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広く報じられる通り、我が領海たる尖閣諸島沖を領海侵犯した中国船が、海上保安庁巡視船の警告を無視したばかりか、シーシェパード張りに我が巡視船に体当たりをかけ、負傷者こそ出なかったものの物的損害を与えたために、我が海上保安庁は中国船長を逮捕した事件があった。この事件に関し、9月9日付で各紙が一斉に社説を出している。
朝日社説 尖閣―争いの海にせぬ知恵を http://www.asahi.com/paper/editorial20100909.html?ref=any#Edit1
読売社説 尖閣沖衝突事件 中国人船長の逮捕は当然だ(9月9日付・読売社説) http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100908-OYT1T01232.htm?from=any
毎日社説 中国人船長逮捕 粛々と厳正な捜査を http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20100909ddm005070113000c.html
日経社説 厳しい安全保障の現実を示す尖閣問題 http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE3E6E1E0E2E6E1E2E2EBE2EBE0E2E3E28297EAE2E2E3?n_cid=DSANY001
産経【主張】 中国船領海侵犯 すぐに逮捕すべき事案だ http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100909/crm1009090425001-n1.htm
朝日社説 尖閣―争いの海にせぬ知恵を http://www.asahi.com/paper/editorial20100909.html?ref=any#Edit1
読売社説 尖閣沖衝突事件 中国人船長の逮捕は当然だ(9月9日付・読売社説) http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100908-OYT1T01232.htm?from=any
毎日社説 中国人船長逮捕 粛々と厳正な捜査を http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20100909ddm005070113000c.html
日経社説 厳しい安全保障の現実を示す尖閣問題 http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE3E6E1E0E2E6E1E2E2EBE2EBE0E2E3E28297EAE2E2E3?n_cid=DSANY001
産経【主張】 中国船領海侵犯 すぐに逮捕すべき事案だ http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100909/crm1009090425001-n1.htm
この三大紙+日経+産経の社説を比較したのが添付の表である。表は前回社説を比較した際と同じフォーマットし、朝日の社説と類似する主張を赤字、産経の主張と類似する主張を青字で表した。表の最左列に朝日、最右列に産経の社説をまとめたのは、半ば偶然だ。
安全保障と防衛力に関する懇談会 報告書に関する大手新聞4社+産経の社説比較表 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33507066.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33507127.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33507127.html

船殻領海侵犯・中国船長逮捕対する社説比較表
先ず、中国船長逮捕に至る事件の経緯については、各社とも殆ど齟齬がないので、この欄は殆ど赤字で埋まっている。これは、言論の自由を少なくとも謳っているわが国に於いて事実が歪曲なく(或いは少なく)伝えられているか、強力な言論統制が行われているかの何れかを意味する。
私としては当然前者であって欲しいと願うが、後者であったとしても、中国船も船長も存命なのであるから、早晩化けの皮が剥がれるだろうと期待出来る。此処ではとりあえず前者として話を進めよう。
但し、表の一部青字になっていることが示す通り、産経だけは事件発生から中国人船長逮捕までに半日の遅れが発生している事に言及し、これをタイトルが示す通り糾弾している。その遅れの影に、本件、この時点では「中国漁船による我が国領海の侵犯」を外交問題化したくないという現民主党政権の弱腰(*1)を指摘している。
また、中国メディアは中国漁船ではなく日本の巡視船が「衝突してきた」と報じているそうだ。流石は「党の口舌=宣伝機関」と言うべきだろうが、ひょっとするとシーシェパードの手法を真似たか、技術提供(*2)を受けたのかも知れない。また、この中国メディアの反応は、朝日の社説でも触れられている。(*3)
日本の巡視船が漁船に「衝突してきた」と報道-中国メディア http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0909&f=politics_0909_003.shtml
さらに、今回の中国船長逮捕を当然のこととする主張も各紙共通している。先述の通り、産経だけはその逮捕が遅いと糾弾しているのであるが、逮捕自体の正当性は共通している。
以上の通り、事件の発生経緯とそれによる中国船長逮捕の正当性では共通する5紙の社説であるが、では今後どうするかと言うと、大分違う。違うからこそ、比較する異議もあるのだが。
朝日と毎日は「日中間で話し合え。」である。毎日の方が中国側の冷静な対応を求め、タイトルの通り「粛々と捜査しろ」であるが、朝日の方はひたすら話し合えで、タイトルの通り「争いの海にするな」である。これでは、社民党よろしく「ヘイワー、ヘイワー」と空念仏唱えているのと同じで、何も言っていないに等しい(*4)。挙句の果てに
> 不信は不信を呼び、脅威感さえ招きかねない。
> このような事件を繰り返さず、平和な海を維持するために、
> 日中は協働すべきだ。
「脅威感さえ招きかねない」と言うのは全く朝日的能天気である事よ。ロシアから買い上げた中古の空母を研究材料に、正規空母を建造しようとしている同盟国ですらない(*5)隣国が、海洋立国である我が国に取って、脅威でないわけがあろうか。
さらに言うならば、今回領海侵犯したのも、空母を建造しようとしているのも、中国側である。「不信を呼び、脅威感を招いて」居るのは中国側に他ならない。何が「日中協働すべき」であるものか。
読売の社説は、表に示す通り、前述の事件経緯も船長逮捕の正当性は勿論、中国側の反応についても朝日と類似した触れ方をしているが、対処法は全く異なり、「海自―海保の連携を緊密にすべき」と、産経に類似した対処法を示している。
毎日の社説は殆ど朝日のコピーだ。中国に「慎重な対応を求める」と言う但し書きが着いたのと、「今後の捜査も粛々と進めろ。」と言う点が、「ただひたすら日中で話し合え」の朝日とは異なる程度だ。(*6)
日経は今回の事件が我が国周辺の安全保障環境の厳しさを示すものだと警鐘を鳴らす。警鐘と言う点では朝日と同様ではあるが、その対策を「日本単独では限界があるから、日米安保を立て直すのが急務だ。」とし、現・民主党政権に安全保障に対する真剣な取り組みを求めている。
「党首選挙にかまけていないで、安全保障に真剣に取り組め。」と経済紙に言われる政府の情けなさったらないが、昨年夏の衆院選にて連立予定三党共通公約に安全保障と言う項目がなかったと言う驚愕の事実(*7)に比べれば可愛い物か。
産経は先述の通り逮捕執行までの遅れとその原因を糾弾すると共に、中国船長の取調べについても、領海侵犯と妨害行為のみならず、「漁船を装った情報収集や工作活動の疑い」も調べるべきだと主張している。つまり、当該中国船は漁船ではなく、不審船として扱うべきだと。「巡視船に体当たり」なんて過激な行動もそれならば説明がつくし、逆にそんな過激な逃走方を試みると言う事は、それだけ「怪しい」と言うことでもある。この点に触れた社説も、産経のみだ。
それ故に対策も、読売と同様の海自―海保連携の強化と共に「海洋権益を守るための万全な警戒態勢」を求めている。この主張は、日経の言う「日米安保立て直し」とあい通じるものがあろう。或いは強固な日米安保体制を前提としたものである。
以上から、今回の尖閣領海侵犯中国船長逮捕に対する新聞5紙の社説を極単純化するならば、
朝日 ≒ 毎日 ≠ 産経 = 読売 + 日経 + α
と言うところだろうか。
つまり、以下の記事にも比較した通り、「新聞を読み比べて、異論異説を知ろう!」と言うのならば、朝日と産経を比べるのが手っ取り早いと言う事だ。
朝日の代わりに、プラウダか赤旗でも良いのだろうが。
好対照な社説-東支邦海・南支邦海を巡る米中対立を受けて 朝日と産経 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33465480.html
新聞は教材たり得るか? http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33457469.html
新聞は教材たり得るか? http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33457469.html
<注釈>
(*1) と言うより、対中国朝貢姿勢だろう。
(*2) 若しくは、反日つながりで同根であるか。
(*3) ああ、やっぱり朝日も「党の口舌」である証拠かも知れない。
(*4) 「話し合いで平和的に解決しろ。」と言うだけなら、馬鹿でも言える。それで済むなら、この世には紛争も戦争もありはしない。
(*5) つまりは潜在的な敵国だ。
(*6) つまり朝日は、「話し合いのためには捜査も止めろ。」と言わんばかりである。
(*7) 及びその連立予定3党がその選挙に圧勝してしまうと言う恐怖と絶望。