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 半ばシリーズ化しつつある、社説比較。今回の社説は4大紙(朝日、毎日、読売、日経)+産経のレギュラー5紙に、琉球新報と東京の2紙を加えた「4大紙+3紙社説比較」。題材としたのは、先頃我が尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船に中国「漁船」が体当たり攻撃をかけて来た事に端を発し、中国で「発生」した反日デモであるが、暴徒化したその様相はとてもじゃないが「デモ」などと呼べない。実態を表すために、本記事では「中国の反日暴動」と表記するが、マスコミ各紙の表記は「反日デモ」で統一され、抑制されているようだ。まあ、「内乱」「紛争」を「事変」とぼやかした、先人に倣ったのであろう。奇しくも場所は同じ大陸であることだし。
 
 例によって朝日の社説とその類似点を赤字で、産経の社説とその類似点を青字で、産経にも朝日にもない上特徴的な論点は黒字にアンダーバーをつけて表した。
 
 対象となった中国の反日暴動は連日続いており、今現在も毛族中であるが、社説として取り上げる速度は少々ばらついたようだ。産経と日経が真っ先に18日の社説にしたのに対し、朝日・東京・読売・毎日が翌19日。琉球信奉は一番遅くて20日に社説としている。
 
 評価項目の1番目は「中国におけるデモの位置づけ」である。何しろ中国の反日暴動は、「日本における反中デモが原因」などと中国共産党政権とその尻尾どもは主張しているのだが、曲がりなりにも民主主義を掲げ、言論の自由を保障しているわが国のでもと、共産党一党独裁の非民主主義国家、都合の悪いデモは郡や戦車を使ってでも鎮圧する中国のでもとでは、自ずとその重みが違っている。其処をどう社説に盛り込んだか、盛り込まなかったかを評価している。
 
 評価項目の2番目は、今回反日暴動の背景説明。中国共産党政権の言う「愛国心の発露、義憤による」と言う評価を鵜呑みにするかどうかが一つのポイントだが、流石に鵜呑みにする社説はなかった。
 
 評価項目の3番目は、反日暴動に対する中国政府の対応と評価。
 評価項目の4番目は中国政府の取るべき反日暴動対策で、評価項目の3番目と密接に関わる項目である。前者が現状とその評価であるのに対し、後者が要望・理想を示している。
 
 評価項目の5番目は日本政府の手折るべき策。表に示すとおり、必ずしも言及している社説ばかりではない。
 
 以上5つの評価項目で、4大紙+3紙の社説を見ていこう。
 
 何とも締まらないのは朝日の社説である。評価項目1「中国に於けるデモの意義」では、
 
A1> もちろん中国の人々にもデモや集会をする自由がある
と、あたかも中国が、我が国と同様の自由主義陣営にある民主主義国家かの如く記述し、暴徒化・暴動については犯罪であり愚行であると非難するが、
 
A2> しかし、それが店舗や自動車の破壊に発展するのは見過ごすことが出来ない犯罪であり、
A3> 中国のイメージを台無しにする。
これが「折角朝日は中国のイメージアップを図ってきたのに・・・」と言う恨み節に聞こえるのは、私だけだろうか。
 評価項目2「今回暴動の背景」が最もつまらないのは朝日社説だろう。「中国内陸部の沿岸部に対する経済格差」「北京の5中前回開催による警備のゆるみ」などを上げるが、
 
A4>  中国は経済成長至上主義で発展を続けてきたが、政治的な自由はなお欠いたままだ。
A5> 13億人が食うや食わずのどん底状態から抜け出すためには、やむを得ない
面があっただろう

と、あくまでも中国政府の立場に理解を示す。
 評価項目3「中国政府の対応と評価」で、中国政府が反日暴動に示した「理解」を、暴動を助長させかねないモノとして非難する点では全紙が共通しており、お陰でこの欄は「朝日と同趣旨」を示し赤字が並んでいる。「衆目の一致するところ」とは言えそうだ。
 
 評価項目4「中国政府の取るべき策」では「自由な発想と行動、情報の公開と共有」の重要性を説くのだが、5中全会の例を引き、
 
A6> 習近平国家副主席ら次世代のリーダーに期待するしかないのだろうか。
と、「次世代のリーダー」に期待するのみ。
 まあ、取りようによっては、「朝日は、中国の次世代リーダーが権力を掌握するまで、反日暴動は続くことを是認している。」と取れなくもないが・・
 
 評価項目5「日本の取るべき策」には言及無し。反日暴動の対策を、前面的に中国責に帰した形ではあるが・・・・どうも全体的に言い訳がましい。「中国様の悪口は書けないから、批判的な記述は減らすか中和させるかしておこう。」と言う姿勢に見えて仕方がない。
 
 朝日と類似しているのが、琉球新報だ。まず評価項目1には言及がない。これでは中国の反日暴動に繋がった反日デモも、日本のデモもあたかも同列であるかのように見えてしまう。
 評価項目2では、格差拡大などの胡錦濤政権への批判が「反政府デモ」化の動きにもなっていることを指摘している。
 だが、琉球新報の真骨頂は評価項目3だろう。項目は3番目だが、社説では出だしの部分である。
 
R1> 中国政府が外交と内政の板挟みに苦悩している。
R2> 中国各地で起きている「反日デモ」への対応のことだ。
 「苦悩している」と、琉球新報は朝日以上の「理解」を中国政府に示している。
 であればこそ琉球新報の評価項目4は、
 
R3> 中国政府は国際世論に耳を傾け、
R4> 自国民に「言論の自由」と「知る権利」を保障し、
R5> 中国国民がその理性と知性を発揮できる
R6> 真の民主政治への転換を求めたい。
と、高らかに訴えてしまうのである。
 ある種理想であることは認めるが、中国共産党政権が上記R3>~R6>の様な対応をする何て事は、私の想像を遙かに絶しているのである。
 返す刀で評価項目5で日本には、「日中両政府」と十把一絡げにして「冷静で穏健な対応」を求めてしまっている。が、我が国政府が冷静でも穏健でもない対応なんてこの前したのは一体いつのことだぁ?
 逆に中国政府はついこの前もこの前、今回反日暴動のきっかけにもなった中国「漁船」船長逮捕に対し、思いっきり感情的で過激な対応をして見せたのは中国政府ではないか。何が「日中両政府に冷静で穏健な対応を求める」だ。
 
 東京になるともう少し中国に対し現実的になる。評価項目1でも、中国の周回・デモが中国共産党政権下で厳しく制限されていることに触れている。評価項目2で反日デモの背景として「党内勢力による黙認の可能性に触れているのも、朝日とひと味違うところ。
 評価項目3も中国政府の「デモ迎合」=反日暴動教唆を非難するばかりではなく、「矛先がやがて自らに向かう可能性があることを悟るべきだ。」と、中国政府の釘を刺す。その「釘」が社説自体の締めにもなっている。
 こうなってくると評価項目4が「産経と同趣旨」を意味する青字がズラリと並ぶび、「反日教育、反日宣伝の転換」を求めている。
 しかしながら、評価項目5番目は、日本政府に「感情的な対応を控える」と言うのみで。酷く腰の引けた日本側策だ。
 
 読売の社説も東京に大同小異だ。評価項目1ではデモの発生を

Y1>  携帯電話のショートメールの呼びかけに応じて大学生を中心に一般住民も加わった。
として自然発生的と捉えるかの如き記述だが、評価項目2で、

Y2>  治安当局が若者たちの不満を和らげるため反日デモを誘導しているのではないか、
Y3> との見方すら出ているのもこのためだ。
として「治安当局による反日デモの誘導」に触れているのとは、矛盾するとは言わないまでも、齟齬を生じ、論旨を弱めている。
 それがあらぬか、タイトルでも、評価項目4でも「中国政府は反日デモの沈静化につとめろ。」としか言っていない。琉球新報や朝日の脳天気な「過大要求」よりは、確かに現実的ではあるが、主張の弱さは否めない。
 
 日経の社説は評価項目1をすっ飛ばした代わりに、他の評価項目を充実させた格好だ。評価項目2では定番の「格差拡大」に加えて「現政権の指導力低下の可能性」を指摘し、評価項目4では反日教育の改善を「法治の確立」への転換と位置づけ、反日暴動を放置する05年と同様の対応では、
 
N1> 今回も違法行為を摘発できなければ、
N2>  国策である「法治」の確立には遠いと言わざるを得ない。 
として、中国治安当局の奮起を促す等、一歩ずつ踏み込んだ形だ。
 そのためか、評価項目5も日本政府に中国に対する厳正な対処、日本人及び日系企業の安全確保要請とその実施を要望すると共に、民側にも「中国リスクの再検討」を訴えている。
 
 毎日の社説も一寸特徴がある。評価項目1では今回反日デモが発生した諸都市は、
 
M1> 軍事機密を守るために監視が厳しいはずだ。それなのにデモは起きた。
とし、更に評価項目2で
 
M2> 仕掛け人は別にいる。9月の反日デモからずっと同じ系統だろう。
M3> スローガンやデモのスタイルがそっくりだからである。
として、政府なかんずく軍部の関与を強く示唆している。
 それが評価項目4の次世代リーダー習ナントカへの「強硬路線を取る危険」への懸念として結実している。
 社説タイトルの通り「中国の底流は深刻だ」として、反日暴動への軍部関与の可能性と、その軍部を支持基盤とする次世代リーダー習ナンとかへの警鐘は良いのだが・・・評価項目5で日本政府の「戦略的互恵関係の深化」に諸手をあげて賛同し、
 
M4> まず中国首脳との関係を築き、中国の深部の動きをつかむことが先決だ。
と言うのは、あまりに甘い考えでは無かろうか。
 菅直人や売国奴千石が、中国共産党政権首脳部とどんなに親密な関係を築こうとも、「中国の深部の動き」を察知できるとは、私には想像すらもできない。
 
 産経の社説が一番まとまっている。
 評価項目1こそ「組織的な動き」の一言しか無いが、評価項目2では、
 
S1> 国内の不満が反政府へと向かうのを封じる一定の「ガス抜き」や対日圧力の一環として、
S2> 今回の地方デモを容認したのだとすれば、非常に危険である。
とし、中国国内政策としての反日デモ利用を明確に警告している。
 評価項目4では、そもそも在中邦人並びに邦人企業の安全確保は中国政府の責任であると断じ、偏向した中国愛国教育を非難し、同時に尖閣諸島の領有を主張する中国政府に、史実を上げて反論している。
 
 その結果としての評価項目5こそ産経社説の真骨頂であろう。日本政府に、反日デモに臆することなく尖閣両雄の主張を貫き、尖閣「漁船」衝突ビデオの公開と、以って国際社会へ事実関係を明らかにせよと訴える。
 今回比較した社説の中で、反日暴動の発端とされた尖閣諸島に関わる日本側対策似触れたのは、産経一紙のみなのである。