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 何度も書いていることだが、社説というのは「新聞の顔」だと私は考えている。
 理由はこれまた何度も書いたところだが・・・新聞と言う情報伝達メディアが、即時性や臨場感でテレビやラジオ、さらにはネット動画にネット配信に太刀打ちできなくなって久しいのだから、新聞がその真骨頂を見せるのは、追跡記事・続報を含む調査報道と社説・論説である。そのいずれについても週刊誌や月刊誌・季刊誌がそのタイムスパンの長さを利用して急追してくるのだから、特に定期的にまとめられる論説である社説は、新聞の存在理由でさえある。
 
 故に「社説こそ新聞の顔だ」として、その顔をにドロを塗ったりブッタ斬ったりする「社説を斬る!」シリーズがあり、「四大紙+産経(+α)社説比較」シリーズがある。
 
 今回取り上げるのは、1次補正予算成立を受けての最近の政局を取り上げた、朝日新聞の社説。
 まずは例によって例の如く、ご一読願おうか。

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1次補正成立―政争はやめるにしかず 

 東日本大震災からの復旧に向けた、政府の第1次補正予算が成立した。
 対応が後手に回る菅直人首相への批判が沸点近くに達し、補正成立を機に「菅降ろし」が始まる気配もあったが、与野党双方の動きは急速にしぼんだ。
 非常時に政争にかまけていては有権者に顔向けできない。そんな真っ当な理性が働いたのか。当然のこととはいえ、政界の風向きの変化は歓迎である。
 成立に先立ち、民主、自民、公明の3党は合意文書を取り交わした。子ども手当などの歳出見直しについて3党で検討を進める、赤字国債を発行するための法案は成立に向け真摯(しんし)に検討する、という内容である。倒閣を急がず、責任を分担しようというなら自公の姿勢は正しい。
 民主党内では、鳩山由紀夫前首相が小沢一郎元代表に、党分裂につながるような行動は控えるよう求めた。めずらしく分別ある忠告といえよう。
 原発はいまだ安定せず、被災地では厳しい避難所暮らしが続く。危機にあっては、迅速に決断し、対処できるよう指揮官を支えるべきである。
 白紙委任せよということではない。事態がおさまれば、指揮官の振る舞いも含めてすべてを検証し、適否を問う。進退問題を語るのはその時でいい。
 このところの政界では、「挙国一致を」「救国内閣を」といった掛け声もやかましかった。菅首相の退陣を前提に、民主、自民両党が「菅抜き大連立」を組むという構想も語られた。
 これらもひとまず沙汰やみとなり、結構なことである。
 民主党のマニフェスト施策の撤回を求める自民と、その固守を唱える小沢元代表が手を組むというような話なら、もともと無理があったというほかない。
 今後、地震と津波の被災については、応急対応から次第に復旧・復興の段階へと進む。
 復興は、新たな日本の姿を描く作業である。災害に強い地域をどうつくるか。エネルギー政策はどうするか。復興財源は。各党、各議員によって、描こうとする絵は様々だろう。
 そこでは「とにかく力をあわせよ」である必要はない。むしろ知恵を比べ、オープンな論争を重ねる。その中から新たな対立軸が見えてきてもいい。
 危機管理と復興の二正面作戦を乗り切るには、力をあわせつつ競い合う大人の態度が必要だ。つまらぬ政争はやめるにしかず。各党が日本再生の道筋を示し、可能な段階で民意を問う。それが、政党政治が成熟していく道ではないか。
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これでも「社説」と呼べるのだろうか

 さて、当ブログで菅直人擁護論を斬るのはこれが初めてではない。どころか、目立つところの菅直人擁護論は片っ端から斬ろうと、最近は思い始めた当ブログである。事実、以前には毎日新聞社説の薄っぺらな菅直人擁護論を斬っている。
 
薄っぺらな菅直人擁護論-毎日社説「菅首相への批判 ただ「辞めろ」は無責任だ」を斬る  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35078155.html
 
 また、朝日新聞が菅直人の擁護擁立に汲々としているのも事実なようだ。それが顕著に現れた西岡議長との一問一答を斬る記事も以前に当ブログにアップしている。
 
やっぱり朝日は菅びいき-共に忘却土に堕ちるが宜しかろう 西岡議長の菅直人退陣論から  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35083462.html
 
 であるならば、朝日が菅直人擁護論をその社説で唱えるのはある意味(珍しく)首尾一貫もしているし、当然であり、その菅直人擁護論を私が斬ろうというのも、理の当然ではある。
 
 が、上掲の朝日新聞社説「1次補正成立―政争はやめるにしかず」には、社説と銘打った1000字ほどのこの論説に、「朝日新聞の社としての主張」が、驚くべき事に、殆ど記載されていないのである。
 後の残りは、朝日新聞の政局認識であり、それも「菅おろしの動きは収まった。結構なことだ。」の一言に尽きる。なぜ「結構」なのかは書いていない。「朝日読者の暗黙の了解」なのだろうか。
 私が発見できた「朝日新聞の社としての主張」は、後段当たりの3行と、最後の3行のみ。抽出すれば以下の通りだ。
 
1> 白紙委任せよということではない。
2> 事態がおさまれば、指揮官の振る舞いも含めてすべてを検証し、適否を問う。
3> 進退問題を語るのはその時でいい。
 
4> 危機管理と復興の二正面作戦を乗り切るには、力をあわせつつ競い合う大人の態度が必要だ。
5> つまらぬ政争はやめるにしかず。各党が日本再生の道筋を示し、可能な段階で民意を問う。
6> それが、政党政治が成熟していく道ではないか。
 
 上記1>~3>にしても4>~6>にしても、菅直人を、現政権を、明白に擁護していることは判る。が、なぜ擁護するのか。なぜ今でも明らかな、否、震災以前から既に明らかであった外国人献金問題を含め、福島原発事故初動対応にせよ、やたら作った委員会と会議にせよ、震災復興へ向けてのヴィジョンにせよ、追求し糾弾すべき材料には事欠かない「歩く政治空白」菅直人に対する追求も糾弾も「事態が収まれば」「可能な段階」まで一時棚上げにすべき理由、するメリットについて、殆ど何も記述していない。
 
 辛うじてあるのが上記6>「 それが、政党政治が成熟していく道ではないか。」 のみ。
 
 ただ、「政党政治が成熟していく道」のために、あの「歩く政治空白」菅直人を擁護し、支持し、当面支えろと、朝日新聞社説はぬけぬけと言ってくれている、らしい。
 
 例によって「らしい」と曖昧なのは、その主張が余りに荒唐無稽だからだ。糾弾さるべき数多の問題を棚に上げて、東日本大震災並びに津波と福島原発事故からの復興、それ即ち少なくとも戦後最大の災厄からの復興と言う大事を、「今現在日本国首相という地位にあるだけの男(※1)」菅直人に当面任せろ。「それが、政党政治が成熟していく道」だから。と言う主張。
 
 到底正気の沙汰とは思えない。「政党政治の成熟」以外の何らかの理由がある筈だが、朝日新聞社説は、1000字を費やして、他の理由については一言半区も語っていない。これではとてもじゃないが、主張とか、論説とか、社説とか呼べるような物ではない。せいぜい「政局現状報告」だ
 
 大体、朝日新聞が「政党政治の成熟」に関心を持つなど、私には全く信じられないのだから、そもそもこの社説は、その主張が成り立たないのであるが。
 
 如何に、朝日新聞。

 

<注釈>

(※1) 他のまともな理由を、今回社説の朝日も、以前取り上げた毎日も、挙げていない。
 ああ、毎日は「外国の評価」を一応挙げていたな。朝日には、それすらない。