先回記事「泰山鳴動、ネズミは何匹?」でほのかに光明が見えたかに思えた普天間基地移設問題であるが、案の定と言うかやっぱりと言うかさっぱりというか、暗中模索、五里霧中、闇夜の鉄砲、群盲象を撫でる状態に見えるのだが・・・これが私の気のせいならば幸いだ。
何しろ閣僚の一人(であるはず)の平野官房長長官が全く独自の勝連半島沖埋め立て案を米海兵隊関係者と検討を進めて鳩山首相には提案すらしていなかったことが発覚し(上記経緯(115))、なおかつ此処に自衛隊那覇基地の部隊まで移設しようと言う壮大な構想(上記経緯(116)。でも首相には提案していなかった)であることが判明したかと思えば、案の定その勝連半島地元のうるま市長は反対を表明するし、その平野官房長官と前原沖縄担当相は揃って「普天間基地は存続する可能性がある」事を示唆したとして非難され(上記経緯(112))、北沢防衛相もこの非難に同調する始末(上記経緯(114))。そんな中で一人、我が敵・小沢一郎が「党はとやかく言わず、政府に任せた。」と一人責任を逃れようという姿勢を見せる。が、民主党黒幕にして辺野古近辺に土地を所有している(*1)我が敵・小沢一郎がかような大問題に何の影響力も及ぼさないとは、誰も考えないだろう。「人民解放軍野戦軍司令官」としての影響を及ぼすかどうかは兎も角。
挙句の果てに「浮上」してきたのが「辛うじて沖縄県外」である徳之島と来たもんだ。辛うじてでも「沖縄県外」だから、沖縄県民も社民党も受け入れやすいし、過疎化に悩む島と言うから地元の反対もないまたは少ないという期待はあるだろう。即ち「連立政権の維持=社民党の政権離脱引きとめ」と先の衆院選挙で沖縄県にばら撒いた「普天間基地の、あわよくば国外、少なくとも県外への移転」と言う夢のつけを、「沖縄北方200kmに孤立した徳之島への移転」と言う軍事的不合理性を以って米国、米軍と我が国の安全保障=国益に押し付けようという算段だ。
即ち、普天間基地移設問題は、先ず第一に我が国の安全保障上=国益上の問題であるというのに、同盟国である米国よりも、国民の一部でしかない沖縄県民と、弱小な連立相手にしかならない社民党を「友愛」しようといのが鳩山首相であり、現民主党政権であるらしい。
全く、選挙に、ただ選挙だけに勝つことを目的とした、ある種「理想的」な政党の出現であり、正しく我が敵・小沢一郎の宿願の成就であろう。
徳之島は報じられるとおり、沖縄と鹿児島の間、沖縄北方200kmの島。普天間から徳之島への沖縄駐在米軍移転は、現行案では航空機・ヘリ部隊のみ。これでは地上部隊や水上/水中艦艇との有機的連携は望めまい。
米国がこの徳之島移設案を呑む可能性もさることながら、私が懸念するのは、鳩山首相、民主党、現政権の国防意識、安全保障意識だ(*2)。無論そいつは、現政権発足以前、連立予定3党共通公約に安全保障が盛り込めなかった当初から抱き続けて、少しも払拭されないばかりか、ますます強くなる懸念なのであるが。
普天間基地移設先を巡って幾度かは「抑止力」と言う言葉は出てきたが、社民党はそんなもの全く度外視しているし、民主党と鳩山首相はその社民党と連立を維持する事に汲々として、国家国防と言う視点が全く欠落しているのである。
尤も、いくばくかでも国家国防と言う視点が(*3)民主党なり鳩山首相なり、あるいは我が敵・小沢一郎なりにでもあれば、今回のような「普天間基地移設問題」は起き様がなかったのであるが。
泰山鳴動、未だ鳴り止まず。
鳴り止まないのは泰山だが、笑いが止まらないのは中国、北朝鮮だろう。
<注釈>
(*1) 別に土地を所有するのは罪ではない。が、政治献金で土地を買い漁り、投資だか土地転がしだかでその資産を増やすというのは、「李下に冠を正さず、瓜田に靴を入れず。」には程遠いとはいえよう。
(*1) 別に土地を所有するのは罪ではない。が、政治献金で土地を買い漁り、投資だか土地転がしだかでその資産を増やすというのは、「李下に冠を正さず、瓜田に靴を入れず。」には程遠いとはいえよう。
それを政治家に求めるか、は支持者の質に依るのだが。
(*2) 社民党にそんなものがないのは、先の選挙で掲げたマニュフェストから明らかだ。それを言うなら民主党だって3党共通公約だって、似たようなものだが。
(*3) 党利、党略ではなく。