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米原油流出食い止めに「核爆発利用を」、米ロ専門家が主張   http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100706-00000508-reu-int
7月6日13時2分配信 ロイター

 7月2日、米メキシコ湾での原油流出事故について、米ロ専門家からは「核爆発を利用した対策の必要性を主張する声が出ている。写真は4日の現場海域(2010年 ロイター/Lyle W. Ratliff)
 [モスクワ/ワシントン 2日 ロイター] 米メキシコ湾での原油流出事故は発生から約2カ月半が経った現在も解決に至っていないが、ロシア元原子力相のビクトル・ミハイロフ氏は、流出を早期に食い止めるために、核爆発を利用すべきとの考えを示している。
 原子力省の戦略安定研究所所長を務めるミハイロフ氏は、核分野で長年の経験を持ち、ガスの流出を食い止めるためなどに核爆発を用いるという旧ソ連時代に実際に行われていたプログラムの終了に携わった人物。
 事故解決に核爆発を用いるというアイデアはこの数週間、ネット上で活発に意見が交わされているほか、新聞の論説でも取り上げられている。この考えについて、米政府は繰り返し否定しており、英BP幹部も検討対象でないと答えている。
 ミハイロフ氏によると、流出食い止めに必要とされるのは約10キロトン級の核爆発。同氏は、通常なら核利用には反対するとしながらも、メキシコ湾での水中爆発は被害が少なく、コストも1000万ドル(約8億8000万円)以下で済むと指摘。BPがこれまでに拠出した原油回収や補償の費用23億5000万ドルに比べても、「金額の面ではやる価値はある」と述べる。
 米国でも、1960─70年代に核エネルギーの平和利用を唱えたミロ・ノーダイク氏やブッシュ政権でエネルギー政策の顧問を務めたマシュー・シモンズ氏が、核爆発の利用を選択肢の一つとするなど、賛同の声が出ている。
 一方、ビル・クリントン元大統領は先月29日、訪問先の南アフリカで「軍が海底油田を爆破して、岩やがれきで流出をふさぎ込まなければ、BPの技術専門家に頼り続けることになるだろう」とコメント。
 クリントン氏がその意見を参考にするコロンビア大学の核政策研究者であるクリストファー・ブラウンフィールド氏は、元米原子力潜水艦の乗組員で、核以外の爆発を利用すべきだと主張。同氏によると、通常爆発の利用の場合、流出を完全に食い止められないかもしれないが、大きく減少はさせられるという

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物量作戦「ロシア式蒸気ローラー」-米原油流出食い止めに核爆発利用案
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 「ロシア式蒸気ローラーRussian Steam Roller」戦術と言う言葉がある。「蒸気ローラー」なんて例えからわかる通り、第1次大戦ごろに使われ始めた言葉らしい。昔からロシア軍の特徴の一つは莫大な量であり、その量を活かしての多少の犠牲をものともせずに突き進む、正面平押しの物量作戦の事を指す。
 今でこそソビエト連邦は解体してその一部がロシアとして残るだけになってしまったり、より凄まじい量を誇る中国軍・人民解放軍にお株を奪われてしまった格好であるが、少なくとも冷戦時代に於いては、ソ連軍及びワルシャワ条約機構軍による「蒸気ローラー」戦術は、「恐怖の的」とは言わぬまでも「真剣に対処すべき脅威」であり、如何に多大な損害を強いて「蒸気ローラー」戦術を失敗させるかがNATO軍(*1)の知恵の巡らし処だった。
 
 冷戦終結以降早20年近くになるが(*2)、「ロシア式蒸気ローラー」的発想は今でも健在であるらしい。報じられているのは米国メキシコ湾での原油流出事故の対策。ロシア元原子力相のビクトル・ミハイロフ氏の曰く、
 
> 流出を早期に食い止めるために、核爆発を利用すべきとの考えを示している。
> 流出食い止めに必要とされるのは約10キロトン級の核爆発。
> 同氏は、通常なら核利用には反対するとしながらも、
> メキシコ湾での水中爆発は被害が少なく、コストも1000万ドル(約8億8000万円)以下で済むと指摘。
> BPがこれまでに拠出した原油回収や補償の費用23億5000万ドルに比べても、
> 「金額の面ではやる価値はある」と述べる。
そうである。
 なにしろ、このミハイロフ氏は、
> 核分野で長年の経験を持ち、
> ガスの流出を食い止めるためなどに核爆発を用いるという
> 旧ソ連時代に実際に行われていたプログラムの終了に携わった人物。

だそうだから、この「核爆発によるメキシコ湾原油流出阻止案」は、昨日今日思いついた奇策というよりは、長年の研究の成果であるらしい。
 「ガスの流出を食い止めるためなどに核爆発を用いる」プログラムと言うのも随分「ロシア式蒸気ローラー」的であるが、「旧ソ連時代」即ち冷戦中であるから「実際に行われていた」と言うのも頷ける。何しろ「敵弾道ミサイルを無能力化する核ミサイル」であるABM( Anthi-Ballistic Missile)が実戦配備され、ABMの核弾頭迎撃によって予想される「人口の10%に及ぶ死傷者」は許容されてしまった時代なのであるから
 
 とは言え、今は一応冷戦時代ではないし、今回対象になっているメキシコ湾はロシア・ソ連ではなく米国だ。10キロトンと言うと広島・長崎に投下された原爆の凡そ半分であり、核弾頭としては小さな方であるが、「金額の面ではやる価値はある」とは流石のアメリカ人やイギリス人でも割り切れないらしく、
> この考えについて、米政府は繰り返し否定しており、
> 英BP幹部も検討対象でないと答えている。

 
となっている。地上の核実験さえ禁じられていると言うのに、安いと言うだけで水中核爆発はさせられないと言う事だろう。レンホウ式仕分け理論からすると、「どうして核爆発を利用しないんですか?」となりかねないが。
 一方で蒸気ローラー的発想はロシアの専売特許でもないらしく、報じられるとおりアメリカの専門家からも・・・
> コロンビア大学の核政策研究者であるクリストファー・ブラウンフィールド氏は、
> 元米原子力潜水艦の乗組員で、
> 核以外の爆発を利用すべきだと主張。
> 同氏によると、通常爆発の利用の場合、
> 流出を完全に食い止められないかもしれないが、
> 大きく減少はさせられるという。

 
 ビル・クリントン元アメリカ合衆国大統領に至っては、
> 「軍が海底油田を爆破して、岩やがれきで流出をふさぎ込まなければ、
> BPの技術専門家に頼り続けることになるだろう」

と述べているから、これはあからさまな「BPの技術専門家」に対する不信任だろう。 
 
 BP社の技術者と言う物は、そんなに信用ならないものなんだろうか。核弾頭や通常弾頭による爆発で原油流出路を塞いでしまいたくなるほどに。
 そりゃ今回の事故を起こしたのはBP社の施設だし、BP社の技術者はその事故に相応の責任を負うのだろうけれど、原油流出を完全に止められるとしたら、彼らなり彼らの同業者なりの技術者しかいないだろう。
 
 核弾頭なり通常弾頭なりの爆発で原油流出量を大きく減少はさせられても、完全には食い止められなくなったとしたら・・・もう打つ手が無いのではないか?原油採掘施設は配管もバルブも皆海底の瓦礫の下になってしまっては、その瓦礫の隙間から漏れてくる原油が完全に止まるまで、爆発を繰り返すしかなさそうだ。10キロトン核弾頭なら、それが1発で済むと言うことなのだろうか。
 
 ロシア式にせよ、アメリカ式にせよ、「爆破による原油流出阻止ないし低減」と言うのは、「蒸気ローラー」的で荒っぽいばかりでなく、大雑把なように、私には思えてならない。
 
 これが国民性の差、と言うことだろうか。
 だとすると、アメリカ人やロシア人よりもイギリス人の方が、日本人には近いと言う事になるな。(*3)

<注釈>
(*1) 
立場的には我が自衛隊3軍も似たような状況だな。渡洋侵攻してくる範囲だから、対処すべき兵力を相応に減らせるが。
 
(*2) 尤も、本当に冷戦が終結したのは、ワルシャワ条約機構が解体し、その構成国がEUヨーロッパ連合に参加しちまっている、「欧州正面」だけなのであるが。
 極東の冷戦が終結するには、中華人民共和国の解体が必要だろう。
 
(*3) なんだか余り嬉しくないのは、岡部ださく氏の「世界の駄っ作機」を読んでいるからだろうか。