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 衆知の事実であろうが、議事録と言うものは、侮り難い影響力を持つ。技術調整、商談、打ち合わせ等など、会議の目的は種々あるが、そこで何が協議・討議され、何が決定されたかは、議事録なりメモなりとして形を成さなければわからない。少なくとも公式に会議の場以外に持ち出し、記録するのには議事録・メモが不可欠である。
 であればこそ、( と私は想像しているのだが、)旧ソ連をはじめとする社会主義諸国の最高権力者は、大統領でも首相でもなく書記長であり、会議の議事録を司る書記の大親分が一番偉いのである。「書記の筆先一つで、議事録=会議の決定事項はいかようにもなるからだ。」と私は解釈している。
 
 であるならば、会議会談自体もさることながら、その場での決定事項を以下に記録し、いかに公海或いは隠匿するか否かと言うのは会議会談以上に重要であり、時に致命的でさえある。たとえ会議で白熱した討議討論をしたとしても、議事録にはその件を記録せず当事者間のみの秘密とする事だってあるだろう。
 
 「現在を支配するものは、過去をも支配する。過去を支配する者は未来をも支配する。」と言う正に真理省のキャッチフレーズそのものだ。
 
 と言う事は、公平に、正確に、議事を残す事は重要であり。それ故にこそ、会議後には合意文書のみを、即ち会議当事者同士の協議討議した結果のみを相互確認のうえで発表する事だってある。会議・会談そのものをオープンにし、国会中継のようにテレビ中継なりネット中継なりする会議もある一方で、当事者同士のみの非公開会議が厳として存在する以上、議事録・メモをどのように残すか作るかは、可也重要な問題になる。
 
 以上を踏まえた上で、報じられているのは先の核セキュリティサミットに於けるオバマ大統領―鳩山首相「非公式ながらも第3回」日米首脳会談などに関する報道。要約すると以下の諸点である。
 
(1) 核セキュリティサミットの日米首脳会談で、日本側はこの会談を記録に残さないよう指示を出した。
(2) 上記会談に於いて、米側=オバマ大統領は相当強い調子で日本側に普天間基地移設問題の早期解決の決断を迫ったと米側の報道にはある。
(3) 上記報道を、日本の鳩山首相、岡田外相は揃って否定している。
(4) 米側が「海兵隊の地上部隊とヘリ部隊の駐留場所の距離を「65カイリ(約120キロ)以内」とするよう求めている」ことは「海兵隊の運用という軍事機密にかかわる問題」であるのに日本側から情報漏れしているとして、米側は強く抗議している。 
 
 上記の内(4)は「米側の怒りの表現」と見てよかろう。確かに「120km」と言う具体的な距離は「海兵隊の運用という軍事機密」に当たるかも知れないが、それ以前から「ヘリの飛行時間にして20分以内」と言う指標は報道されており、この指標と大差ないのであるから、目くじら立てねばならないほどの軍事機密とは考え難い。第一、F-22でさえ売る事を憚られる(*1)、「人民解放軍野戦司令官」様に牛耳られている現政権に、実害のある軍事機密を漏らすことなんて、意図的か、相当なウッカリでない限り、先ずないだろう。
 
 問題は上記(1)~(3)であり、その根幹は(1)「非公式だが第3回日米首脳会談の記録を残さない。」である。
 報道では、
> オバマ大統領から問題解決に向けた決断を厳しく迫られたことが記録に残れば
> 責任問題への発展は不可避で、
> 政権維持のためには記録を残さない方が得策との判断があったとみられる。
とされている。
 これが事実であるならば、鳩山首相及び現政権は、政権を維持するために、意図的に情報を制限しているのである。奇策とは言え、情報統制であり、検閲の上流であり、正しく真理省の所業である。
 上記を言い換えれば、「現政権を維持し、責任問題になりそうな米側の厳重抗議が公式に残らないよう、記録を残さないように指示した。」のである。
 
 その結果、上記(2)の通り、相当激烈な抗議が米側からあったと米紙で報じられても、(3)の通りにすっ呆けていられるのである。いくら米紙が報じようと、公式には何も記録されていないのだから「米側の厳重抗議」も無かったことにできる。現政権は安泰。万歳、と言うわけだ。
 さて国民諸君。諸君は先頃民主党が、非核三原則などを巡る密約問題を調査し、その結果を大々的に公表された事を御記憶だろうか。鳩山首相級の鳥頭でない限り、ご記憶であろうと期待するのだが。また「前政権の非」であるから、現政権がこの核密約調査結果を「鬼の首を獲ったよう」とは言わぬまでも、相当派手に自慢し吹聴していた事も。
 このとき当ブログは、「非核三原則は端から虚構であり、核密約は日本の国益・安全保障上有効であった。従って受容・許容すべきものである。」と言う記事を書いた。多少の軍事知識ある者にとって「非核三原則の虚構性は自明であり、核密約はあって当たり前。」と言う事と共に。
非核三原則は虚構である2-核密約調査を巡って-   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32092292.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32092309.html 
 sakura(M)さんとのその後の長い議論を通じては、非核3原則を信じ、それを信じて「政府に騙される」国民なんてのは明きメクラであり、平和ボケして民主主義国家の国民として許すべからざる知的怠惰である事も述べた。
 
 政府が情報を統制し、国民一般に知らしめまいとするのは、核密約も、今回報道にある「日米首脳会談の不記録」も、同根である。
 しかも、今回の「日米首脳会談の不記録」の方が遥かに罪が重い。
 
 何故ならば、非核3原則の虚構性と核密約の存在は、多少の軍事知識から容易に推定できる範囲であるが、核セキュリティサミットの日米首脳会談でいかに米側が強硬に抗議しても、それを記録せずに首相自ら「有意義な会談だった」と言っていれば、国民はその中身を知りようがない。
 更には、そのメリットが大いに異なる。核密約によって得たのは我が国の安全保障であり、これ以上のものは滅多にないような公理公益だ。他方、日米首脳会談不記録によって得たのは「現政権の維持」であり、鳩山首相と民主党の私利私欲に過ぎない。
 従って、核密約を強行した事を上記記事で支持表明している私でも(*2)今回の「日米首脳会談の不記録」には抗議せざるを得ない。それは私利私欲の為に情報を私的に統制した、民主主義の危機である、と。
 
 上記報道は報じている。今回の日米首脳会談を記録しないと言うのは「奇策」である、と。
 
 「奇策」。そのような生易しい表現で良いのだろうか。確かにその奇策にも拘らず、米紙の報道はあるので、民主主義の危機はある程度救われては居る。また、記録に残らないが故に米側も歯に衣着せぬ強硬な抗議が行えたと言う背景も、あるかもしれない。
 だが、日本政府=鳩山首相と民主党及び現政権が情報の統制を意図してそれに部分的にであれ成功した事に変わりは無い。
 即ち鳩山首相、民主党、現政権は、現政権維持と言う私利私欲の為に真理省たらんと欲し、既に部分的にであれ真理省化しているのである。
 
 本記事のタイトルを、真理省のキャッチコピー「無知は力である」とした所以である。
 
 さて、国民よ。
 諸君は真理省に支配下でプロレ階級となり、プロレフィードで日々を安逸に過ごす事を望むのか。
 子供手当てに高校無償化、果てはネットインカムまで、現代社会はプロレフィードに事欠かないのだぞ。
 
 如何に、国民。
 
参考小説「1984」 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/20762953.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/1984%E5%B9%B4_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC)

<注釈>
(*1) 憚っていたのは政権交代以前からだが。
(*2) 密約無しで済ませられるものならば、済ますべきであると、上記記事に述べている事も併せて想起願いたいな。