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在日米軍再編:普天間移設 「8月末結論」見送る 政府、工法など複数案提示へ  http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100715ddm002010070000c.html
 政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先となる代替施設の位置や工法について、日米共同声明に明記した期限の8月末時点では専門家による見解にとどめ、政府方針とはしない方向で調整に入った。政府高官は14日夜、「実務者協議とその後の外務・防衛担当閣僚の協議は別次元の話だ」と述べた。複数案提示などによる事実上の先送りで沖縄県側の反応を探り、理解を得たい考え。日米両政府は参院選で中断していた外務・防衛両省の課長級による実務者協議を15日に米国で再開する。
 自民党政権下での日米合意は辺野古沿岸部を埋め立て、2本の滑走路をV字形に配置するとしていた。鳩山前政権ではこの案を微修正し、海底のヘドロを再利用する環境配慮型の埋め立てにする案が有力視されていた。これに加え、防衛省内では滑走路を1本にし、より沖合に移動する案が検討されている。
 両政府は、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を9月以降に開き、移設計画を決定する予定。日米共同声明では「代替施設の位置や工法に関する検討作業を8月末までに完了させる」と明記していた。しかし、参院選大敗の影響もあり、外務省内でも「8月末は専門家の見解をまとめるだけ」(幹部)との見方が大勢だ。【西田進一郎、吉永康朗】
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 報じられているのは、鳩山前政権の致命傷となったがその最後に「現行日米合意=辺野古洋上案」を追認したが故に一応鳴りを潜めた普天間基地移設問題のその後。
 
 前々回 「命を賭けて」元の木阿弥―2014年の普天間基地の辺野古移設完了すら危うし―普天間基地移設問題の経緯(26) までの記事は以下URLにある。
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32456004.html
 
鳩山首相の負の遺産―普天間基地移設問題の経緯(27)  
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32800905.html
 上記報道によれば、普天間基地移設先は辺野古洋上とは決まったが・・・・
1> 日米共同声明に明記した期限の8月末時点では専門家による見解にとどめ、
2> 政府方針とはしない方向で調整に入った。

と報じられている。
 一方で、同じ報道にある通り、
3> 日米共同声明では
4> 「代替施設の位置や工法に関する検討作業を8月末までに完了させる」
5> と明記していた。

であり、さらにその明記は、「如何なる事があろうとも」と注記が付いていた筈だ。
 態々こんな注記が付いたのは、「政権交代」当初から「普天間基地移設問題の早期解決」を唱えていた鳩山前首相(& 菅副首相)前政権が、政権発足以来半年以上も迷走暴走を繰り返したため、そんな迷走暴走を防ごうとしたと容易に推定できるが、その推定の当否は兎も角、「如何なる事があろうとも8月末までに完了させる」筈であった位置や後方についての検討作業が、上記1>~2>の通り政府方針ですらない専門家の見解に留める方向なのだそうだ。
 
 政府方針ですらない専門家の意見が出たところで、「検討作業を完了した」とは到底言われまい。
 
 況や報じられるとおり「工法など複数案提示」した日には、全く何も決定されていないに近い。少なくとも、鳩山前首相がその「首相の地位」と引き換えにした先の日米共同声明からの進捗が殆ど無い事になる。
 さらに言えば、そんな「政府方針ですらない専門家の見解」は、日本側の提案ですらなく、日米の合意案ですらない。従って既存の日米合意案=辺野古洋上V字滑走路埋め立て案からの明らかな後退であり、退化である。
 
 この日米共同声明から、8月末までに起きた事と言えば、高々民主党政権内の首相の交代と、予定通りの参院選挙だけである
 
 戦争が始まったとか、通貨危機に見舞われたとか、地震や台風に襲われた、とかではない。予定されていた任期満了に伴う選挙が、予定通りに行われただけだ。
 その選挙=先の参院選に於ける民主党の敗北は、確かに「予定外」かも知れないが、当然「ありうる」と想定できる範囲だ。
 況や先の「新たな」日米共同声明が出たのは鳩山政権の末期。内閣支持率が「危険水域」まで落ち込んでいた頃。その後の鳩山―小沢W辞任( でも議員は辞めてない)と菅政権の発足で支持率は「V字回復」したが、参院選での民主党敗北を想定外とは絶対に出来ない時期だ。
 
 その日米共同声明に「如何なる事があろうとも8月末までに検討完了」と明記された以上、これは8月末までかけて日米合意はもとより、沖縄県民の一定の理解まで獲得する物と私は理解した。それが困難であることは容易に想像できたが、昨年の衆院選からようやくの日米共同声明まで1年近くを引っかきまわした後で、普天間基地移設先の滑走路の位置も工法も決定するためには、「沖縄県民の一定の理解」ぐらいは必要だろうと、想像された。
 
 無論私の理解は私の私見でしかない。民主党政権、なかんずく当時の鳩山政権にそんな芸当が出来るとは全く思えなかったし、それが菅政権に変わろうとも事態はさして進展したとは思えなかった。それに続く「首相交代で支持率が高い内を狙った( としか私には思えない)」参院選では、先の衆院選のような「少なくとも県外」なんて空手形を( さすがに)発行しなかったし(*1)、「ケンガイダァコクガイダァ」と呪文を唱えるだけの社民党が沖縄で落選するという沖縄県民の良識をうかがわせる参院選挙結果であったから、先の参院選挙結果が「普天間基地移設先の位置及び工法8月末決定」を一方的に妨げる物とは、到底言いえない。
 であると言うのに・・・・
6> 参院選大敗の影響もあり、
7> 外務省内でも「8月末は専門家の見解をまとめるだけ」(幹部)との見方が大勢だ。

と報じられている。
 
 これは一体どういうことか?
 一体何が原因で、8月末までに「位置と工法の検討完了」する筈の日米共同声明から僅か2ヶ月ほどで後退してしまったのか?
 
 私の考えるところでは、以下のいずれかである。
 
 Case A : 「海底のヘドロを再利用する環境配慮型の埋め立てにする案」「滑走路を1本にし、より沖合に移動する案」等の「現行日米合意案=辺野古洋上V字滑走路案」以外の案の検討に時間がかかっている。もしくはこれらの案が費用的・工期的にV字滑走路案より大幅に劣っている。だから「政府方針として決定」できない。
 
 Case B : 「日米共同声明は法律ではないので守る必要は無い。」と、いつ宣言しようか考えている。即ち、「日米共同声明なんて約束」は、最初から守る気が無い。
 
 Case C : 参院選で「予定通りの勝利」を得られなかった民主党は、へそを曲げてまともに機能しなくなり、普天間基地移設問題を放棄した。
 
 率直に言って、Case Aと言うのは時間を浪費しているのである。
 その時間浪費の動機となっているのは、「現行日米合意ではない普天間基地移設先案としたい。」と言う民主党の面子である。
 つまり民主党の「自公前政権とは違う」と言いたいだけの為に、「環境配慮型」だの「滑走路1本化」だのを検討しているのである。私がそう断言してしまうのは、「環境配慮」だの「V字の2本ではなく1本の滑走路」だのが沖縄県民に対するアピールポイントになるとは全く思えないからであり、同時に「海底のヘドロを利用する環境配慮型」や「沖合いに出さないといけない滑走路一本化案」が費用的にも工期的にも現行日米合意案=辺野古洋上V字滑走路案よりも劣るであろう事がほぼ明らかだからだ。
 即ち、管政権が検討していると報道されている普天間基地移設案は、鳩山前首相の頃と変わらず、願望のみ、対策なし、労多くして功の少ないものである。「結論が出るまで時間がかかるから8月末に決心できない。」のならば、結論が出るまで時間をかけるだけ無駄であるし、8月末まで検討しても費用的・工期的にV字滑走路案に適わないのならば、決心を引き伸ばしてもその分遅れとなって普天間基地の返還がさらに遅れるだけである。
 無論、菅首相が普天間基地を米軍の継続利用として、反米運動の象徴とし続ける心算であるならば、Case Aで「8月末決着引き延ばし」と言うのは一つの手だろう。だがそれは、反米運動や菅首相には利するだろうが、沖縄県民にとっても、日本にとっても不幸である。
 
 Case Bは日米安全保障上も外交的信頼の点でも大いに問題であるが、一方で民主党の「政権交代」以来の実績はこの可能性を相当強く示唆している。
民主党気質―「法律でなければは守らない。公約は法律ではない。」    http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33060543.html
続・民主党気質「法律でないことは守らない。」-千葉法相、落選しても続投  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33118217.html
 しかしながら、このCaseが真実であるならば、「8月末決着」を延期するのは既定の方針であって、先の参院選で大勝しようが大敗しようが全く関係なかったことになる。つまり上記報道6>でいう「参院選大敗の影響」なぞ無い筈であり、少なくとも上記報道の記者はこのCase Bを採用していない事になる。
 だからと言って、Case Bが真実である可能性が無くなった訳ではないが。
 
 Case Cは、最もあってはならないCaseである。それは日本政府としての無責任であり、日本の主権からもも安全保障からも、大問題であるばかりではない。民主党が「一党独裁唯我独尊」の中国張りの体勢でないとまともに機能しない事を示している。即ちそれは、民主党は「民主」と名乗りながらも民主主義とは相容れない事を示している。そんな党が日本の政権与党に居座っていると言う事実は、私を慄然とさせざるを得ない。
 まあ、朝鮮民主主義人民共和国なんて卑近な例もあるから、「民主」と名乗っていても民主的とは限らないのではあるが、そんな党が先の衆院選挙で衆院の多数議席を占めていると言う事実は、「衆愚政治は民主主義の宿敵である。」と、あらためて想起させる。
 
 以上、何れのCaseであろうとも・・・ろくな事じゃないのが、報じられている普天間基地移設先・工法8月決着延期である。
 
 それ即ち、菅政権は普天間基地移設問題と言う試金石の試練に、耐えられなかったということである。
 
 如何にするや? 国民。

<注釈>
(*1) 
他の空手形なら、相当あるようだが。
 一方で「マニュフェストは生物」なんて言い訳も用意してあったから、最早「空手形なんか怖くない。」のだろう。民主党にとっては。