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2.菅首相の消費税増税論小史
 
 では、菅首相の消費税増税論とは、どのようなものか、報道記事から時系列を追ってみよう。
 
(1) 平成22年06月17日(木) 菅首相は記者会見で消費税について次のように述べた。
1> 「年度内にあるべき税率、逆進性対策を含む改革案を取りまとめる。
2> (税率は)自民党が提案する10%を一つの参考とする」
>  税率の引き上げの時期については
3> 「大きな税制改革を行う場合、実施する前に国民の信を問うことは本来あるべき道だと思っている」と述べ、
>  基本的に次期総選挙後とする考えを示した。

 あらためて見ると中々巧妙な言い回しである。「年度内に消費税率の改革案をまとめる。」「自民党提案の10%を参考とする。」であって、10%と断言もしていなければ実施は次期総選挙後と言うのも「自分の首相任期中じゃない。」と言う姿勢が仄見える。逆に言えば、それだけ入念に準備した上での発言であって、「口を滑らせて」ではないことを示唆している。
【政権公約】菅直人首相の記者会見要旨  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100617/plc1006172135017-n1.htm
「自民党提案の消費税10%は1つの参考」菅首相  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100617/plc1006171815011-n1.htm
 
(2) 平成22年06月18日(金) 早速の翌日だが、民主党の高嶋参院幹事長は、この日記者団に対し、菅首相の「消費税10%議論」を勇み足だと批難した。
> 「参院選を戦っている人たちからすれば、
> 消費税率が議論になることは想定していない。
> 一般的にいえば、選挙に悪影響を及ぼすと考えざるを得ない」
とも語ったそうだから、「参院選に負けちまうじゃねぇか。余計な事言うんじゃねぇ!」と言う本音が透けて見えるのは、私だけだろうか。
 とは言え、かつて鳩山前首相が自信満々に「4年間は消費税なんか上げなくて大丈夫」と言っていたその自信が正しいならば、高嶋幹事長の言う通り「菅首相は勇み足」かもしれないが・・・「鳩山前首相の自信」なんて、信じる人間が、何人居る?
消費税率の議論 高嶋氏「勇み足だ」と菅首相を批判  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100618/plc1006180034000-n1.htm
 
(3) 平成22年06月25日(金) 消費税率アップに対し菅首相以上に敏感なのは、野田財務相だろう。この日野田財務省は駐日米大使と会談し、次のように述べた。
> 参院選の争点となっている消費税率引き上げについて、
> 「国民もだんだん理解し始めている」と述べ、
> 今後も引き上げの必要性を訴えていく考えを示した。

 この報道に対しては、「国民より先に駐日米大使に説明していないか?」と記事にした通りである。  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32998786.html
 が、何にせよ「消費税率アップ」が一つの話題となり、それが「参院選の争点」とまで報じられていることが判る。
消費税率引き上げ「国民も理解」 野田財務相、米駐日大使に説明  http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100625/fnc1006251315007-n1.htm
 
(4) 平成22年06月28日(月) ところが、一度は「反小沢」を売り物に「V字回復」した(*1)支持率が、「消費税率アップ」を機に(*2)落ち始めたとなると、黙っていられない人がある。
 「我が敵」小沢一郎である。
 一寸長くなるが、彼の発言は( 突っ込みつきで)拾っておこう。
1> 「選挙で政権を取った(鳩山由紀夫前)内閣で『4年間は上げない』と言った。
2> 菅総理がどういうお考えで消費税ちゅうことを話しているか分からないが、
3> 私個人としては、国民の皆さんと約束したことは、どんなことがあっても守るべきだと思っている(*3)」
4>「政権を取ったら、カネがないからできませんなんて、
5> こんなばかなことがある(*4)か。
6> 約束できないなら言うな(*5)。
7> 必ず私が微力を尽くして、約束通り実現できるようにしたい(*6)」
8> 「高速道路はすべて無料にするって言って選挙をやったのだから、
9> 約束は守るべきだ。(*7)
10> 消費税も、国民の皆さんとの約束はなんとしても守らないと社会は成り立たない。結果としてウソをついたことになる(*8)」 

小沢氏、首相・執行部を猛烈批判「対決宣言」 参院選後の主導権ねらう? (1/2ページ)   http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100628/stt1006282255010-n1.htm
 
(5) 平成22年06月28日(月) 「反小沢」だの「脱小沢」だの言い条、現・民主党の小沢依存は根が深い。「V字回復」したはずの支持率が落ち始めて、選挙が近づくとなるとなおさらだ。上記(4)のように大批判された民主党執行部、なかんずく「反小沢」を標榜していた筈の菅首相は発言の修正に乗り出した。
1> 「私は(各党に消費税の議論を)呼びかけると申し上げたが、
2> 皆さんが書いている見出しだけ読むと書いていない。
3> もうちょっと正確に言ってほしい」
 ああ、昨日言っていた事を今日は忘れているよりは、大分マシだ。が勿論、十分と言うには程遠い。
 マシではあるが、ズルイし、信用できない。
菅首相こす辛い「言いわけ」 「消費税10%」一転「公約じゃない」  http://www.j-cast.com/2010/06/28069760.html
 
(6) 平成22年06月29日(火) 報じられているのは、菅首相の消費税率上げ議論の舞台裏。何でも、年金制度の改革と税制改革及び財政再建をまとめて議論するための口火とするつもりだったようなのだが、思わぬ批判(*9)にあって急いでその口火を消火しなければならなくなり、折角議論を深めようとしていた年金改革から財政再建まで頓挫状態であるらしい。
 策士、策に溺れると言う奴だな。
 策があるだけマシだが、溺れているようじゃ、目的達成には程遠いぞ。
消費税とセットのはずが…狂った首相の年金シナリオ   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100629/plc1006292042016-n1.htm
 
(7) 平成22年06月30日(水) 青森市内で街頭演説した菅首相は、次のようにマニュフェストに消費税10%への増税を明記した自民党を賞賛した。
> 自民党が参院選公約(マニフェスト)に消費税率を10%に引き上げることを盛り込んだことについて
1>「私はその勇気はたたえたい」と評価した。
 また菅首相は、次のようにも述べたという。
2> 「私が消費税について言うと、
3> 選挙が終わってからにした方がいいという人もいる。
4> しかし、正面から、選挙が終わったら他党の人たちとも議論をしようと言っている」と述べ、
> 超党派の協議に意欲を示した。
 さて、先ず「超党派の協議」と言うのが曲者だ。私としては先の普天間基地移設先問題が想起されてならない。即ち「民主党案をまとめられない/纏まらないから、当該と先に議論する。」と言っているのではないかと疑う。
 次に、「消費税について言う」事と「消費税について議論しようと言う」事の違いは何かと考えると、「自説を前面に出すか否か」であろう。「自民党提案の10%を一つの参考」と言うのみで、ならば菅首相は消費税を何%にしようと考えているかを「言おうとしない」ないし「断言しない」と言うこと。
 「他党の意見を尊重する」といえば聴こえは良かろうが、消費税増税の責任あわよくば転嫁してしまおうという姿勢に見えるのは、私だけだろうか。
菅首相が自民マニフェスト評価 消費税率10%「勇気はたたえたい」  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100630/plc1006301302007-n1.htm

<注釈>
(*1) 「させるなよ!」と突っ込みいれたくなるが。
(*2) 「そういう問題かよ!」と、これまた突っ込みたくなる。
(*3) ガソリン税廃止は、約束じゃなかったと言う事だな。じゃ、何が約束なんだ。マニュフェストすら当てにならないのは明らかではあるが。
(*4) 数多あるじゃないか。ガソリン税廃止を撤回させたのは、誰だ??
(*5) これまた言いまくりだろう。「少なくとも県外」なんてその典型だ。
(*6) ここは腰砕け。「必ず○○したい。」なんて日本語があるかよ。少なくとも、はなはだしく説得力を欠く日本語だ。
(*7) 逆に言えば、表だって外国人参政権も夫婦別姓も言っていなかったのだから、そんなものは実行すべきではない・・・筈だがね。
(*8) すでに嘘つきまくりだろう。
 此処は、「好い加減にしなさい!」と突っ込んで、オチにすべきだろうな。
(*9) と、恐らくは、「我が敵」小沢一郎の反発だろう。(確信)
 
3.菅首相の消費税率上げ論は、鳩山前首相に於ける普天間基地問題の二の舞となるか?
 
 さて、前項の記事は私の「普天間基地移設問題の経緯」シリーズのフォーマットを使っている。
 その意図は、本項のタイトルを見ていただければ明らかだろう。
 確かに、昨日言っていた事と今日言っている事が180度違って言い訳も弁明も無かった鳩山前首相とは異なり、菅首相の消費税増税論はひっくり返っては居ない。最初の発言からして、巧妙にぼやかされており、発言の文言そのものは、「ブレてはいない。」と強弁できる範囲に留まっている。
 だが、公約、或いは選挙の争点と言う意味ではどうだろうか。
 公約と言う点では、菅首相によると現時点では「今度の参院選後に消費税率について超党派の議論を始める。」と言うのが公約なんだそうだ。「議論を始める」と言う公約も珍しいが、「超党派の議論」となれば、恐らく前代未聞だろう。
 大体、消費税率の変更は、国会で審議=議論されるのは当たり前だ。国会は民主党の占有物ではない(筈)だから、その審議は「超党派の議論」になるのが必然だ。
 
 であるというのに、「超党派で議論する」と言う「公約」を打ち出したと言う事は・・・公約にしなければ、議論する気さえなかったと言う事ではなかろうか。
 
 想起されたい。先の衆院選で大勝した結果、民主党は衆院を牛耳っており、もし次の参院選挙でただの1議席も取れない大敗を喫したとしても、政権与党であることに変わりは無いのである。その民主党が「超党派で議論しない=審議しない」と決意すれば、「参院で否決されても衆院で再可決」と言う手を使って、消費税率を国会審議する事なく変更できるのである。
 「消費税率は超党派で議論する=審議すると公約されたから安心だ。」と思うのは早計だ。
 「超党派で議論する」と民主党が公約しているのは、私の知る限り消費税率だけだ。
 これ即ち、消費税率以外のあらゆる事を、民主党は国会審議しない心算かも知れないのである。
 
 民主党は、民主主義の敵かも知れないのである。