一方毎日の技巧的社説と対照的なのは東京新聞社説・・・支離滅裂である。タイトルは「欧州からの新たな警鐘」として、イタリアの国民投票結果=脱原発を「東日本大震災を受けドイツに続き欧州主要国が下した判断は重い。」と持ち上げながらも、「投票結果は、買春罪などで起訴されている現首相(*6)に対する審判の意味合いが強かった」と認め、なおかつ、「その深層にはイタリア国民の自然への畏怖があったと思いたい。」って・・・・この「イタリア国民」に対する思い入れがどこから来たのか知らないが、そんな思い入れを押し付けるような文章を、東京新聞では社説と呼ぶのかね。
百歩譲ってそのタップリの思い入れが正しく、イタリア国民は「自然への畏怖」を深層に抱えつつ脱原発を決めたのだとしよう。そうでなければ、「買春罪などで起訴されている現首相」に対する批判として決まった「脱原発」と言う事になり、当該社説タイトルのような「新たな警告」になぞなりはしないのだから無理矢理そう解釈したとしても・・・社説中ほどにあるとおり、「欧州の意思」は未だ「収斂」していない、つまりはバラバラだ。即ち、タイトルにある「欧州からの新たな警鐘」は未だ微弱であると社説自身が認めている。
さらに言うならば、日本の福島原発事故を受けてのイタリアの国民投票結果を論じる社説であるとは言え、「欧州の意思の収斂」を訴えるのは良いが、我が国の、日本の、取るべき手段進むべき道について、全く触れても居ない。これでも日本の新聞の社説だろうか。
沖縄二紙・琉球新報と沖縄タイムスの社説は若干の寄り道ないし論理の破綻を含有するが、朝日グループ=脱原発推進であることに変わりはない。沖縄タイムスは「被爆国日本」を前面に出し、琉球新報は「反対論に触れるが直接論評しない」毎日張り技巧を見せている程度で大して見るべきものがない。
例によって数式で表すならば・・・・
沖縄タイムス+琉球新報+東京≒朝日≒毎日 << 日経≒産経
と言うところだろうか。
一方毎日の技巧的社説と対照的なのは東京新聞社説・・・支離滅裂である。タイトルは「欧州からの新たな警鐘」として、イタリアの国民投票結果=脱原発を「東日本大震災を受けドイツに続き欧州主要国が下した判断は重い。」と持ち上げながらも、「投票結果は、買春罪などで起訴されている現首相(*6)に対する審判の意味合いが強かった」と認め、なおかつ、「その深層にはイタリア国民の自然への畏怖があったと思いたい。」って・・・・この「イタリア国民」に対する思い入れがどこから来たのか知らないが、そんな思い入れを押し付けるような文章を、東京新聞では社説と呼ぶのかね。
百歩譲ってそのタップリの思い入れが正しく、イタリア国民は「自然への畏怖」を深層に抱えつつ脱原発を決めたのだとしよう。そうでなければ、「買春罪などで起訴されている現首相」に対する批判として決まった「脱原発」と言う事になり、当該社説タイトルのような「新たな警告」になぞなりはしないのだから無理矢理そう解釈したとしても・・・社説中ほどにあるとおり、「欧州の意思」は未だ「収斂」していない、つまりはバラバラだ。即ち、タイトルにある「欧州からの新たな警鐘」は未だ微弱であると社説自身が認めている。
さらに言うならば、日本の福島原発事故を受けてのイタリアの国民投票結果を論じる社説であるとは言え、「欧州の意思の収斂」を訴えるのは良いが、我が国の、日本の、取るべき手段進むべき道について、全く触れても居ない。これでも日本の新聞の社説だろうか。
沖縄二紙・琉球新報と沖縄タイムスの社説は若干の寄り道ないし論理の破綻を含有するが、朝日グループ=脱原発推進であることに変わりはない。沖縄タイムスは「被爆国日本」を前面に出し、琉球新報は「反対論に触れるが直接論評しない」毎日張り技巧を見せている程度で大して見るべきものがない。
例によって数式で表すならば・・・・
沖縄タイムス+琉球新報+東京≒朝日≒毎日 << 日経≒産経
と言うところだろうか。
朝日グループの東京、沖縄タイムス、琉球新報の出来が今回は酷いな・・・・
<注釈>
(*1) 嘘だな。元々イタリアは脱原発しており、今回の国民投票はその脱原発を止めるか否かだ。結果的に脱原発は維持されたが、それは、「原発推進への方向転換を止めた」だけで、脱原発は半歩たりとも進んでいない。(*2) と言っても、当ブログが発足してからまだ3年にもならないのであるが。(*3) と、直接は表記されていないが、そう言うことだろう。(確信)(*4) つまりは、私の「同志」と言う事になるな。(*5) 日本とイタリアの比較もしていなければ、イタリア固有の事情も考慮しないのは、当然といえば当然だが。(*6) 菅直人じゃないよ。