応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/ 

 福島原発事故による放射能パニックはさらに発展して原発パニックとなっているようだ。

 無論未曾有の大地震とと大津波に遭遇したとは言え、「想定外」と言うのは事実の追認ではあっても言い訳にはならないし、それ即ち原発安全基準の見直しを惹起する事は間違いないところであるから、安全基準について大いに議論すべき事は間違いないのであるが、それにしても「今ある原発を直ちにとめろ。」とか、「既存の原発を順次廃炉にして、再生可能エネルギーに切り替えろ。」とか、ヒステリックなのから一見もっともらしい物まで、兎に角「反原発」の大合唱の感がある。
 
 元々核兵器初めとして「核アレルギー」の強い我が国特有の事情もあろうが、原子力船「むつ」騒ぎを彷彿とさせるような「原発パニック」は、理性と知性に反するところであり、反捕鯨と同様に当ブログの到底組し得ないところ。福島原発事故にしたってその事故レベルはとうとう最悪の「レベル7」と判定され、「チェルノブイリ並み」の文字が新聞紙面に躍っているようだが、放出された放射性物質の量からすると左様な判定になると言っても、圧力容器は圧力をある程度保っているし、まだ誰も放射線で死んでは居ない。この先もまだ直接放射線が死因になるような被害は生じていないのだから、行政組織がミネラルウォーターを配るぐらいは行政の勝手であっても、飲料水や即席カップめんを買い占めようなどと言うのは用心深いと言うよりは、浅ましいと評すべきだろう。
 
 それはさておき、その放射能パニックの一端が現れたのがNHK朝のAM放送。最近はすっかりNHKの御用学者に成り下がった(*1)らしい内橋克人「先生」の「お話」である。まあ、「もっともらしい」方の原発パニックであるのは、救いなんだか、なんなんだか。
 
 例によってメモも取らずの聞き流しから、記憶に従って書き起こしているから、記憶違いや聞き違いもあるかも知れないが、何でもカリフォルニアの電力行政を絶賛する「お話」だ。
 
 曰く・・・・
 
(1) 米国カリフォルニア州は30年ほど前に住民投票で原発を止めた。
(2) その原発の跡地は太陽光発電所となり、太陽光パネルが延々と並んでいる。
(3) 同様の施設をモハーベ砂漠にも作っており、カリフォルニア州はこれら太陽光発電を初めとする再生可能エネルギーを推進している。
(4) そのための方策としてカリフォルニア州が定めた法律は以下の通り。
  ① 発電設備は誰でも作れる。
  ② 発電設備で作られた電力を、電力会社は強制的に買わねば成らない
  ③ 電力会社が買う電力の値段は、「Avoidable Cost」に基づく。即ち、その買った電力分を電力会社が発電しなければならなかった場合掛かったであろうコストを計算し、その分のコストを電力の値段として、発電者に支払う。
(5) この制度により、カリフォルニア州の再生可能エネルギー発電は普及し、21世紀のモデルとされている。
(6) 日本もカリフォルニア州に学ぶべきだ。
 
 ま、早い話が「原発止めて、太陽光発電で賄おう。その制度はカリフォルニア州が既に実践している。」と言う事だ。
 俗耳に入りやすい、耳障りの良い話だ。SSやGPや、それに類する似非環境主義者共なら喜んで飛びつくだろう。

 だが、太陽エネルギーの本質的な密度の低さを知っている私のような人間は、そう簡単には引っかからない。内橋克人が絶賛した「カリフォルニア州の電力事情」には、敢えて触れられていないが看過できない幾つもの事実がある。
 
 一つは勿論、カリフォルニア州とわが日本の日照量の差だ。その差は端的には「モハーベ砂漠」の一語に集約できよう。我が国には、砂丘はあっても砂漠はない。大半の土地からは海が望めると言うことは、海からの湿度を持った空気が供給されると言う事。早い話が雨が多いということだ。梅雨もあれば台風も来るから、まとまった雨も降れば、長い期間の曇天雨天が続く時期もある。当たり前だが曇天雨天では、晴天に比べて格段に太陽光発電の電力供給は落ちる。
 
 二つには、「延々と続く太陽パネル」に現れているカリフォルニア州の「土地の広さ」。なかんずく平地の広大さ、であろう。言うまでもないがわが日本の国土は大半が山と森。平地は「既に満員」と言うのが正直なところ。広大な土地に太陽光パネルを並べるなんて芸当は、逆立ちしたって出来ない。
 
 三つには、そのカリフォルニア州の「再生エネルギーを普及させる」高い環境意識は、通常の原子力ならざる発電所でさえカリフォルニア州内に建築する事を困難にし、恐らくは上述の「発電量強制買取」とあいまって、同州での電力会社の経営環境を悪化させている。これは「自然環境的には良い事」かも知れないが、カリフォルニア州で電力会社を経営する事自体が難しいのだから、電力会社はカリフォルニア州から逃げて行く。その結果は州外からの電力供給と、それでも足らない場合は停電ないし計画停電である。2000年から2001年にかけては特に電力供給が不足して、ハイテク産業で鳴らすシリコンバレーを含む地域が停電の影響を喰らった。喩え部分的局所的な計画停電であっても、相当な混乱が生じる事は、わが日本がつい最近体験したところだろう。内橋克人が絶賛した「環境を重視し、再生可能エネルギーを活用した21世紀型電力供給モデル」とされるカリフォルニア州の電力事情は、州外からの給電に支えられた張りぼてと言う事だ。
 
 無論、技術の発達である程度解決ないし問題を小さくできる事はあるだろう。発電効率の向上は曇天・雨天の発電量を引き揚げるだろうし、土地・平地が少ない点は洋上にソーラーパネルを浮かべる洋上ソーラー発電プラントが解決するかも知れない。(*2)だが、所詮は太陽から供給されるエネルギーを集める太陽光発電は、天候による供給量の変動と、夜間は発電不可能と言う本質からは逃れられない。風力発電はもっと変動するし、我が国の場合は台風からそよ風まで対応できないと実用にならない。
 
 さらには、我が国は島国だ。連なり傍たつ島々からなっており、この中で電力を賄えないからと言って半島や大陸から、そうおいそれと電力を供給などしてはもらえない(*3)。この点が、陸続きで隣の州から電力を買えるカリフォルニア州との最大の違いだろう。
 
 言い換えれば、見通せる将来にわたって我が国の電力需要が再生可能エネルギーのみで賄える等と言う事態は、幻想と言うより夢想である。現状、再生可能エネルギーが使えるのはせいぜい補助電源でしかない。主電源足りうるのは、天候日夜に関わらず電力を供給できる火力であり、原子力である。
 
 左様、原子力だ。なかんずく二酸化炭素排出量抑制なんて事を言い出したら、原子力以外の主電源は現状、実用化していない。
 
 安全基準の見直しは必要だろう。想定すべき事態は想定すべきであるし、採るべき対策は採るべきだ。
 
 再生可能エネルギーを補助動力として普及を進めるのも良かろう。夢の「原子力に変わる再生可能なエネルギー源」を研究開発するのも結構だ。だが前者は補助動力にしかならないし、後者は今すぐには間に合わない。
 
 節電も効果はある。無駄なエネルギーを消費する事はない。だが、復旧にも、復興にも、生産にも、研究開発にも、電力は必要であり、その電力の主たる供給源は、現時点においてもなお火力と原子力であり、二酸化炭素排出量を問題にするならば、原子力しか選択肢はない。
 
 我々は、原子力と共に前進すべきである。
 
 Nuke Vor!


<注釈>

(*1) ああ、NHKの御用学者なんざ「成り下がった」で沢山だ。当人は「成り果せた」つもりかも知れないが。

(*2) そのままだと、覿面に津波に弱そうだが・・・・

(*3) そのためには恐ろしく長い送電線が必要であり、長い送電線は大いなる送電ロスを意味する。