報じられているのは、鈴木宗男議員の民主党大会での挨拶。今の、小沢一郎に牛耳られ、鳩山首相を代表とする民主党大会が、少なくとも私にとって「ろくなモンじゃない」のは自明であるが、新党大地の代表として、来賓として挨拶したそうだ。

 党の大会に連立も組んでいない他党の代表が来賓として招待され、挨拶するというのも妙な話だが、新党大地にしてみればあわよくば連立与党入りを狙えるし、民主党にしてみれば、今の連立相手に対する睨みにもなるのだろうから、利害は一致するのだろう。

 それは兎も角、
 この挨拶の中で鈴木宗男氏は自らの体験を元に検察批判を展開し、小沢一郎の政治資金疑惑に対し「検察の暴走を許すな」「鳩山首相は権力と戦え」と、勇ましいことこの上ない。

 が、どうにも私は違和感を覚える。
 「権力と戦え」と、一国の首相とその黒幕を焚き付けるというのは、滑稽ではないか。首相は(くどい様だが)自衛隊三軍の最高指揮官にして日本の元首。黒幕はそれを陰で操る者。いずれもそうやたらに引けを取ることのない、立派な「権力者」ではないか。
 
 まあ、そこは、検察特捜部というところが「強大な権力を持っている」という主張だと、理解したとしても、何とも判らないのは鈴木宗男議員の鳩山首相に対する誉め方だ。

1> 鳩山代表、決断力がないという話をマスコミの人はされますけども
2> (そんなことないぞ、の声)、
3> みなさん、鳩山首相は私は大変な見識、胆力をもっていると思います
4> (その通り、の声)。
5> アンドレ・マルコフという数学者がおります。これは19世紀後半からの有名なロシアの数学者です。
6> 息子さんも20世紀の有名な数学者ですね。
7> このアンドレ・マルコフさんというのは数学の学者で、壊れた機械をどう立て直すかというですね、偏微分の政策論文を出しているんです。
8> 最近、私は鳩山首相、民主党代表がですね、1977(昭和52)年ですね、博士論文でこの論文を使っているんですよ。
9> 壊れた機械をどう立て直すか。まさにみなさん、これが政権交代だと私は思いますよ
10>(大拍手)」
 
 例によって適当なところで切って番号を振った。
 1>と3>はかなり挑発的である。何しろ「鳩山首相に決断力がない」と言っているのはマスコミに限らず、当ブログなんざ「無定見無方針無知無能のコンニャク男」とまで断じているのだから、3>は当ブログへの挑戦でもある。(2>や4>の合いの手を入れたのが誰かも知りたいところだが。)

 ところが5>以降で鳩山首相をどう誉めているかというと、

(11)>「鳩山首相は1977年の博士論文でロシアの数学者アンドレ・マルコフの論文を使った。」

これだけである。
 後は「19世紀後半から有名」にしろ「息子も20世紀の数学者」にしろ、「壊れた機械をどう立て直すかというですね、偏微分の政策論文」にしろ、みなアンドレ・マルコフを誉めたのであって鳩山首相を誉めているのではない。

 仮にその大数学者の論文を使った鳩山首相の博士論文が、アンドレ・マルコフ以上の大論文だったと考えても(到底信じられない。そんな大論文をモノした人が、金星旅行だの朝食に朝日をだのの寝言をカミさんに公言させると思えない。)それはせいぜい鳩山首相の見識を証明するのみである。

 鳩山首相の胆力も、決断力も、全く証明していないのである。(首相の博士論文がいかに偉大であろうとも。)

 無論、この挨拶の趣旨は「検察の暴走に対する新たな決意の表明」であり、鳩山首相への賛辞は付け足しに過ぎないのかも知れない。発言全体としてはその印象が強い。
 しかしながら、この挨拶は民主党大会に他党である新党大地代表として来賓に招かれての挨拶であると考えると、民主党及び民主党代表たる鳩山首相への言及の方が「検察の暴走」よりも重要なのではなかろうか。
 
 その「誉め方」がこれでは・・・・鈴木宗男議員殿、「民主党の誉めようがなかったための苦肉の策」とお見受けしましたが、はて、如何であろうか。

 もしそうならば、美事な韜晦策であり、そうと気付かず大拍手している民主党員たちは、自らの愚かさを天下に曝したことになる。