.発言と責任
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 「綸言汗の如し」と言う言葉がある。「綸言」とは君主=為政者の言葉。「汗の如し」とは一度出したら引っ込みが付かない喩え。古代中国の諺だから、君主=為政者とは皇帝やら諸侯やらを指し、その発言の重大性を端的に表した言葉である。


(1.)鳩山首相の発言無責任

 「綸言汗の如し」などと言う古風な言い回し(*1)を思い出したのは、昨今これに全く反する事例が多いように思えてきたからである。
 例えば私が散々追っかけている普天間基地異説問題を巡る鳩山首相はじめとする現政権のお歴々。なかんずく鳩山首相である。第2回日米首脳会談直後に「普天間基地異説問題を扱う日米共同部会は、現行日米合意を前提としない。」と、「オバマ大統領は前提としていた」と認めつつ(なおかつ日米首脳会談の場ではその前提をなんら否定しないまま)翌日にその前提を吹っ飛ばすという暴挙に出た。なるほど鳩山首相は「現行日米合意を前提にする」と言う綸言は吐かなかったかったのだろう。が、「普天間基地移設問題の早期解決」「そのための日米共同部会の設置」に合意し、「Trust Me.」とオバマ大統領相手に大見得切って見せたその態度、あまつさえその「Trust Me.」と言う決め台詞を記者団に披露し、メルマガで広めるという行動は、「現行日米合意を前提にして普天間基地移設問題の早期解決を図る」と言う綸言を吐いたと常識的には考えてよかろう。
 所が上記の通りそんな「綸言」は汗どころか舌よりも素早く引っ込められた。言うまでも無い事だろうが。「汗」は「ひく」とは言っても「引き込む」わけではなく、体内から出て来なくなるだけだが、舌は口腔内に引き込まれているのがデフォルト状態だ(普通の人ならば、だが)。
 
 似たような状況は鳩山首相の提唱する(*2)「友愛ボート」を巡ってもあった。「自衛艦にNGO=民間人や(何故か良くわからないが)外国人を乗せて迅速に救援活動・支援活動に当たらせよう。」と言う奇妙なこのコンセプトは、最初は日米首脳会談にオバマ大統領相手に鳩山首相が得意になって持ち出して・・・・あっさり無視されたらしい。それも無理は無いのである。何しろ米海軍にはMercy級という我らが戦艦大和にも比肩し得る大型病院船2隻を擁しており、海軍医療スタッフ800名も搭乗している。この船が最高指揮官・大統領の命令一下で世界中どの海域へも(必要と在れば米海軍の護衛の下)駆けつける体制にあるのだから、自衛艦にお客を乗せたくらいじゃ大した足しにはなりはしない。
「友愛ボート」の舞台裏-  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30961995.html

 オバマ大統領に無視されたがよほどこのコンセプトが気に入ったと見え、鳩山首相はこの「友愛ボート」構想をぶち上げた。曰く「生命を守るために、紛争地域や被災地に赴く友愛の船」がキャッチフレーズだった・・・筈だった。
 我らが海上自衛隊の艦艇はそうでなくても不足しておるし、自衛艦に「余計な荷物と人員」を積んで支援・救援に当たると言うのは、大東亜戦争(太平洋戦争)のネズミ輸送=ガタルカナル島補給作戦のような無理が生じかねないし(*3)、紛争地域に自衛艦=軍艦を送るのは結構だが、その救援/支援活動をする(らしい)NGOなり「外国人」なり、さらには「友愛ボート」にも護衛が必要であり、護衛が必要と言うことは交戦規定も明確化しなければならない、と言う事は記事に指摘した通りだ。

 友愛ボートはネズミ輸送である1 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30756915.html
 友愛ボートはネズミ輸送である2 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30756953.html

 所がこいつもまた、「友愛ボート」構想を公表した翌日、「紛争地域には行かない」に改められた。「心変わりしました」も「前のが間違ってました」も、一切の言い訳も弁明も説明もなしに。

 舌の根も乾かぬ内に http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30757268.html
 
 つまり鳩山首相と言う人は、鳩山政権発足以来4月にも満たない短い期間に複数回「昨日言っていることと、今日言っていることが違う。」と言う事態を引き起こしている。なおかつその点について何の弁明も無い。かかる事象を引き起こす原因は、私には以下ぐらいしか考えられない。
 
 (1) 鳩山首相は記憶能力もしくは認識能力に重大な欠陥を有しており、昨日いったことを今日は忘れていると言う事が良くある。
 (2) 鳩山首相は(日本の首相と言う重責にあるにお関わらず)その発言に全く責任を負わない無責任極まりない人物である。( これも「恵まれた家庭に育った」からかな。いつの間にか9億円プレゼントされてしまう家庭じゃ無理も無いか。)
 (3) 鳩山首相の発言は大概悪意あるマスコミに捻じ曲げられて伝えられているが、本当は首尾一貫していてブレることは無い。「昨日言っていることと、今日言っていることが違う。」と言うのは、マスコミによる虚像だ。(この説は、当人が主張している。 鳩山首相、普天間移設で「米国の意向無視しない」5月までに結論 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091228/plc0912282244015-n1.htm  トテモシンジラレナイ。 「鳩山首相への公開質問状」 にも記した通りである。)

 この中で、一番可能性がありそうなのは、やはり(2)であろう。(次点は、(1)。(3)である可能性は残念ながら低い。別にマスコミを信用するわけではないが、マスコミを通じず鳩山首相に接した筈のオバマ大統領やクリントン長官の言動が、この説を支持しない。)
 
 鳩山首相は無定見無方針無能なばかりか無責任かつ優柔不断なコンニャク男である。


<注釈>
(*1) それを言うなら、我がブログは古風な言い回しの宝庫だろうが。
(*2) で、首相指揮下の防衛省・自衛隊としては(一応)まともに検討せざるを得ない。
(*3) 防衛省の考えどおり、揚陸艦「おおすみ」をこの任に付ければ、その「無理」は大いに緩和される。
 それでも米海軍のMercy級に比べれば、展開の早さと言い、支援・救援能力と言い、「屁のツッパリ」にしか過ぎない。
 支援救援のためならば、「友愛ボート」何ぞより、海自を増員し、米海軍同様に病院船を建造すべきである。


(2.)発言無責任の跳梁跋扈

 さて、日本国の首相と言えば、くどい様だが陸海空三自衛隊の最高指揮官であり、日本国憲法で言う三権分立の内最も太い柱と言うべき「行政」の長である。その人が発言に対し全く責任感を書いている当のは誠に由々しき事態である。
 
 だが、日本国首相がそのような発言無責任を率先垂範するならば、日本国民全体とは言わぬまでも、内閣府全員が発言無責任に陥るのも、また無理も無いところだろう。これは一人鳩山首相のみならず日本政府としてさらに由々しき事態なのであるが。
 例えば、先頃めでたく財務省を兼任する事になった管財務相の「口先介入」にその事例を見ることが出来るだろう。財務大臣を兼任する事になった直後、記者会見で「私が言うべきではないが」と言いつつ「もっと円安に振れた法が良い。」とした管財務相の発言は、少なくとも軽率とのそしりを免れない。
 実際今回の「口先(だけ)介入」は所望の効果を上げたと報じられている。その事自体は「日本国財務大臣」と言う地位が未だ国際的に一定の権威を保っていると言う事も意味し、かつ「費用のかからない介入で一定の効果を上げた」と評価する事もできる。が、狼少年の故事を想起するまでもなく(*1)、そんな「口先介入」はそうそう効果を上げるものではないし、管大臣自らが認めている通り、財務大臣が軽々しく行うべきものではない。行うとしたら、実体を伴う介入の支援として「口添え」をするに留めるべきであろう。それを就任早々に「実施」してしまえるのは、鳩山首相と同様、発言に対する責任感の欠如と、断ぜられても致し方あるまい。
 
 さらには、いきなり大臣クラスから卑近な例になるが、最近当ブログに性懲りも無く現れたJos某のコメントにも、発言に対する無責任が如実に現れている。久々に現れたこの似非キリスト教徒の隠れ主体思想主義者は、「コメントはコメントだけで評価しろ」理論を開陳し、今回つけたコメントは今回つけたコメントに限って評価しろと要求している。
 
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/31277073.html 2010/1/7(木) 午後 2:41 以降のコメント
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/12932026.html 2010/1/7(木) 午前 6:35コメント

 つまり今まで散々当ブログに訳の判らない自説を開陳し、その説を支持しない私のような者は「殺されるばかりの鶏」だの「デマ流し」だの「永遠に生きる後世を生きられない(*2)」となじった過去を綺麗サッパリ忘れろと、かように仰るのである。
 
 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/12932026.html コメント欄など
 
 誠、驚嘆に値する発言無責任ではないか。

http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/31431268.html (続く)
 
 
<注釈>
(*1) そういえば、この「故事」を知らないあるいは忘れていそうな閣僚が、現政権にはごろごろ居る。筆頭は勿論、鳩山首相だろう。
(*2) こいつを罵詈雑言と受け取るかは、人によるだろう。正直私は、こんなこと言われても「兎が影を踏んだ」ぐらいにしか感じない。
 jos某のような輩が永遠に生きる後世だぁ?そんなモノは、ブラックファロールの昼飯にくれてやる。