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言葉の軽重と言うのは不思議なものである。「軽重」と言うのが余りに曖昧な基準だと言うならば、「説得力」と言い換えよう。言葉で持って与える影響力、聞く者の心に訴える力の事だ。
政治家と言う商売は、演説も仕事であるから、言葉に対しては必然的に敏感になる・・・筈だ。「筈だ」と言うのは、日本の政治家には演説力だとか説得力だとかは余り求められずために歴代首相や党首を見渡しても、演説が上手い、「言葉に説得力がある」と思うような政治家は稀である。
だが一方で「言葉の軽重/説得力」が不思議だと言うのは、例えば、必ずしも上手い演説が強い説得力を持つとは限らない事を指す。政治家如きと比較するのも畏れ多いが、先頃東日本大震災に際して戦後初めて出された(*1)天皇陛下のビデオメッセージがその例として挙げられよう。陛下のお言葉は、決して大仰なものではないし、ゆっくりとつとつとした口調は、劇的でも演説向けでもない。が、陛下の言わんとする所、大御心は、ヒシヒシとどころか、ビシビシと、伝わってくる。
無論、言葉と言うのは音声ばかりではない。「言葉は音声であり、文字はその影だ」とする説もあるようだが、その説への批判は既に当ブログで記事にしたところ。実際、このブログにしても、あるいは法律の条文にしても、重要なのはテキストベース・文字としての言葉であって、音声(*2)は関係ない。
日本語概論-日本語に対する一素人の考察- http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/29989449.html
であるならば、政治家にとっては演説の言葉もさることながら、法案決議案の言葉もまたCriticalなものであり、Sencitiveにならざるを得ない。従って政治家自ら選び作成した演説原稿や法案・決議案にはその政治家なり政党なりの思想主張がにじみ出る筈である。
報じられているのは東日本大震災と言う戦後最大の大災厄にして、理の当然ながら民主党政権発足(*3)以来最大の人的経済的被害に対し、民主党が出そうとしている震災決議民主党案。衆参両院で全会一致を目指す決議案だそうだから、仲々壮大な構想だ。が、報じられているその決議案の「言葉」を抽出すると、以下のようだという。
1> 犠牲者に対し「深甚なる哀悼の意」を表し、
2> 被災者の生活の回復と被災地の復興に
3> 「国力のすべてを投じて、被災者の生活の回復と被災地の復興を実現する」
4> 被災者の生活再建や被災地の経済復興に向けて
5> 「新たな立法措置も含めて、前例や省庁の壁にとらわれることなく、
6> あらゆる必要な措置が早急に実施されるよう全力で取り組む」
7> と強調。その上で、
8> 「災害に強い新たな経済社会を提示する総合復興計画の策定」や
9> 「最悪の事態を想定した国家の危機管理のあり方の抜本的見直し」を盛り込んだ。
10> 福島第1原子力発電所の事故については
11> 「いまだ収束のめどが立たない」と位置づけ、
12> 「世界のあらゆる英知を結集して一刻も早い収束を図る」と表明。
13> 「地域住民や事業者への救済対策に万全を期す」とした。
如何であろうか。
貴方の心に、胸に、腹に、響く物はあっただろうか。
無論、ここに抽出したのは、震災決議民主党案から抜粋して産経が報じたものを転載したまでだ。オリジナルの方には全く違う記述があって、天地をも動かし鬼神をも泣かしめるような名文になっているのかもしれない。
だが、報じられる範囲に於いては・・・・・・
言葉は実に大げさである。「深甚なる哀悼の意」「国力のすべてを投じて」「前例や省庁の壁にとらわれることなく」「災害に強い新たな経済社会」「最悪の事態を想定した国家の危機管理のあり方の抜本的見直し」と、これでもかと言わんばかりに美辞麗句が並ぶ。
ならばそれだけ美辞麗句と共に一体何をやるのかと言うと、以下の通り。
①「被災者の生活の回復と被災地の復興を実現する」(上記3>)
②「総合復興計画の策定」(上記8>)
③「国家の危機管理のあり方の抜本的見直し」(上記9>)
④「地域住民や事業者への救済対策に万全を期す」(上記13>)
つまり殆ど「何をするとも言っていない。」
①は要するに「生活の回復と復興」であるから、これを「しない」と言う方が不思議だろう。即ち「する」に決まっている事を新ためて言っているだけだ。
②は「復興計画」だが、「災害に強い新た場経済社会」とその目的が勇ましいばかりで、一体どんな経済社会なのか、報じられる限りではサッパリ分からない。「分散ネットワーク型で再生可能エネルギーを重視したスマートグリット給電網」とか何とか、これに続きそうな文言は想像出来るが、「経済社会」と言う表現とは一寸そぐわない。まあ、それでも②は「何か今回報じられていない部分で言っていそう。或いはこれから何か言うだろう」と期待できるだけまだマシだ。
③はありがちな話ではあるが、一昨年夏の衆院選挙で三党共通公約に安全保障の項目がなく、昨年末の尖閣諸島沖中国「漁船」体当たり攻撃であれだけの醜態を曝した上に未だ体当たり攻撃ビデオ一つまともに公開しておらず、非合法な外国人献金を受けてそれを逆に合法化してしまおうと画策し、今般の東日本大震災において早期の「自衛隊10万人体制」を敷いた以外ろくに判断も決断も対策も採っていない現民主党政権が、一体どんな「国家の危機管理のあり方の抜本的見直し」ができると言うのか。大体、民主党の一体何処をどう叩くと言うと「国家」なんて言葉が出てくるんだ。前首相は「日本は日本人だけのものではない。」と公言し、今の官房副長官にして前官房長官は「日本は中国の属国」と発言して恬として恥じるところのない党が民主党ではないか。
最も効果的な「国家の危機管理のあり方の抜本的見直し」は、政権交代に他ならない。
④は「福島原発事故に対する救済対策」である。これも一見は①と同様の「やって当たり前の事」のように見えるが、私にはそうは思われない。
何しろ民主党であるから、「対策」よりも「救済」の方に力点が置かれ、例えば「被災地の農産物水産物を喰ってみせるなどして風評被害を防ぐ」対策よりも「風評被害も含めて東電に損害賠償させるバラマキ( 従って、風評を防ぐ必要はない)」を実施するのではないかと疑う。
東日本大震災と言う大災厄に直面しても、社民党は愚か共産党とつるんでまで「子供手当て法案」を半年延長させた民主党である。端的に言って思想も何もなくただバラマキだけで支持率を稼ぐ究極の利益誘導政党なのではないかと、私は疑っている。反論があるなら、サッサと綱領の一つも決定するが宜しかろう。大体政権与党の座に既に2年近くもあって、今だ綱領を決めようという話も聞かないような集団が、果たして政党なのかとさえ、疑われる。「綱領を決めようとすると分裂の恐れがある」様な党ならば、それはそもそも、利益共有集団であって、政党ではないのだ。
無論、そんな奴バラに、憲政史上最多の衆院議席数を与えたのは、ほかならぬ「国民の選択」である。だが、そんな選択は誤っているどころか狂気の沙汰だと言うのが、当ブログの一貫した主張だ。
失望すれども、絶望せず1-衆院選自民惨敗民主大勝を受けて- http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/29646281.html
重複覚悟で結論付けるならば、報じられている「震災決議民主党案」は、大言壮語美辞麗句が並ぶばかりで殆ど何も建設的なことは言っていない。何も言っていないだけに「全会一致」の賛同は得られやすい決議案ではあろうが、何の役にも立たない空虚な無駄決議にしかならない。
自民党初めとする野党諸君はよろしく本決議案を議論し、修正し、実のある決議とするよう努力されたい。その結果、全会一致は望めなくなるかも知れないが、建設的な決議となることが期待できる。
<注釈>
(*1) と言うことは、史上初のビデオメッセージだ。空前であって、絶後ではないかも知れないが。
(*2) 当ブログは、テキサス親父殿のPropaganda Busterなどと違ってビデオ動画など殆どない。それどころか、静止画だってない記事が大半だ。
(*3) それは僅か2年足らず前の事だ・・・この間に民主党政権が我が国にもたらした災厄は別にして、だな。