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 報じられているのは、最近出された本の中で明らかになった、菅首相が副総理・国家戦略担当相だった頃の発言。
 「沖縄の自己決定権-地球の涙に虹がかかるまで」(未来社)と言う最近書かれた本の中で、沖縄は普天間基地移設問題について、菅首相(当時副首相・国家戦略担当相(*1))は以下のように発言したと言う。( 例によって、菅首相の発言は適当なところで区切って、番号を振った。)
 
> 喜納氏が「沖縄問題をよろしく」と言ったところ、首相は
1> 「沖縄問題は重くてどうしようもない。
2> 基地問題はどうにもならない。
3> もうタッチしたくない」と漏らし、
4> 最後は「もう沖縄は独立した方がいい」と言い放ったという。
> 喜納氏は著書の中で
> 「半分ジョークにしろ、そういうことを副総理・財務相であり、将来首相になる可能性の彼が言ったということ、これは大きいよ。
> 非公式だったとしても重い」と指摘している。
 
 上記の通り、この著書では菅氏を「将来首相になる可能性」としているが、今や菅氏は現実として日本国首相にして押しも押されもしない自衛隊三軍の最高指揮官である(*2)。その発言は上記1>~4>に番号を振った通りだと言う。
 
 如何であろうか。
 
 先ずもって、上記1>~3>は極めて無責任であろう。この発言がなされたのは、菅氏が副首相・国家戦略担当相であった頃だから、昨年夏の衆院選挙結果で政権交代した後の事。即ち先の衆院選挙で「普天間基地移設先は少なくとも県外」と民主党公約ならぬ「鳩山民主党党首(当時)の個人的約束(*3)」を散々吹聴して衆院選に大勝した後の事である。「少なくとも県外」が「鳩山党首の個人的約束」だったとしても、それは衆院選大勝の大順風の一助であり、民主党としてはそれを大いに享受したのであり、当時の菅氏の立場であってもその「個人的約束をした鳩山(今や)首相」を補佐する副首相の立場にあったのに、上記1>~3>の発言はその「鳩山民主党党首の個人的約束」を、鳩山(今や)首相を説得するでも、沖縄県民に謝罪するでもなく、全面的に放棄ないし放置してしまおうと言うのである。
 
 止めは勿論、上記4>「沖縄独立」である。
 
 先ず第一にこれは主権の放棄である。
 それは我が領土領海領空の減少を意味し、正真正銘掛け値なしの国益の損失であり、売国行為である。それだけでも政権与党の閣僚、なかんずく首相を補佐する立場の副首相としてあるまじき事である。
 況や、今やその人が首相であり、自衛隊三軍の最高指揮官であるなどと言う事態は、「寒心に堪えない」どころでは済まない。
 
 だが、ことはそれだけではすまない。上記の状況はその主権を放棄する場所が沖縄でなくても同じである。が、「沖縄に対する日本の主権の放棄」が意味するところは、単に「日本の領土減少」だけではすまない。
 
 菅氏は昔の沖縄、琉球王国の歴史を全く後存じないようなのだが、かつて琉球王国は、大陸の支邦と日本の島津家薩摩藩の両方に朝貢していた。いわば二重支配を甘受していた形だ。かかる統治形態をとったのは、琉球王国の軍事的・政治的弱さもさることながら、大陸と日本の間に位置する立場の脆弱さを如実に表している。そして、沖縄が大陸と日本の間にあるという位置関係は、琉球王国の頃と全く変化はない。「距離」の意味するところは、その後の交通期間=船舶や航空機の発達と通信機器の発達で異なってきてはいるだろうが。
 日本が沖縄の独立を認めると言う事は、沖縄の主権を放棄するのと同義であり、それは今も琉球王国の頃と同様日本と大陸の間と言う脆弱な立場にある沖縄の立場から、日本の主権と言う後ろ盾と、日米安保と言う後ろ盾を取り除く事を意味する。
 
 それ即ち、一種の力の空白を生じる事になる。
 
 報じられているところからすると、上記菅氏の「爆弾発言」を伝えた本の著者・喜納氏は、上記4>「沖縄独立」を捕らえて、これを好意的、歓迎すべき事態と受け取っているようであるが、「沖縄が日本から独立すれば、日米安保条約に基づく駐留米軍基地は無くなるまたは減少する。」と考えているとしたら、それは大変甘い考えと言うべきだろう。
 
 最も可能性の高い事態にして、日本としては日本の沖縄統治継続の次に歓迎すべき事態は、アメリカによる沖縄再占領である。第51番目の州にするか、今ある州の一部にするかは知らないが、この場合今の「沖縄駐留米軍」は目出度く「国軍」となり、大手を振って駐留ならぬ駐屯できる。普天間基地を「返還」する義理さえなくなる。それは日米政府の合意であって、アメリカ政府と「沖縄県民」の合意ではないのだから。無論、菅首相( 発言当時副首相)が目論んだ通り、「沖縄の負担」を日本国が分担する言われも全くなくなるから、その点では「沖縄独立」は成功だ。日本の、なかんずく民主党にとって、だが。
 しかしながら、普天間基地が「返還」されないだけでも、沖縄県民転じて今やOkinawa州民ないし住民にとっては不幸な事態であろう。
 
 次に可能性が高いのは、大陸は支邦による沖縄占領である。こちらは即時には実行されないかも知れない。台湾併合の後になるかも知れない。
 この場合、確かに沖縄の駐留米軍負担は減るだろう。だが、それは恐らく一時的だ。やがて大陸は支邦が占領したならば、沖縄の人民解放軍負担は、現在の米軍負担の比ではないだろう。
 沖縄の負担もさることながら、沖縄以外の日本としては、大陸との間に人民解放軍空母「沖縄」が出来てしまうのだから大問題だ。
 
 沖縄が、新琉球王国として「大陸と日本とアメリカの正三角形外交」か何かを展開して中立を守り抜く・・・なんてのは、日本国憲法前文世界でのみ可能である。つまりは、非現実的だ。
 以前にも書いたことだが「中立」と言うのは「誰とでもお友達になれる」状態ではなく、むしろ、「中立とは、誰からも敵と見なされうる状態」である。更には、沖縄と言う地理的条件が、その中立を守り抜くのに相当な重武装を要求する。それでも中立を維持すると言うならば、恐らくはイスラエル級の「女性にも兵役がある徴兵制」を執行する必要があるだろうし、そもそも、そんな基地負担ならぬ経済負担(*4)に新・琉球王国が堪えうるか、甚だ疑問だ。少なくとも、昔の琉球王国は到底そんな負担には耐えなかったろう。
 
通常、中立は、重武装でしか保証されない。     http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/15956392.html  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/15954344.html
 
 新・琉球王国が大陸は支邦の侵攻を拒絶できるだけの重武装中立を実現するならば、これはひょっとすると現状=沖縄県として日本の統治継続よりも日本としては歓迎しうるかも知れない。緩衝国が誕生するのだから。だが、上記の通り沖縄の重武装中立化でさえ実現性は乏しい。
 
 従って、今回報じられる著書で喜納氏が期待し、菅首相が副首相時代に「半分ジョークながら言った」とされる上記4>「沖縄独立」論は、沖縄にとっても、( 沖縄以外の)日本にとっても不幸な事態しかもたらさない。
 
 その菅副首相(当時)の発言が、喜納氏の言う通り「非公式だったとしても重い」と言う点は私も賛同するが、逆のその重さゆえに、「鳩山民主党党首の個人的約束を利用するだけ利用して後は日本の主権を犠牲にしてでも反古にする」と言うその重さゆえに、首相失格にして政権与党失格の発言であると、断じざるを得ない
 
 尤も・・・・
 
 「首相として靖国神社に参拝はしない。」と言う時点で、私に言わせれば、立派に首相=自衛隊三軍の最高指揮官失格なのであるが。

<注釈>
(*1) あらためて書くと、エライ肩書きだな。名前負けも良いところだが。何しろ「国家」の「戦略」を「担当」しちまっている「大臣」だ。
(*2) 「人民解放軍野戦軍司令官」殿の指揮下に入っているような気が、多分にするが。
(*3) と、大分後になって主張しだした「約束」。
(*4) 兵役についている人口は、労働人口にはならない。失業対策には一定の効果があるだろうが。