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(1.)米TVシリーズ「スパイ大作戦」
 
 「スパイ大作戦」と言うアメリカのテレビシリーズがあった。よくパロディーのネタに使われていたので、私でも知っているような有名なテレビ番組だ。最近はDVD付きの雑誌になっているようである。
 アメリカのスパイ組織に謎の黒幕から指示が届き、それに基づいて種々のプロフェッショナルが奇想天外な作戦を以って世界の危機を、なかんずくアメリカの危機を救うと言う話であるそうだ。その指示の届き方にパターンがあって、まず様々なものに偽装した録音テープ(*1)が届く。それをテープの形にしてプレーヤーにかけると、黒幕の声が流れ出す。出だしの部分は決まっている。
 
 「おはよう、フェルプス君。さて今回の君の任務だが・・・」
 
 あれこれ説明があり、大概は無理難題に思われる任務が与えられた後、謎の黒幕は次の台詞でその指示を〆る。
 
 「なお、例によって君もしくは君のメンバーが敵に捕らえられたとしても、当局は一切関知しないからその心算で。
 なお、このテープは、自動的に消滅する。」
 
 その言葉が終わるか終わらぬかの内に、如何なる仕掛けによるものか、音声を再生していたテープからはもくもくと煙が立ち上り、任務を伝えたテープは目出度く「自動的に消滅」すると言うのがお定まりのオープニングであるらしい。
 
 正直、この番組を一、二度しか見た記憶がないので、上記の再現には少々不安が付きまとうが、上記のシチュエーションと言い「謎の黒幕」の台詞と言い、随分パロディになっているので、そうは外さないだろう。(多分)。
 
<注釈>
(*1) 録音「テープ」って処に時代を感じなければならないな。今ならば音声どころか動画も相当な量が固体素子に記録できる。

(2.)普天間基地移設問題「5月末決着」を巡る鳩山首相と政府の乖離
 
 閑話休題。(それはさて置き)
 
 報じられているのは、普天間基地移設問題「5月末決着」を巡る平野官房長官の発言である。くどいかも知れないが「5月末」決着(ごがつすえ けっちゃく)である。5月「未決着」(ごがつ みけっちゃく)ではない。
 
 当ブログの普天間基地移設シリーズにも縷々述べている通り、「普天間基地移設問題5月決着」と言うのは、凡そ昨年12月の「昨年末決着」を反古にして以来の、少なくとも鳩山首相の口癖であり、その前段階としての「3月末 普天間基地移設先政府案決定」と言う「約束」が反古になろうとも( 政府案は、未だにまともに形になっていない・・・政府案と言う以上、少なくとも内閣案であるはずであり、それは福島社民党党首の同意、黙認、もしくは黙殺が必要である。)つい最近まで鳩山首相が「絶大なる自信」を見せていた目標である。
 
普天間基地移設シリーズ 記事リスト http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32456004.html
 これに対し、「政府としては5月末決着断念か?」と報じられたりもしていたが、鳩山首相の「絶大なる自信」が遂に崩れて、「5月末決着を、鳩山首相自身が断念した」と報じられたのは漸く今月13日の事である。
 
<普天間移設>政府、5月決着断念へ…徳之島3町長拒否   http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100508-00000010-mai-pol
鳩山首相、5月末決着断念を表明 普天間移設問題「6月以降も努力」  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100513/plc1005130925007-n1.htm
 その後、またぞろ翌日に
> 首相は14日、記者団に
> 「5月末までに決着する。
> 米国の前に沖縄と全国、特に移設先にかかわる地域に理解をいただき、
> 『これでいこう』という方向でまとめていく」
と鳩山首相が発言した事が報じられたり、一方で関係閣僚会議で決着の半年先送り( って事は、11月末決着??)が報じられたり、この辺の経緯は纏まるとなかなか興味深いし、遂に「史上最悪の首相」とまでマスコミに言われ始めた(*1)鳩山首相と現政権の行動記録と言う点でも是非記事に残したいところだが、まだメモ段階でしかない。
普天間問題決着の半年先送りを確認 関係閣僚会議   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100515/plc1005150151000-n1.htm
 
 とは言え、首相の自信が流石にぐらついており、政府は閣僚含めてどうやら「5月末決着断念」で固まったと言うのはどうも確からしい。
 確からしいと言うか、常識的に考えたらもう2週間ほどしかない5月の間に「決着する。」と断言できる神経の方がどうかしていると、私なんかは断じて仕舞う。
 
 つまり、鳩山首相の私から見て奇怪なほどの( それでも流石にグラついて来たらしい)自信と、政府並びに閣僚の考えが乖離を見せているのである。
 
 それも無理からぬ、とは思う。何しろ鳩山首相の政権交代=首相就任以来の実績と言えば、朝令暮改のオンパレード。それも何の説明も弁明もなしの方針変更であり、鳩山首相当人は「決して迷走していない」と豪語するのだから、「ブレる」どころか「方針が元々ないし、決めない。故にブレない。当人もブレている心算がない。」としか浅学非才の私なんぞには解釈のしようがない。
 
 それでも「5月末」は近づいて来る。鳩山首相はぐらつきながらも自信を覗かせる。苦肉の策が今回の平野官房長官発言なのだろうと、私は邪推する。報道に曰く。
 
> 5月末にとりまとめる政府の対処方針について
平1> 「首相発言ということはあるかもしれない」と述べた。
> 各閣僚の署名が必要な閣議決定や閣議了解ではなく、閣議での首相発言で決着させる可能性を示唆(しさ)したものだ。
平2> 平野氏はまた、首相発言で内閣全体の意思を示すことになるとの認識を強調。
> 政府が普天間飛行場の県内移設で閣議了解を求めた場合、応じない考えを示した社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相に関しては
平3> 「当然、理解をいただく努力はする」と語った。
 言うまでもなかろうが、この平野官房長官の論理は何とも奇妙である。
 上記報道にもある通り、福島社民党党首は普天間基地移設先の沖縄県内移設案に対しては閣議了解に応じないとしている。いくら上記平3>でその福島党首の「理解を頂く努力」をすると言っても、閣議決定のサインがもらえそうにないから上記平1>の「首相発言による政府方針5月末決定」であろう。
 であるならば、上記平2>「首相発言は内閣全体の意思」は詭弁にしかならない。閣議決定や閣議了解も出来ないような首相発言に、一体どれほどの重みがあろうか。
 
 況や、先の衆院選挙で、沖縄駐留米海兵隊の抑止力としての重大性も認識せぬまま「普天間基地の国外移設。少なくとも県外移設」を吹聴して「政権交替」の追い風(*2)とし、にも拘らずつい先頃「普天間基地の県外移設は民主党党首としての約束で、当の公約ではない。」と公言してしまう鳩山首相の「首相発言」である。
 
 "Trust Me!"並に信用できないだろう。
 
<注釈>
(*1) 「マスコミに言われ始めた」と言う事は、「実はそうではない」と言う可能性を少なくとも忘れるべきではないと、私なんぞは警戒してしまうが。
(*2) そんな「追い風」が吹かずとも、「政権交代」が実現したであろう事は、残念ながら私でも認めざるを得ない。所詮その「追い風」は、沖縄県にほぼ限られる、ローカルなものだ。

(3.)「君もしくは君のメンバーが敵に捕らわれたとしても、当局は一切関知しない。」
 
 前節で述べた通り、鳩山首相の「5月末決着」に見せる自信と、鳩山首相自身「県外移設は党首としての(私的)約束であって、党としての公約ではない。」と言い始めて少なくとも「一部県内移設」とならざるを得ない( と今頃になって気づいた)情勢(*1)、これに対し十年一日で「ケンガイダァコクガイダァ」とお題目唱えるしか脳のない社民党と言う状況下で「5月末に閣議での首相発言として政府方針「決定」による「決着」」と言う今回報道が示唆している「解決策」は、一種の知恵、苦肉の策と言えなくもないように一見見える。
 
 その際決定される「政府方針」は、昨今の報道からすると「現行日米合意案=普天間基地の辺野古海上移設案の修正 + 訓練の一部沖縄県外実施」であるらしい。
 
 鳩山首相は首相発言で「政府の方針決定=決着」と主張し、米国に対しては「現行日米合意の修正案に過ぎません。(訓練の県外実施なんて形だけで良いんですよ。)」と言い、沖縄県民には「訓練実施が県外に行くのだから、負担の軽減になる。」と主張する。
 福島党首は閣議決定や閣議了承にサインしなかった事を以って「普天間基地の県内移設に体を張って抵抗した。」と主張する。
 少なくとも鳩山首相と福島党首にとってはハッピーな解決が、今回報道の「閣議家体でも閣議了承でもない、首相方針による5月末政府方針決定」であるかも知れない。
 
 だが、更に邪推を巡らすならば?
 
 私が本記事の冒頭を、ろくに見た事もない「スパイ大作戦」の紹介で始めたのは、「更に巡らした邪推」の結果だ。
 
 「君もしくは君のメンバーが敵に捕らえられたとしても、当局は一切関知しない」
 
 今回の報道にある平野長官が示唆した「閣僚のサインが一切入らない、只野首相発言としての政府方針」は、これを狙ったものではないのか。
 
<注釈>
(*1) そんな情勢を招いたのは鳩山首相であり、民主党であり、現政権であるから、私は全く同情しないのだが。

(4.)「おはよう、ハトヤマ君・・・・」
 
 言い換えれば「首相発言は、首相発言に過ぎず、それに内閣は拘泥しない。」と言い逃れるための準備をしているのではないか、と言う邪推である
 
 即ち遂に内閣、なかんずく民主党閣僚までもが、鳩山首相を見限り出し、「鳩山後」のための損害極限を始めたのではないか。
 
 鳩山首相については、その「発言の軽さ」がしばしば指摘され、当ブログでも「発言が軽いなどと言う生温いものではない。」と散々痛罵しているところであり、またその「発言の軽さ」を鳩山首相自ら実証する事多々あるのであるが、「内閣は首相発言に拘束されない。」と公言されるほどに首相発言が軽視・軽蔑されると言うのは、正に異常事態である。
 
 無論、「沖縄駐留米海兵隊が抑止力であると知らなかった」民主党が「憲法9条が最大の抑止力」と公言して憚るところのない社民党とつるんで連立政権を為しているという事態が、既に異常事態なのではあるが、その異常事態は先の衆院選挙で「国民が選択」した異常事態であるから、そんな異常事態も、私は甘受せざるを得ないと考える。が、閣僚が首相を軽視すると言う事態は、一寸看過し難い。
 
 鳩山首相の後釜が誰であれ、民主党員である限り、その黒幕が「我が敵」小沢一郎である事に変わりは無く、根本的な改善は期待できない。が、マシになる事はありえるだろう。
 だが、それは、残念ながら「国民の選択」によってではなく、「我が敵」小沢一郎の胸三寸による「状況改善」にしか過ぎない。