新ミサイル移転、年内に結論 防衛相、米国防長官に表明  http://www.asahi.com/politics/update/0113/TKY201101130261.html
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 報じられているのは、来日中のゲーツ国防長官と北沢防衛相の会談。
 報じているのは朝日新聞であるから、慎重に読むべき記事であるが、おおむね以下の事項を話し合ったとの事。
 
(1) 日米共同開発の新型弾道弾防衛ミサイルSM-3 Block2Aの第三国移転について。米国は欧州へ輸出したい意向。
 ⇒ 北沢防衛相は今年中に「第3国への移転」について結論を出す。

(2) 嘉手納基地のF-15訓練の一部をグアム移転する件について、協議したい意向を日本側は伝えた。
 
 さらにゲーツ国防長官は上記に先立ち菅直人や前原外相とと会談し、その会談内容は以下の通り報じられている。
 
(3) 前原氏は「(沖縄県内移設を明記した)昨年5月の日米合意に沿って実施する方針に変わりない」と説明し、沖縄の負担軽減策への協力を改めて求めた。
(4) ゲーツ氏は「普天間代替施設の問題の進展に従って、負担軽減策も実施したい」と述べ、移設の前進が前提との考えを強調した。
 
(5) 菅氏は普天間移設問題について「5月の日米合意に沿って進める方針に変わりはない」と述べ、沖縄の理解を得るために努力していく姿勢を示した。
 さて、朝日記事がそのタイトルにも掲げ、上記の記事でも筆頭に上げているのが、上記(1)「弾道弾防衛ミサイルSM-3 Block2Aの第三国移転」である。

 補足説明しておくと、イージス艦から発射して弾道ミサイルを大気圏外で迎撃、直撃して破壊してしまおうと言うのがSM-3。米海軍の艦対空ミサイルの老舗・スタンダード・ミサイルの最新型で、そのSM-3 Block1が先の北朝鮮ミサイル発射試験の際はイージス艦「こんごう」級に搭載されて洋上展開したのは、記憶に新しいところだ。防衛省の中庭に展開した、終末段階弾道ミサイル迎撃用のパトリオットPAC-3程には目立たないので(*1)、印象は薄いかも知れないが、日本のミサイル防衛の前段・上段を受け持つミサイルだ。
 Block2AはそのBlock1の発展型で、現在鋭意日米共同開発中であり、それ故に「第三国移転」には日米両国の合意が必要となっている。上記記事の報じるところでは、米国が欧州への輸出を考えており、これに対してどうするか日本側・北沢防衛相が「今年中をめどに結論を出す考えを伝えた。」そうである。
 
 一方で毎日新聞はその11月14日社説で上記(1)SM-3Block2Aの第三国輸出について慎重になることを求める社説を掲載しているが、「武器輸出三原則をなし崩しにするな。」と、一言言っているだけ」の全くつまらない社説だ。
 
社説:MD第三国供与 なし崩し避ける基準を http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110114k0000m070126000c.html
 
 恐らくは、毎日新聞社説氏にとっては「武器輸出三原則を守り、武器の輸出はしない。」と言う事が自明にして絶対善であるからそうなるのであろうが、私のような「武器輸出も、空母保有も、核兵器装備も、必要とあれば我が国は敢行すべきであるし、現行憲法がその妨げになるのならば、修正なり廃棄なりすべきである。
 我が国にとっての必要・不要の議論は、現行日本国憲法に対する適否判定に優先する。」と割り切る実利主義・功利主義・合理主義(*2)に対しては、全く何の説得力もない。
 
 我が国がSM-3の第三国供与で最優先すべき基準は、「我が国にとって利益となるか、否か。」だ。ここで言う「利益」には、経済的利益ばかりではなく、国防上、安全保障上、軍事上の利益も含める。
 上記記事で報じられるところでは、ゲーツ国防長官は第三国移転=輸出による経済的利益のみに触れているが、「イランの弾道ミサイルに備えて」とも報じられているから、輸出先である欧州の国がNATO加盟国即ち米国の同盟国であることは、先ず自明であろう。味方の味方は味方だから、間接的には日本の同盟国でもある。
 つまり、「SM-3の欧州への輸出は、我が国にとって安全保障上の利益でもある公算大」。別の報道ではこの欧州へのSM-3輸出は了承される方向と言うのも、うべなるべしと言うべきだ。民主党政権にしては珍しいぐらいのまともな対応だ。
 
 即ち、私はこの米国提案「SM-3ブロック2A に欧州輸出」に、基本的に賛成する。
 
 「今年中をめどに結論」と言う事は、今年一杯ぐらい民主党が政権の座にあり続けようというところが、業腹ではあるが。
 
 尤も、SM-3がイージス艦発射であり、かつその発射には「Mk41VLSさえあれば良い」訳では全くなく、イージス戦闘システムが必要である事を考えると、現状欧州で輸出先たりうるのは、スペインのアルアバロ・デ・バザン級フリゲイトと、ノルゥエーのフリチョフ・ナンセン級フリゲイトしかない。どちらもソフトウエアの改修が必要だろうから、米国にしてみれば、それだけ大きな商取引となる。あわよくば、SM-3と弾道ミサイル防衛を梃子に、新たなイージス艦を輸出できるかも知れない。いずれにせよ「SM-3Block2Aの欧州輸出」で米国が日本以上の経済的利益を上げることは間違いなさそうだ。
 
 国益の追求こそ外交の目的なのだから、これぞ外交と言うべきだろう。
 
 
 ところで・・・・
 
 朝日新聞記事にも最後に触れられる「だけ」であり、毎日社説では社説の「〆」に使われて居るのが、( 未だに性懲りもなく)日本国首相である菅直人の普天間基地移設問題に対する対応、上記の(5)である。
 
菅1> 「5月の日米合意に沿って進める方針に変わりはない」と述べ、
> 沖縄の理解を得るために努力していく姿勢を示した。
 
 私は一昨年夏の「政権交代」=民主党政権誕生=鳩山政権発足=普天間基地移設の「問題化」以来、当ブログでこの普天間基地移設問題を追いかけ、一連の(*3)ブログ記事としてきた。
 
 普天間基地移設問題経緯(26)までの記事は以下URLに独立させた。
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32456004.html
(27) 鳩山首相の負の遺産―普天間基地移設問題経緯(27)―  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32800905.html
URL: http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32800999.html
(28) 選挙対策あって政策なし―普天間基地移設問題の経緯(28)―  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33419360.html
 
 散々パラ「5月決着」を吹聴し、殆ど吹聴しただけで、「少なくとも県外」と言うのは「民主党党首(当事)の口約束に過ぎない」と認めただけに終った鳩山前首相の退陣=管副首相(当事)の首相昇格 以来大きな動きがないので、同シリーズは「開店休業」状態なのであるが、それでも同問題について、私は一定の関心は払っていた心算だ。
 
 その私の目からすると・・・「菅直人が普天間基地移設問題について、何らかのアクションを取ったかぁ??」
 思い当たる事と言えば、首相就任早々に、「副首相時代に、普天間基地移設問題の難しさから「沖縄独立論」を半ば冗談ながら発言した。」と本に書かれ、ために我がブログ記事で就任早々「首相失格」と断じられた事ぐらいだ。( ついでに書けば、本件について質問された仙石が、今も変わらぬ奇怪な法理論=屁理屈を展開し、これまた「閣僚失格」と断じた記事も書いている。)
 
首相失格 菅首相の「沖縄独立」論を斬る-沖縄が独立すれば米軍基地がなくなると思っているところが阿呆だな。   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32916827.html
弱将の下に、勇卒無し。-仙石官房長官の閣僚失格-  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32948296.html
 
 そのくせ、上記菅1> 「5月の日米合意に沿って進める方針に変わりはない」 とは・・・ぬけぬけと良くもまあ。
 「方針に変わりはない。何も行動していないだけだ。」と言う心算だろうか。
  
 「方針だけなら、サルでも立てる。」と言うべきかな。
 
 

<注釈>
(*1) 
何しろ、イージス艦のVLS=垂直式発射管の中に入っているから、外見ではSM-3だか、対空用=対航空機用のSM-2だか、わからない。おまけにイージス艦は洋上展開しているから、防衛省中庭に鎮座ましますPAC-3程には目立たない。
 
(*2) 人によっては「軍国主義」だの何だのと言い出すところかも知れないが・・・だから、何?
 
(*3) 30本近い数の。関連記事を入れたら、30本は越える。