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 報じられているのは、東日本大震災発生以降7日間にわたる、首相官邸の福島原発対応。
 
 先ずはタイトルにした通り、初動に於ける菅直人の反応、即ちまだ情報も集まらない段階であるからほぼ確実に「勘働き」は、意外なぐらいにまともであり的を射ていた事がわかる
 
1> 「まず、安全措置として10キロ圏内の住民らを避難させる。
2> 真水では足りないだろうから海水を使ってでも炉内を冷却させることだ」
 
 上記1>はこの段階では早い気もするが、避難範囲を順次拡大する「兵力の逐次投入」よりは、最初に広めに避難させて後でその範囲を絞る方が、避難者から文句は来るだろうが安全ではある。「10キロ範囲で避難。20キロ範囲で屋内退避」としている3/18朝時点の現状に照らしても、悪くない判断だ。
 上記2>は結構核心を突いていたことになる。より正確には「真水では足りない」ではなく「真水を供給して冷却するシステムの機能停止」ではあるが、結果的に海水による冷却に踏み切ってもなお間に合わず、自衛隊のヘリや消防車、警視庁の放水車を投入しているのが現状だから、冷却水面からの炉心露出も水素爆発も起こる前にこれが実行されていればと、悔やまれるところである。
 
> 首相の意向は東電に伝えられた。
> 「これが政治主導だ」。首相はそうほくそ笑んだのではないか
 
 と産経は報じるが、その「首相のほくそ笑み」には一定の正当性がある。菅直人がその勘働きを「政治主導」で押し通していれば、東電が懸念したように「まだ使えたかも知れない原発を廃炉にする」可能性はあっても「炉心が冷却水面から露出して水素爆発に到る」可能性を小さく出来た筈だから。
 
 無論その「正しい判断」は、東日本大震災発生で追及中断された外国人献金問題とは別次元の評価ではあるが。それでも菅直人政権発足以来の大金星となった可能性がある。
 
 但し、菅直人や民主党の「政治主導」の実績が、殆ど宣伝効果しかない「事業仕分け」ぐらいでしかないことを考えれば、「東電の海水冷却反対を諒とする」と言う上記2>の初期判断を交代、もとい、後退させるのも、無理はない心理ではあろう。
 
 が、「政治は結果責任」とは世上良く言われるところ。東電が賛成しようが反対しようが、上記2>の「勘働き」にも拘らず早期から海水による冷却に踏み切れなかった責任を、最高責任者である首相たる菅直人は、免れる訳には行かない。
 
 だが、続く産経の報道は、その初っ端に見せた菅直人の「勘働き」がその後全く精彩を欠くどころか、機能していないことを報じている。報道記事としてはその筆が聊かwet=情緒的ではあるが。
 
3> 「テレビで爆発が放映されているのに官邸には1時間連絡がなかった」
 
 上記1>~2>で見せていた冴えた勘働きが、時間が経過し情報が集まるに従って鈍ってくる様に思えるのは何故だろうか。菅直人は徹底的に直感的な野性の勘の人であって、理論と分析の人では無いと言うことだろうか。
 それにしてもこの上記3>の台詞は妙だ。この台詞を吐いたときに東電を怒鳴りあげていたと言うのだからなおさらだ。
 
会議室外まで響きわたった東電しかる菅首相の声  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110315-00000273-yom-pol
 
 言うもサラナリであるが、テレビの映像は下手すればリアルタイムだ。それに対し、東電から官邸への報告は、手順を踏むのもさることながら、相応の情報収集と分析が必要だろう。テレビ映像から1時間送れてタダ「爆発がありました」と報告されたのならば、その手順や組織を大いに改善しなければならないだろうが、それならばその指示を出すべきで、怒鳴る事は何の足しにもならない。
 
4> 「撤退したとき、東電は百パーセントつぶれます」
 
 上記4>は福島以外にも原発を擁する東電及びその協力会社の社員並びに経営者を、相当矮小化していないか。「現場の社員全員を撤退させたがっているとの話を聞いていた」そうだから、感情的になっていたことは想像できるが、それにしても「東電は潰れるぞ。」と日本国首相が発言すると言う事は、「東電を潰すぞ。」と脅迫しているのに等しい事が、何処まで菅直人には理解できているのだろうか。
 さらには、そんな脅迫が、福島原発トラブルと言う、今般の事態の解決に、邪魔にはなっても役に立つ事はあるまい、と私は思うのだが・・・
 
5> 「東電の危機感が薄い。だから乗り込んだ」
 
 上記5>は、一見まともなようだが、上記4>と考え合わせるととても素直には肯けない。何しろ菅直人言うところの「東電の危機感」は、「東電と言う会社が潰れるかもしれない危機感」でしかないからだ。菅直人が上記4>で煽る危機感も、その程度でしか無いと言うことは・・・ひょっとすると、菅直人自身の危機感もその程度と言うことだ。
 そりゃ景気がいい世の中ではないし、失職失業と言うのはそれ相応の「恐怖」ではあろう。が、逆に言えば、「東電が潰れる」と言う菅直人の脅迫は、その程度の脅迫でしかない。早い話、辞職を覚悟している人間に対しては、殆ど効かない脅迫なのである。
 
 まあ、冷静に考えてみるが良い。米紙が「顔のない50人」と報じ、スイス紙が「50人の英雄」と報じる、今正に福島1号原発で事態の改善と収拾に当たっている東電社員及び協力社員達は、その職を失いたくないから放射能の危険と戦いながら現地に残り死力を尽くしているのだろうか。東電の経営陣にしても、その東電経営者と言う地位を失いたくないから福島原発に対処しているのだろうか。
 
 私にはそうは思われない。特に、現地の職員については。
 
 「原発を預かり、その原発を含めて電力を安定供給する。」のが東電の仕事であり、その前提が「原発の危険をあるレベルに押さえ込む事」である。その「あるレベル」ってのは結構恣意的ではあるのだが、それに失敗した失敗の仕方によっては福島原発周辺住民に犠牲者を出しかねないし、そうでなくても我が国の原発行政に大いに支障を来たし、我が国の安定した電力供給を危うくしかねない。かくてはならじと言う、その職業意識、プロ意識があればこそ、周辺10キロから住民は退避した福島1号原発に踏みとどまれるのではないか。
 
 さらには、「福島原発周辺住民に犠牲者を出しかねない」と言う危機感を共有するからこそ、警察官・自衛官も東電社員と肩を並べて福島原発対処に身命を張っているのではないか。少なくと警察官・自衛官たちは国家公務員で、東電が潰れたところで直接には影響を受けない立場だ。
 
 言い換えるならば、菅直人の「東電を潰すぞ」と言う脅迫は、少なくとも現地で直接対応作業に当たっている人々の「危機意識を高める」上では全く役に立っていないと断言できる。
 さらに言うならば、「東電を潰すぞ」と言う脅迫で「東電の危機意識を高める」と考えているような菅直人は、「福島原発周辺住民に犠牲者を出しかねない」と言う危機感を、共有していないと断言できる。共有しているならば、「脅迫の台詞」はこんな形を取らない筈だから。
 
 もっと言うならば、今、福島原発現地で事態に対応している東電社員並びに協力社員、警官、自衛官たちは、「東電を潰すぞと脅せば東電の危機意識が高まる」と思っている菅直人とは職責に対する意識が違うのである。
 
 役に立たない「現地視察」や「陣頭指揮」を取る暇があったら、菅直人は彼らの爪の垢でも煎じて飲むが宜しかろう。ああ、その前に、「コンクリートから人へ」なんてのはおためごかしのキャッチコピーでしたと認めて謝罪するのだな。福島原発トラブルの危機意識を高めるために「東電を潰すぞ」としか言えないような奴が「コンクリートから人へ」では、詐欺と言うものだ。
 
6> 「ぼくはものすごく原子力に強いんだ」
 
 上記6>の菅直人発言は、前法相であった柳田の尖閣沖中国「漁船」体当たり攻撃事件について「造船の勉強をしたので当然、航路なども勉強した。(衝突ビデオは見ずとも)図面を見て事件の内容が分かった」発言を彷彿とさせる。
 
柳田法相は、ピエロか小心者か売国奴である。-法相、「大学で勉強したので」尖閣衝突ビデオを見るのは不要と公言。 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33998458.html
 
 先行記事にもしたところであるが、幾ら大学で専門的に学んだとしても、また学生時代の成績が途轍もなく良かったとしても、それだけでこんな自信が得られると言うのは、私には理解できない。その自信を私が理解できる必要はないのかも知れないが、それは十中八九どころか先ず間違いなく過信であり、かかる過信・自惚れは、他人の言う事を聞くのを拒絶してしまうから、例えその当人が優秀であっても厄介であり、損なのである。況や、菅直人、柳田稔、鳩山由紀夫、そのほか似たような自信を示す民主党政権首脳部の中で「優秀」なんて言える奴が、誰か居るだろうか。誰か居ただろうか。
 
 引用した産経記事は、前々官房長官の身を問責決議で追われた筈の仙谷が、官房「副」長官を兼任する事になった件に触れて締めとしている。仲々、上手い「オチ」だ。
 
枝1> 「震災対策や被災者支援は政治力を要する仕事だ。
枝2> 仙谷新副長官が適任だと首相が判断した」
 
 この枝野発言が意味する所は、「民主党の中で政治力を持つような者は、もはや仙谷ぐらいしか残っていない。」と言う主張だ。屁理屈野郎の売国奴・仙谷をして「政治力がある」と言わざるを得ないのだから、民主党と言うのは一体どんな人間集団なんだろうと、新ためて感慨深いものがある。まあ、鳩山が前党首で、菅が現党首で、黒幕が小沢であるような党では、無理からぬところでもあるが。
 
 重複覚悟で結論付けるならば・・・・
 
 菅直人が福島原発トラブル当初から「海水による炉心冷却」を考えていたのならば、その考えは、後知恵からすると正しかったと言える。
 東電の反対を諒として、その当初の考えを修正し、「海水による炉心冷却」を遅延した責任は、究極的には菅直人及び民主党政権のものである。他の誰にも責任の被せ様がない。
 その後の菅直人の対応は、福島1号原発で対応する現場とは乖離している。
 その乖離は、仙谷の官房「副」長官就任で、なお大きくなるだろう。
 
 而してその乖離は、日本国民と菅直人並びに現・民主党政権との間に横たわる乖離でもあるように、私には思われる。
 
 如何に、菅直人。 
 如何に、国民。