応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
 
 今月28日の各紙社説を飾ったのは、首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」がまとめた報告書「未来への安全保障・防衛力ビジョン」に対する評価。 

 同報告書の原文は左記URLにあるので、国防や安全保障にに関心ある方( 願わくば、全国民が一定以上の関心を持つ事を、私は願って止まないのであるが。)は是非一読されたい。何しろ今年末に漸く出るはずの新たな【防衛計画の大綱」に反映される、かも知れない報告書だ。  http://www.asagumo-news.com/data/anpo_boueikon/boueikon_top.html
 
 これに対する各社の社説は以下の通り。
 
朝日社説: 新安保懇報告―「力には力を」でいいのか   http://www.asahi.com/paper/editorial20100828.html?ref=any#Edit2
読売社説: 防衛大綱報告書 装備を「量から質へ」転換せよ  http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100827-OYT1T01085.htm?from=any
毎日社説: 武器輸出三原則 見直しは「理念」曲げる   http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100828k0000m070118000c.html
日経社説: 現実の情勢変化に即した安保懇提言   http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE3E1E4E0E5E6E6E2E0EAE2EAE0E2E3E28297EAE2E2E3?n_cid=DSANY001
産経: 【主張】防衛力報告書 現実的な政策に転換せよ   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100828/plc1008280254002-n1.htm
 各紙の社説を、以下の項目に分類してまとめたのが添付の表である。
 
1. 「基礎的防衛力整備」構想の見直し
2. 集団的自衛権の解釈見直し
3.  憲法解釈の変更( 主として上記2.に伴う)
4.  武器輸出三原則の見直し
5.  将来的な非核三原則の見直し
 
イメージ 1

1. 存外まともな報告書「未来の安全保障・防衛力ビジョン」
 
 一読いただいて如何だろうか、当該報告書は。
 
 何しろ先頃まとめられた報告書であり、件の懇談会が「首相の諮問機関」として発足したのは左記の鳩山首相の時代。「米海兵隊が抑止力とは知らなかった」なんて辞任間際に公言して憚らない「無知無能無学無様無定見無方針無理解無関心無責任且つ優柔不断支離滅裂四分五裂表裏比興朝令暮改朝三暮四遅刻常習厚顔無恥の糸コンニャク男で詐欺野郎」の指示で発足した懇談会が安全保障と防衛についてまとめるとあっては、言ったいかなる仕儀と相成ったかと、私は正直おっかなびっくり同報告書を読み始めたのだが・・・
 
 「存外、まともじゃないか。」
 
 後述するが、各誌が社説で取り上げ、新聞によっては噛み付いている通り、従来の防衛政策からは一歩踏み出した内容にはなっている。が、集団的自衛権の解釈、武器輸出による技術向上と開発コスト低減、9.11以来の国家ならざる脅威(*1)に対する対応、正面の防衛力のみならず防衛基盤や海外支援を含めた安全保障など、「新味がなくて面白くない。」と評してしまえるほどに以前からある議論の集大成でしかない。
 「新味」があるとしたら、首相の諮問機関とは言え公的文書として、非核三原則の将来的見直しの可能性を残している事と、付言として憲法問題を「さらに検討を進めるべき課題」として特出ししている事か。但し、前者は以下記事にて以前議論した通りはなっから虚構の「非核三原則」であるし、後者は「憲法9条」なんてものを「最大の抑止力」と公言するような党( しかも、ついこの前まで政権与党であり、今も与党に協力する「政権外与党」)があるようでは防衛問題を論じる以上不可避の課題であろう。
 
非核三原則は虚構である http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32092292.html  
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32092309.html
非核三原則の舞台裏   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/21333645.html
 
 細部を見ていけば、あれこれ首を傾げたくなるところはある。例えば「防衛力の具体的構成」では、戦車も砲兵(特科)も艦艇も海自航空機も戦闘機も「削減」するくせに、海外任務への常時即応能力や、ミサイル防衛能力や、航空輸送能力は向上しろと言われる。それが効率化と言えば言えないことは無かろうが・・・相当虫の良い話だ。
 
 「言うだけだったら、何とでも言えるわなぁ。」(c)岡部ださく

<注釈>
(*1) 略
称するとNGT Non Govermental Threatだろううか。
 
2.各紙社説概観―朝日の寝言が目立つ
 
 上記報告を受けての各紙8月28日付社説をまとめたのが添付の一表。取り上げたのは朝日読売毎日の三大紙に日経をくわえた「大手新聞4社」に「ベンチマーカー」として産経新聞をあわせて5紙の比較となっている。
 案の定だが朝日と産経の社説は相当に異なっているので、朝日社説に類似の主張を赤字で、産経社説に類似の主張は青字であらわすことにした。カラーリングに私の恣意的選択が入っている事は、否定しない。先述の通り私は当該報告書に大筋同意しており、その点で産経の社説に同意しているのだから。
 
 朝日・産経以外の3紙では読売・日経の2紙が概ね当該方向所に賛同している。
 尤も読売が賛同しているのは、タイトルにもした通り「自衛隊の量から質への転換」であり、私が先述の通り同報告書に首をかしげた正にその点に同意しているのである。が、自衛隊発足以来、一体自衛隊に「量が十分」であったことなどあっただろうか。現状に於いてさえ充足率の低さは自衛隊3軍共通の悩みのタネだ。組織改変で「選択と集中」を行えば、現状の人数で充足率の向上は行えるだろうが、「質に変換」して引き換えに出来るほどの「量」が、言い換えれば数的余裕が、自衛隊にどれほどあるか非常に疑問であるから、私は読売の社説に同意できない。
 毎日と日経は共に武器輸出三原則の見直し=武器輸出の解禁を特に取り上げている。が、日経が「武器輸出三原則の基本的な考え方は維持し、殺傷兵器、攻撃型兵器の輸出や共同開発に歯止めを設ける措置」を条件に見直し賛成なのに対して、毎日はタイトルの通り「平和国家の理念に反する」として武器輸出三原則の放棄に反対している。日経が経済紙らしさを出した、と見る事もできるが、「攻撃兵器」はまだしも「殺傷兵器」まで「輸出や共同開発に歯止め」と言っているところを見ると、結局日経と毎日は同じ事を反対側から言っているだけなのかも知れない。今ある兵器は大概「殺傷兵器」と言えるのだから。
 
 朝日はと言うと、当該報告書を全面否定の構えだ。
 その理由はタイトルにもなっている通り、「力には力でよいのか」と言う脅威対抗論の否定であり、「専守防衛を掲げてきた我が国の理念からも逸脱」だと朝日は主張している。
 
 私には寝言しか思えない。
 専守防衛とは「専ら守る」であっても、少なくとも相手の攻撃力をある程度削ぐだけの防御力を持つと言う事であろう。相手の攻撃力が上がれば防御力も上げねばならないのが道理。「力には力」は専守防衛と矛盾しないのだから、理念だろうが輪廻だろうが、逸脱のしようがない。
 であると言うのに朝日の主張は下記の通り。
 
A1> 相手の脅威に応じた防衛力整備は、
A2> 防衛費の増大ばかりか軍備競争や摩擦の拡大にもつながる。
A3> 戦後一貫して、他国の脅威とならないとし、
A4> 専守防衛を掲げてきたわが国の理念からも逸脱しかねない。
 
 つまり朝日の社説は、「相手の脅威に応じ」たものであっても「防衛力整備」は、「軍備拡張や摩擦の拡大につながる。」から、防衛力整備するなと、公言しているのである。
 ああ、「丸腰の者は撃たれない。」と豪語し、「自衛隊の戦闘機は錆びているのが良い。」と公言する似非キリスト教徒にして隠れ主体思想主義者・Josナントカと、何と共通する部分が多いことか。(*1)
 そうは言っても朝日の方は終始一貫して寝言と言う点で筋は通っている。
 筋が通らないのは武器輸出に反対している毎日だ。
 
M1> 「脅威」を無視した防衛力構想はありえない。
M2> が、相手国の軍事力に見合って防衛力を整備する脅威対抗一辺倒の発想では、
M3>  互いの軍拡によって緊張を生む「安全保障のジレンマ」に陥る危険がある。
M4> 政府に十分な検討を求める。

 
 上記M1>で「脅威を無視するな」と言いつつ、上記M2> M3>では「脅威に対抗するな。」と言う。全く矛盾している。上記M4>で政府に下駄を預けてしまっているが、これでは社説とは言われまい。
 
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33507127.html へ続く

<注釈>
(*1) 
ひょっとして、当人か?!であれば、好都合だが。