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釈放理由、官邸に事前報告=尖閣漁船衝突事件   http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101012-00000060-jij-pol
時事通信 10月12日(火)13時6分配信
 沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、那覇地検が中国人船長の釈放を発表した9月24日、「わが国国民への影響や日中関係も考慮する」との釈放理由が事前に首相官邸に報告されていたことが12日、政府が同日閣議決定した答弁書で分かった。
 答弁書によると、釈放方針は同月24日午前10時ごろから約1時間行われた那覇地検、福岡高検、最高検による協議で決定。その後、この方針は柳田稔法相(同11時55分ごろ)、滝野欣弥官房副長官(午後0時半ごろ)、仙谷由人官房長官(同)、前原誠司外相(午後2時前)、菅直人首相(午後2時ごろ)にそれぞれ報告された。
 
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 報じられているのは、尖閣衝突中国「漁船」船長釈放の経緯に関する答弁書。12日に閣議決定された答弁書というから、菅首相率いる現民主党政権が国会の場で表明する正式見解と言う事になる。
 逆に言えば、菅直人はじめとする閣僚のおれきれきは、レンホウ大臣を含めて「中国「漁船」船長釈放の経緯はしかじかであった。」と公言して憚るところがない、と言うことである。
 
 で、報じられる所では、その答弁書には以下のように記されている。例によって、適当なところで切って番号を振った。
1> 釈放方針は同月24日午前10時ごろから約1時間行われた
2> 那覇地検、福岡高検、最高検による協議で決定。
3> その後、この方針は柳田稔法相(同11時55分ごろ)、
4> 滝野欣弥官房副長官(午後0時半ごろ)、
5> 仙谷由人官房長官(同)、
6> 前原誠司外相(午後2時前)、
7> 菅直人首相(午後2時ごろ)にそれぞれ報告された。
 
 
 さて、仮にこの答弁書が全て真実を語っているとしよう。さらに、少なくともネット上の噂では当該中国「漁船」が海上保安官を殺しかけたとされているが、そんな事実はなく、ただ我が海上保安庁巡視船の損傷具合が示す通り、中国「漁船」が我が巡視船に衝突しただけだとしよう。
衝突された巡視船の調査、尖閣領海侵犯で―朝日は「中国船と衝突の巡視船」と表現   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33597832.html
 
 その上で、上記の政府対応、くどい様だが閣議決定までされて政府が公言している対応はどうであろうか。
 
 上記1>~2>は政府ではなく司法の対応だ。那覇地検、福岡高検、最高検が協議の上で当該中国「漁船」船長の釈放を「決定した。」のだと言う。諸兄御承知の通り菅直人はじめとする政府はこの決定に政治介入はしていないと言っているし、この答弁書に政治介入の「セ」の字もないのはその主張に沿った物だろう。
 マスコミの大半はその「政治介入はなかった」と言うのを疑問視しているのは以前記事にした通り。
 
4大紙+3紙 社説比較 中国「漁船」船長釈放   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33786657.html
 
 だが、この上記1>~2>に於ける最大のポイントは、政府の政治介入の有無に関わらず、政治的理由を以って司法がその判断を曲げたことである。

 「曲げた」そう、間違いなく「曲げた」のである。
 冷静に考えればわかることだ。日本の漁船が密漁を海上保安庁巡視船に見つかって逃亡を図り、巡視船に体当たりを食わしたりしたら、何事もなく釈放になったりする訳がない。日本人に対してなら適用される筈の法律を、「今後の日中関係を考えて」適用しないのであるから、これは司法の判断を曲げたとしか言いようがなく、大津事件で司法の先人達が見せた気概と矜持を粉砕して見せたものである
 
尖閣領海侵犯中国「漁船」船長釈放に関する那覇地検への公開質問状、もとい、質問を公開する。  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33708602.html
司法の自殺1-尖閣領海侵犯中国「漁船」船長釈放に於ける那覇地検の4つの大罪   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33720308.html      http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33720331.html 
 
 もし、政府の公式見解と異なり、政府による政治介入「政治主導」が働いていたならば、これはこれで糾弾すべきとは思う。が、三権分立を日本国憲法の基本にすえる現代では、政治介入は表沙汰にはない。大津事件の際には政治介入はおおっぴらにあったばかりではなく、我が国には同盟国もなければ、軍隊も近代化が緒についた程度。それで強露=ロシア帝国に相対して司法の独立を保持した先人に対し、一体何たる様であるか。
 政府からの政治介入が本当になく、自主的に法の適用を曲げたのであれば、それもまた情けない事この上ない。大津事件に例えるならば、政府国民が司法の独立を支持し、場合によっては日露開戦やむなしと覚悟を決めている時に、津田三蔵を極刑に処してロシアに阿って見せたようなものだ。
 従って、上記1>~2>の対応で、糾弾されるべきは那覇地検、福岡高検、最高検の司法である。本稿のタイトル冒頭を「司法は自殺し、」とした所以である。
 
 では、政府の対応はと言うと、上記答弁書で言うと3>~7>、即ち中国「船長」釈放の決定は、公表前に法相、官房副長官、官房長官、外相、首相に報告されたと言う。直接は書いていないが、2時間ほどで我が国の最高司令官殿(*1)にまで伝達されたのだから、大した問題にはならず(*2)、すんなり通ったのだろう。
 事実、上記7>の報告を受けた後、菅直人首相が就寝したと言うのは尖閣集中審議で当人が答弁している。
 
【尖閣集中審議】菅首相の主な発言   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100930/plc1009302310038-n1.htm
 
 つまり、首相は中国「船長」釈放が政治介入の有無に関わらず政治的理由であることを承知しつつ、それを是認し了承したのである。これは、司法の中国「漁船」船長釈放の決定が、少なくとも政府の、菅首相の期待通りであったことを示しており、政治介入の存在を相当強く示唆している。
 あまつさえ、政府の見解は今に至るも、「政治介入は無かった」どころか「中国「漁船」船長の釈放は地検の判断」であり、地検の判断を政府は受け入れただけ、と言う立場を取っている。この論理の意味するところは、法治国家としての日本の体面をかなぐり捨てる事さえ地検が判断でき、政府は、菅首相はその判断に従い、日本は法治国家であることを辞めたということだ。
 即ち、地検の判断によって日本国は、中国並みの人治(*3)国家に成り下がったと言う事である。なるほど、先の千葉法相の恣意的死刑執行(*4)は、このための、つまり日本人治国家化への、布石であったのか。

 さらに言えば、ただ単に法治国家であることを辞めただけではない。人治国家である以上、法律は恣意的に適用され、今回の「判例」は「今後の日中関係を考えて」恣意的に適用/不適用されているから、これは中国の治外法権即ち、中国人が日本国内で犯罪を犯しても罰せられない権利を認めたに等しい。治外法権なんてのは、不平等条約を結ばされるか、国家として認められていない場合にしか認められない一方的な権利であるが、菅首相は、現民主党政権は、一地検の判断に従いそれを認めようと、この答弁書は物語っているのである
 
 とても正気の沙汰とは思われない。
 「現実とは思われない。」「まさかそんな事はあるまい。」そう、現実逃避したくなる心理さえ働くほどだ。
 
 だが、現実だ。
 
 那覇地検は、政府の政治介入の有無に関わらず、政治的理由により司法判断を曲げて中国「漁船」船長を釈放した。
 菅首相はじめとする現民主党政権は、政治介入を実施したか否かは別にしても、上記の政治的理由による那覇地検・福岡高検・最高検の中国「漁船」船長釈放を了承し、以って「日中友好」と称する中国の利益に阿って、日本の国益を大いに損ねた。
 
 さらには、上記のことを閣議決定した答弁書に堂々と記載し、恬として恥じること無いのが菅首相であり、現・民主党政権である。
 
 処で、いつもならこのあたりで上記の如き民主党を政権与党の座につけてしまった昨年夏衆院選の「国民の選択」を問う、否、なじるところであるが、残念ながら今回は、少なくとも素直にはそうできない。
 小泉首相の頃に尖閣に上陸した中国人を拘留すらせず即時釈放してしまった実績があるし、安倍元首相や麻生元首相ならば兎も角、「お隣の嫌がることはやらない」と靖国参拝を止めた福田元首相では、今回の民主党対応と大同小異ではなかったかと懸念されてならないからである。
 
 しかしながら、今回の尖閣衝突事件が起きた時点での政府与党第一党は民主党であり、ごたごたがあったと言うものの、首相は継続的に菅直人である。従って、菅首相及び現・民主党政権の責任、即ち私が問うている4つの大罪、即ち売国の罪、三権分立を犯した罪、法の前の平等を犯した罪、治外法権を認めた罪を、免れるものではないのである。
 況や、政権交代とは全く独立している筈の司法の罪は、さらに重いのである。

<注釈>
(*1) 
最高司令官なんだよぉ。最高司令官。昔で言えば天ちゃんで、統帥権を掌握しているのは、他の誰でもない、菅直人首相なんだよぉ。オーイオイオイオイ(男泣き)
 
(*2) それ以上に、那覇地検、福岡高検、最高検の協議は1時間しかかかっていない。つまりこの3者は殆どハナっから中国「漁船」船長釈放を決めていた事になる。予め、政府なり中国共産党御大なりの政治介入がないのに自主的に釈放を決めていたのだとしたら、精神状態を疑われて然るべきだろう。
 
(*3) 法治国家の対語は「徳治国家」と言うのが普通かも知れないが、法ではなく慣習法=人が統治する国が「徳」で治められる例は稀有だ。それ故にこそ、大憲章=マグナカルタが定められ、法治国家と言う概念が普及したのだろう。
 無論、今の中国共産党政権に、「徳」なんて薬にしたくても見当たらないのである。
 
(*4) それは、以前からの歴代法相たちの恣意的死刑執行停止の結果でもあるのだが。