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 もう何度も書いているから、聞くほうは耳にタコ、書くほうは指にタコ(読むほうは眼にタコ?)だろうが、外交と言うのは国益追求の手段であり、外交交渉とは弾丸を使わない戦争である。従ってその外交の成果の一つである条約と言うのは、戦争で言えば戦果であり、その戦果を得るためには凡そありとあらゆる手段がとられて当たり前。それこそ軍事的恫喝から経済制裁、個人的な脅迫まで、表沙汰になるか否かはあるにしても、実施されるもの、されたものと、考えるべきだろう。
 それは現在でも、曲がりなりにも「国家同士の交渉は平等」とされ「人種差別はいけないこと悪い事」とされる現在でも、変わるところは無い。
 況してや、弱肉強食当たり前、全地球は白人=西欧列強の支配下になるためにあるとまじめに考えられた、帝国主義華やかなりし時代の外交交渉は、当事国の国民の意に沿うか沿わぬかなど、歯牙にもかけられなかったのであり、原住民・現地人の「意に反して行われた植民地支配」は掃いて捨てるほどある。地域によってはその「原住民・現地人の意に反している植民地支配」は未だ継続中だ。
 
 であるからして、菅首相がこの8月に日韓併合100年に寄せて出した、いわゆる菅談話に「政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました」とあったのに対し、その前段に私が鼻白んだのも、御理解いただけよう。(*1)原住民・現地人の「意に反した」植民地も、条約も、幾らもあるのだから。
 
 で、記事となっているのはその菅談話を受けて、「日韓併合条約そのものが、韓国人の意に反しているのだから無効である。」と言う韓国の(一部の?)主張そのままを主張する(一応)日本の知識人達の宣言と、これに対する反論。「意に反しているから無効」論に私が鼻白むのは、上記と同様であるが、潮匡人氏の記事はさらに踏み込む。
 
 即ち・・・
1> ならば、黒船による文字通りの砲艦外交で結ばれた日米和親条約も、
2> 不平等な日米修好通商条約も、当初より無効であろう。
3> きっと、ポツダム宣言の受諾も無効となろう。
4> 激しい抵抗を軍隊の力で押しつぶして、実現された結果なのだ。
5> 当然、日本国憲法も当初より無効である。
6> 占領下の改憲はハーグ条約違反であり、制定手続き、形式にも重大な欠陥がある。
7> 前文も9条も偽りである。
8> 軍事的背景の下、意に反して行われた占領支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられた。
 こいつは正直、「一本取られた」と言うところである。上記1>~2>ぐらいは私でも思い及んだところであるが、後段の5>~8>は灯台下暗しで思い至らなんだ。件の菅談話に対する「韓国併合」100年 日韓知識人共同声明を出した自称「知識人」達にとっては正にCritical Hitの筈だ。
 無論、いつもどおりのダンマリ黙殺を決め込むのだろうが、上記8>には主観が入る余地はあっても(*2)上記5>~6>には主観も入りようがない。
 
 実に見事な反論である。
 
 件の自称「知識人」達が、決して再反論しないであろう事が、非常に残念なほどに。
 
 如何に、大江健三郎(作家)、小田川興(元朝日新聞編集委員)、姜尚中(東大教授)、小森陽一(東大教授)、坂本義和(東大名誉教授)、佐高信(「週刊金曜日」発行人)、沢地久枝(ノンフィクション作家)、高橋哲哉(東大教授)、三谷太一郎(東大名誉教授・日韓歴史共同研究委員会日本側座長)、山室英男(元NHK解説委員長)、和田春樹(東大名誉教授)ら。

<注釈>
(*1) 
少なくとも、「私が鼻白んだ」事については。因みに後段について私は、「憤怒と絶望に駆られた。」と言うのが正しい。
 
(*2) 何しろ世の中には、何をトチ狂ったのか、「憲法9条は聖書の福音」と主張してしまう人まであるのだ。「憲法9条は最大の抑止力」なんて主張する党は、ついこの間まで政権与党だった。桑原桑原。