1. 岡田外相の「普天間基地固定もありうる」発言を巡る各種反応

 此処ではあらためて、「普天間基地の現状固定もありうる」とした岡田外相の発言(前記時(86))と、これに対し反発し、不快感を露にする社民、国民新両党と鳩山首相の発言を取り上げよう。
 
 再録になるが、問題になった岡田外相の発言は以下の通りである。
1> 「望ましいことではないが、
2> 普天間のほかになければ今のままということもあり得る。
3> (普天間は予定通り返還されるべきだとした)首相は『思い』を言われたのであって、
4> 明確に(継続使用を)否定したわけではない」

 これに反発して社民党の重野幹事長は以下のように批判している。
5> 「(政府与党のメンバーによる)グアム視察も実現しそうな時期でもあり、
6> そういう動きがある中での外相発言は問題ありと指摘せざるを得ない。
7> 鳩山由紀夫首相のこれまでの発言とも矛盾する」

 その尻馬に乗ったわけではなかろうが( イヤ、わかったもんじゃないぞ)鳩山首相も次のように不快感を表している。
8> 「そもそもの発端が普天間の移設にあるわけだから、
9> それが最終的にまた戻ってきたという話では答えにならない」

 そうかと思うと平野官房長官までこんな事を仰る。
10> 「普天間の代替施設を探すために検討委を立ち上げている中で、
11> 戻ることも想定しているという論理は矛盾している」


2. 今までの実績と、根拠の全く判らない自信―鳩山首相と民主党

 正直なところ、鳩山首相や平野官房長官の発言には、呆れてものが言えない。
 社民党や国民新党の反応は、連立弱小与党の発言だからまだ罪が軽いが、有罪であることには変わりが無い。
 
 先ず鳩山首相並びに平野官房長官にお尋ねしようでは無いか。
 普天間基地の移設先については、先の衆院選挙で「国外、少なくとも県外」と言う社民党張りの「夢」をばら撒いての「政権交代」の実現以来既に5ヶ月を閲しながら、未だ「アメリカ政府も納得しうる」代替案一つ捻り出せないで居る。ゼロベースだろうがなんだろうが構わないが、「今後検討すれば、アメリカ政府も(と言う事は米海兵隊も)新移転地の地元も納得できる素晴らしい移設先が必ず見つかる。」と言う自信は一体何処から来るのか。
 
 それへ向けて「今、努力している」と言うのは、多分事実なのだろう。「何今頃そんな努力してやがるんだ。それは先の衆院選前に「夢」をばら撒く前。少なくとも第1回日米首脳会談前に完了しておくべき努力である。」と言うのは、まあ、置くとしてもだ。前自公政権が10年かけて見出しえなかったそんな素晴らしい代替案を、民主党―社民党―国民新党現政権ならば今後数ヶ月で必ず見出せると言う途轍もない自信は、一体何処から来るのか。
 
 「そんなことは出来ないかも知れない。」と考え、懸念し、用心し、左様な事態となったらどうなるか考えるのが普通であり、少なくとも外相や防衛相と言う日本国のコンティンジェンシープランを立てる者の義務ではないか。ついでに言えばその義務は首相とて免れるものではない。
 
 で、そんな有り難い代替案が出てこなければ、岡田外相の指摘どおり、普天間基地は動かない。いかに普天間基地周辺が「危険な状態」にあろうとも、いかに普天間市民が心配しようとも、普天間基地は動きようが無い。
 正にその事を指摘した岡田外相に「不快感」を示したところで解決策が見つかりやすくなるわけではないし、上記の通りこれはコンティンジェンシープランであるから、今政府なり首相なりがやっていると言う遅まきの「努力」とは、なんら矛盾するものでもない。
 
 その「努力」が、必ず結実するものとは限らないのだから。

 不快感を示したり、矛盾するなどと皮相的に批判するのは、有力な代替案の一つもひねり出してからするがよろしかろう。



3.鳩山首相は金星へフルムーン旅行するのが至当である。

 端的に言おう。元々はあった普天間基地の移設先「辺野古」を放棄して「ゼロベースで検討」したところで、「そんな都合の良い場所はない」と言う結論になるのは目に見えている。いくら鳩山首相やら社民党やらが努力を重ねたところで、無い袖は触れないし、無い土地は買えない。
 
 そんな単純明快な事が見えていないのは、社民党や鳩山首相、それに一部の沖縄県民ぐらいのものだ。
 
 現行の日米合意である「普天間基地の辺野古移設」を否定するのであるならば、デフォルト状態は「普天間基地は動かない。」である。それは現行日米合意を「履行しない」と仮定した瞬間にデフォルトとなる。
 その筈なのだが、一体何をどう考えると「検討しているんだから、どこかはわからないが普天間基地の移設先はきっとあり、普天間基地は日本に返してもらえる。」と無邪気に「信じる」事ができるのか。
 
 それが願望、希望である事は認めるが、「普天間基地移設先案」さえまともにない状態で、「普天間基地はきっと日本に帰って来る」などと言う奴は、詐欺師か気違いとしか思えない。
 
 現状は「現行日米合意を履行する、即ち普天間基地を辺野古に移設するのでない限り、普天間基地は動かない。」である。
 
 例によって鳩山首相は、現実認識と言うものを、全く欠いている。
 夫婦揃って金星にでも行き、帰って来ない事が、世のため人のため日本のためである。
 

4.予想される今後の普天間基地

 このまま現政権が「努力」を重ねても、ろくな代替案は出てこず、普天間基地は当面帰ってこないだろう。
 私は霊感なんてものとはトンと縁が無く、予言者では無い。未来を見通す水晶玉も持ってないし、水晶玉を仮にのぞいても向こうの景色が歪んで或いは逆様に見えるのみだが、この「未来」は可也の明確さを以って明確に「見えて」しまう。
 
 普天間基地の返還は、民主党政権崩壊後、恐らくは新生自民党政権下で、現行日米合意どおり辺野古への移設をベースに実施されるだろう。それまでの期間は、純然たるディレイ・遅れになる。
 
 そういう意味では、今、鳩山首相や、政府や、社民党やらが重ねている遅まきの「努力」は、実に虚しい徒労となり、鳩山首相はまたぞろ「努力と誠意を認めて欲しい」とか何とか言い出すことになると、私には思えてならない。
 
 「努力は、子供のする事だ。
  大人は、やり遂げるべきなのだ。」 -「ハッサン・サラーの反逆」より-