昨今はGoogleをはじめとするインターネット検索全盛であり、大概の用語はwikipediaなり何なりで一通りの解説は得られるようになっている。それに頼ると人間と言う奴はただの「検索データインプットマシーン」と化し、検索してコピペしただけで「判ったような気になってしまう」恐れが多分にある。
 知識ばかりで理解を伴わない者を「野郎の本箱」と痛罵したのは、確か子母沢寛の小説「勝海舟」に登場する海舟の父・勝小吉だったが(それとも海舟本人だったかな)、彼ならそんな「検索データインプットマシーン」のことを一体何と言うのか聞いてみたい所だ。さぞや痛快な江戸弁で斬ってくれる事だろう。

 長々と前振りしたのはタイトルにした「当たり屋」と言う用語のため。私の書く日本語は相当に「癖」があり、用語も広く一般的にはいいかねるし、恐らくは一部の人しか理解できない「専門用語」、平たく言えば「お宅用語」が相当混じっていることは承知の上だが、「当たり屋」は専門用語でなくとも用語の解説は要るのではないかと、不図思ったからである。
 
 「当たり屋」とは自ら事故を引き起こしておいて、その事故の相手に法外な賠償金なり示談金なりを要求する恐喝の一種。当然ながら犯罪である。
 
 タイトルにしたのは、反捕鯨テロ組織シーシェパードが、大々的にその「当たり屋」をやっているのではないかと言う批判である。
 
 
 報じられているのは反捕鯨テロ組織シーシェパードが、我らが捕鯨船団の第2昭南丸の船長と乗組員をオランダの検察当局に告訴したと言うもの。罪名はあろうことか「海賊行為」だそうだ。
 
> 弁護士はアディ・ギル号の船体100万ドル(約9300万円)相当の被害を受け、
> 乗組員1人が肋骨を折るけがをしたと主張

 とも報じられているから、訴因は(1)「アディ・ギル号の喪失」と(2)「乗組員1人の負傷」と言う事になるのだろう。この二つで「海賊行為」が成立するのかは甚だ疑問だが、オランダの法律を全く知らない私では、コメントできる立場に無い。
 
 この内(2)「乗組員1人の負傷」の直接原因が、今回の衝突事故にあることは先ず自明としてよかろう。その衝突事故が「アディ・ギル号の急加速による体当たり」である事は、以下で公開されている動画からは明らかだ。今後オランダにて裁判が開かれるならば、この動画が証拠物件の一つとして提出され、シーシェパード側が記録したと言うビデオと比較・検証がなされる筈だろう。
 当該動画は素人の私には、特撮ともCGとも見えないし、衝突事故から公開までのタイムラグを考えたならば、かような動画を予め用意しておく必要があり、仮に「シーシェパードの高速テロ船ならば体当たりしてくる可能性が多分にある。」と的確に予測したとしても、事故による損傷程度まで正確に予想するのは相当無理がある。従って、この動画は、相当程度信用できると私は考えるが、如何だろうか。
http://video.mainichi.co.jp/viewvideo.jspx?Movie=48227968/48227968peevee291545.flv
 以上から、上記の訴因(2)「乗組員1人の負傷」は、海賊行為にせよ何にせよ、日本側・第2昭南丸側の責任とは出来ない。
 
 上記の訴因(1)にも同様の理屈が成り立つ。
 が、こちらはさらに酷い。何しろシーシェパード、少なくとも2回「アディ・ギル号」を「沈没」とのたまっているのである。
 
 1回目は当然かも知れないが衝突の際に「真っ二つになって沈没した。」とまで声明しているのである。天下のAFPがこれを検証も何も無く右から左へ報道したのが以下の記事。AFPとはその程度のシロモノと言う事でもある。
シー・シェパードの「未来型抗議船」、日本船と衝突し沈没 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2679824/5128868
 尤も、良く読むとこの記事、おかしなところがある。
 
>乗り組んでいた活動家6人は救助され無事だが、船の回収は難しい状況だという。
 
 とも報じられている。「真っ二つになって沈没した。」船は、真珠湾や旅順港のような浅海ならいざ知らず、相当に深さのありそうな南氷洋では、さぞや「回収困難」な事だろうが、普通に考えたら外洋で沈んだ船は回収できない。「回収は難しい」と言う表現に、「実は沈んではない。」のニュアンスを込めたのか、AFP通信。
 そうだとしたら、「実は沈没していない」と言うことを知りながら、シーシェパードの言いなりに報道したのかAFP通信。
 さらに言えば、事故当事者の片割れである筈の日本の報道の方が正確とは、中立的な第3者であるべきマスコミとしては、恥ずべきではないか、AFP通信。
 
 先述の通り上記が「1回目のアディ・ギル号沈没」声明であり、つまりは嘘だった事は狂犬シーシェパード自ら認めており、以下の記事に今度は2回目の「アディ・ギル号沈没」が明らかになっている。
シーシェパードの抗議船、曳航中に南極海で沈没 http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100108/asi1001081128003-n1.htm  
 所が日本の水産庁発表によるとこの2回目の沈没宣言も嘘で、実態は「シーシェパードによる海洋投棄」であると報じられている。
シー・シェパードが抗議船を海に放棄 殺傷力ある矢発見 水産庁 http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100108/asi1001081128003-n1.htm

 つまり、最終的に狂犬シーシェパードがアディ・ギル号を喪失したのは、シー・シェパード自らがその曳航を諦めて海洋投棄したからである。
 
 以上から、オランダの法廷であろうが何処の法廷であろうが、その法廷が公明正大なものである限り、日本側・第2昭南丸船長並びに乗組員が「海賊行為」で犯罪者とされるいわれは、毛頭ない。
 
 勿論、オランダの法廷が公明正大とは程遠い可能性は多分にある。狂犬シーシェパードとしてはそのことに期待して、「(今回沈没したアディ・ギル号ではなく)シー・シェパードの母船「スティーブ・アーウィン(Steve Irwin)」号がオランダに登録されている」とか「乗員1人がオランダ人である」とか屁理屈をつけてオランダの法廷に持ち込んだのだろう。
 
 オランダ法廷の公明正大さが試されている訳だ。注目に値しよう。