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 タイトルにした「先憂後楽」とは、「人より先に憂い、人より後に楽しむ」と言う人間修行の要諦を表した四字熟語。分けても上に立つ者、指導者、社長などが部下・配下に示すべき態度を表したものであり、大事をなす場合の心得「悲観的に準備の上、楽観的に実行する」とも相通じる深みのある言葉だ。
 
 「先憂後楽の対極」としたのは言うまでもない、普天間基地移設問題を巡る鳩山首相並びに現政権の対応が、先憂後楽の反対、即ち先に「県外・国外移設」による人気取り並びに衆院選挙圧勝を楽しんで置いて、今頃漸く憂いはじめ=まじめに現行日米合意以外に選択肢が無いか検討を「はじめた」と言う恐るべき事態を指しての事である。
 尤も、民主党が社民、国民新と連立政権組んで政権与党になると予想された時点で、ある程度予測できた筈の事態ではあるが。
 
 「憂う」も何も普天間基地の「県外・国外移設」代替案一つまともに持たぬまま、さりとて現行の日米合意を履行する気も無いまま、二回も日米首脳会談をやらかしてくれた鳩山首相の大胆さは誉めるべきなのかも知れないが、ただ無謀なだけで何の役にも立っていない大胆さを見せられても、面白くもなんとも無い。その「大胆さ=無謀さ」のために第三回日米首脳会談の目処が立たないとなれば、これはもう世が世なら切腹か銃殺かシベリア送りモノの大罪であろう。


1.前記事「I am watching the PROGRAM」以降の経緯

 まずは前回記事以降の経緯を整理しよう、例によって各経緯の( )番号は通し番号であり、(1)は「変身、変心、また変針」にまで遡る。


(32) 12/9(水)鳩山首相が何か言っているが、要領を得ない。報道のタイトルは「交渉材料を固める」だから、「今頃交渉材料を集めるとは、アメリカは日本の言いなりになると言う途轍もない自信があったのだな。」と呆れながら記事を読むと・・・

1>「考え方は詰まってきている。
2>もう12月だ。
3>米国に対し、われわれの考え方を交渉材料として主張する方針を固める」
 例によって適当なところで区切って番号を振ったが、報じられている鳩山首相はこれしか言っていない。
 1>には何も言うまい。今まで「考え方を詰める」どころかまともに考えていた形跡が見られないのに比べたら、格段の進歩だ。
 2>も敢えてノーコメントとしよう。2回も日米首脳会談を持った事も、過ぎた事だ。
 3>が判らない。「考え方を交渉材料にする」と言う表現に違和感を覚える。漸く普天間基地を辺野古に移転するという現行日米合意の代替案(即ち「我々の考え方」)を明示し、これには固執せずに譲歩を協議(即ち「考え方を交渉材料にする」)する、と言う意味だろうか。それはつまり、連立与党たる社民党・国民新党に対するアリバイ工作をやると言う宣言か?アリバイ工作だけやって、結局は現行日米合意に沿った「決着」にしようと言う考えか?それが唯一「今から早期決着」を望みうる解決であるから。
 もしそうだとしても、先の衆院選結果=連立政権発足以来から「新たな決着」までの期間は、全く空費されていた事になるのだが。
 「泰山鳴動蚤一匹」ぐらいだろうか。
普天間移設で首相 「交渉材料固める」http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/333704/

(33) 12/9(水)グアムを訪問中の北沢防衛相は、グアムが普天間基地の代替候補とはなり得ないと言う考えを示した。同地は現行日米合意にある海兵隊の移転を予定通り進めたいそうである。
 まあ、予想通りだな。鳩山内閣では北沢防衛相が「一番まとも」なのじゃないかとさえ思えてきた。
北沢防衛相、グアム移設を否定 「日米合意にはずれる」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091209-00000611-san-pol

(34) 12/9(水)鳩山首相が言明したCOP15における「第3回日米首脳会談」は、正式に申し入れてさえ居ないことが判明した。
 即ち、鳩山首相がどんな提案を持っていようとも、コペンハーゲンでオバマ大統領に会うことも出来ずに空振りに終わる可能性が相応にあると言うことである。
1>「(普天間移設に関する)政府の考え方をまとめるのが最初で、
2>必要、機会があれば(会談したい)と思っている。
3>正式に申し入れをしている状況ではない」

 例によって判りよいように番号振って切ったが・・・後述するが、自信がない。
 
 1>はまず誰もが同意することだろう。今まで、2回の日米首脳会談がありながら普天間基地移設問題に何の進展もない、どころか問題としてすら扱われていないのは、「日本政府の考え方」すらなかったのだから当たり前だ。そんな状態を今まで放って置いて、駐日米大使に「激怒」されなかったら来年11月の沖縄知事選まで放って置こうとした鳩山首相の見識と無責任は大いに弾劾すべきであるが、この1>には同意する。
 
 先述の「区切り方に自信がない」のは2>のせいだ。「必要、機会があれば(会談したい)」と鳩山首相は言っている。つまり(「機会」は後述するから置くとしても)「日米首脳会談が必要ではないかも知れない」という認識を鳩山首相は有している。
 これは俄には信じがたい。
 社民党の主張に引っ張られての「普天間基地の県外国外移設を(駄目元でも)打診」するなら、再度の日米首脳会談は不可欠だろう。
 仮に現行の日米合意に沿って整斉と普天間基地を辺野古に移設すると決心したとしても、駐日米大使を「激怒」させてしまったのだから、常識的にはそれ相応の仁義を切るものだろう。
 であるのに「必要ないかも知れない」・・・
 狂人の考え方は健常者にはわからないものかもしれないが、日本国首相の意図がサッパリわからないのは日本国民として大いに困る。勿論、日本国首相が狂人と言うのも大問題だ。
 
 極めつけは3>だろう。
 2>で日米首脳会談の「機会がないかもしれない」と表明しているのは、ここで自白している通り正式に申し入れをしていないし、出来ないからという。

 「正式に(新たな日米首脳会談を)申し入れをしている状況ではない」

 その状況を作り出したのは、前政権でもリーマンショックでもオバマ大統領でもない。
 正真正銘掛け値無し、鳩山首相と現政権が作り出した状況である。
日米首脳会談、要請もできず…米側も消極的  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091209-00001214-yom-pol

(35)12/10(木) 上記(33)の北沢防衛相による「普天間基地のグアム移転不可」を受けて、社民党の重野氏が何やら文句を言っている。
>「ちょっと行って、ちょろっと見て『ダメ』って結論が出るのか」
だそうだが、Goの結論は簡単には出ないが、No GOの結論なら出る。北沢防衛相は出した。文句があるならグアム島民なり米国政府なりを、社民党が説得するのが宜しかろう。「党の根幹に関わる大問題」を、政権与党にありながら、民主党にゴリ押しするばかりでまともな代替案ひとつ出さずに、偉そうな口叩くんじゃない。
社民・重野氏「ちょろっと見て結論出るのか」 グアム移設で防衛相に不快感 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091210/stt0912101242008-n1.htm

(36) 12/10(木)上記(35)を受けた訳ではないだろうが、グアムのフェリックス・カマチョ(Felix P. Camacho)知事は、グアムに普天間基地のすべてを受け入れる能力は無いと表明した。
>沖縄に駐留する米海兵隊員8000人が14年までに移転する予定。
>カマチョ知事はこの点を指摘し、
>「普天間のすべてを受け入れるのは、限られた資源と収容能力の面から不可能だ」
>「グアムの資源と地域社会の福祉を念頭に置かなければならない」
つまり現行日米合意にある海兵隊の移転以上の部隊は受け入れられないと言う事だ。
 北沢防衛相の先行報告(上記(33))は正しかったという事でもあるし、それ即ち社民党重野氏の「あわよくば普天間基地グアム移転」と言う夢が、政府や北沢防衛相当人に確認するまでもなく潰えた事を意味する。
 「党の根幹に関わる大問題」なのだろう。さっさと政権離脱して下野するが宜しかろう。
普天間グアム移設、「受け入れ能力ない」と地元知事 http://www.afpbb.com/article/politics/2673192/5020228


2.現時点までをまとめると・・・・

① 日米安保条約の深化は頓挫している。中国やロシア、北朝鮮にとっては文字通り笑いが止まらない事態であろう。
② 上記①の原因は、全面的に鳩山首相と現政権の無能無定見無方針にある。他の誰にも何処にも責任の転嫁のしようが無い。
③ 社民党と国民新党は、小沢氏のご機嫌を伺ってさえ居れば「政権離脱」を切り札に現政権の主導権を握れる事を知った。今後は普天間基地問題に限らず、補正予算さらには来年度予算に向けてますます「主導力」を発揮する事だろう。
④ だが、社民党が握れるのも現政権の主導権まで。社民党「提案(*1)」の「普天間基地グアム移転」は北沢防衛相の視察結果からもグアム知事からも否定されており、「党の根幹に関わる」普天間基地移設問題に、少なくとも「国外移設」の目処は全く立っていない。勿論、「県外移設」もだが。
⑤ 鳩山首相は「政府の考え方をまとめる」と言っている。が、その考え方を以って日米交渉を始める目処は全く立っていない。

 その鳩山首相と現政権を先の衆院選で選出し、未だ「高い支持率」を与えているのは国民である。
 
 如何に、国民。


<注釈>
(*1) 精々「発案」、否「提議」だろう。