普天間基地移設問題から目が離せない。
 
 大きな動きがあるわけではない。米政府の主張は首尾一貫し全くブレが無いのに対し、日本の鳩山首相は何やらもごもご言うばかりでサッパリ要領を得ない。何しろNHKラジオの放送で聞いてもバックグランドノイズにかき消されてサッパリ聞き取れない放送で、「鳩山首相はこのように述べました。」とアナウンサーに言われても「どのようにだよ!」と突っ込むしかない始末である。
 海外短波を必死に拾っている放送ではない。日本で聞いている、日本の国営放送(の筈)でである。ノイズにかき消されて聞き取れないNHKラジオなんて、初めて聞くんじゃなかろうか。60年以上前の、天ちゃんの玉音放送の方がよっぽど聞きやすい。

 その点、活字になったものは誰でも読めばわかるからありがたい。読めば判るのだが・・・理解はし難いと言うか、想像を絶していると言うか。

 まあ、まずは、前回「さらに偏芯?」でまとめた経緯の続きから行こう。例によって各経緯の( )番号は通し番号であり、(1)は「変身、変心、また変針」にまで遡る。
 
鳩山首相の精神状態を疑う http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30632844.html
愚中の愚 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30819382.html
(1) 泰山鳴動鼠一匹 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30831957.html#30851028
(2) 変身、変心、また変針。http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30857751.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30857751.html
(3) The Untrustworthy Man-信じられぬ男- http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30869437.html
(4) さらに偏芯?http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30906546.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30906568.html



1.普天間基地移設問題を巡る、前回以降の経緯

(26) 12/7(月)昼 国民新党の下地幹郎政調会長(衆院沖縄1区選出)は民放テレビで「仲井真知事の許可がないと普天間基地の辺野古移転のための工事は着工できないが、そんな許可を出したら県議会は知事を不信任し、その結果選挙となればさらに普天間基地県内移設反対派が増える。従ってそんな許可は出ない。」と言う奇妙な論理で「鳩山首相は米国を」説得すべしと論じたそうだ。
 幾つか突っ込んでおこう。
 ① 県知事の許可さえあれば辺野古は着工できるのであるから、その後議会で基地移設反対派が増えようが減ろうが、新たな知事が就任して着工許可を取り消すか、現知事が変心して着工許可を取り消すまで、工事は進められる。問題ない。
 ② 「県議会が反対して、県知事が着工許可を出さないから辺野古への普天間移転は無理だ。」と鳩山首相が言うという事は、「私は日本国首相だが、日本国を統治していません。」と言えと言うのに等しい。
 それはそれで真実かも知れないし、鳩山首相ならそれぐらい平気で言いそうだが、そんな首相の「説得」にアメリカが納得すると思う神経はわからない。
 相手にされないだけだろう。普天間基地も、グアムに移転する予定の海兵隊も、ピクリとも動くまい。
 ③ 社民党も国民新党もそうなのだが、一体「外交の継続性」と言うものをどう考えているのだろうか。革命によって前政権を滅ぼした新政権でも、前政権の結んだ条約・合意には縛られる。「新政権だからリセット」にはしてもらえない。
 ほぼ無血革命なった明治政府が、江戸幕府の結んだ不平等条約を改めるまでにどれだけの努力と歳月をかけたか知らないのか。
 知らないとしたら(*1)政治家として怠慢としか言いようが無い。何しろ外国ではない、我が国の、高々100年かそこら前の話でしかない。治外法権はもとより、関税自主権すら奪われていた状態を、如何に回復したか。
国民新・下地政調会長「辺野古は無理」「政府はなんで米国を説得できないのか」 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091207/stt0912071333002-n1.htm

(27) 12/7(月)鳩山首相は12/18にCOP15出席のためコペンハーゲンに行く際、第3回の日米首脳会談をオバマ大統領と持つ意図を表明した。
 だが、その発言は相変わらず曖昧模糊として、何を言いたいのか判らない。
1>「そのときまで(12/18予定の第3回日米首脳会談)の政府の考えを伝え、
2>何らかの形で理解を得たい」(*2)
3>オバマ大統領に伝達する日本側の方針について、「(結論とは)必ずしも申し上げていない」
4>移設先に関しては「あらゆる選択肢が残っている」
 じゃあ一体どんな「方針」を伝えるのだ?「日本政府としては、何処とは判りませんが沖縄県外か国外です。」とのうのうと抜かす心算か??その心算ならば10日も待つ必要は無い。今すぐそう言って、蹴られてしまえ。10日後に蹴られるよりは、未だ建設的だ。
 一方同じ報道によると、鳩山首相周辺とその親分は次のように述べている。
>平野博文官房長官7日午後の記者会見「首相自身が方針、指示を出すために情報収集している(*3)。結論が出たということではない」
>小沢氏は7日午後の記者会見で、移設問題への対応について「新しい政権をつくった仲間として協力し合うということは、党務を預かる者として努力していかねばならない」
普天間で18日までに政府方針を米へ伝達 首相「移設先特定しない場合も」http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091207/plc0912071919011-n1.htm

(28) 12/7(月) 米大統領報道官は普天間基地移設問題に付いて、現行日米同意の履行と言う大統領の立場が普遍である事を記者会見で強調した。
>「(日米間には)合意がある。双方が繰り返して表明してきたことだ」
>「(11月の)日米首脳会談でオバマ大統領が伝えたことに付け加えるものはない」
 当然のことを言っているだけなのだが、見事なまでの首尾一貫性、ブレのなさだ。
 鳩山首相とは、比較するのさえ憚られるほどの。
普天間問題、日米政府合意が大統領の立場 米大統領報道官 http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20091208D2M0801108.html

(29) 12/8夕 北沢防衛相はグアム訪問に出発した。10日まで滞在して、現行日米合意で沖縄からグアムに移転予定の基地などを視察するそうだ。
>在沖海兵隊の移転に備えた受け入れ準備の状況を確認するとともに、
>民主党が主張している普天間飛行場の一括グアム移設案の実現可能性などを探りたい考えだ。
 普天間基地の辺野古移転と言う現行日米合意は反古同然に扱いながら、グアムへの海兵隊移転は現行日米合意に沿って行われるものと思えてしまう御都合主義は見上げたものだ。
 それ以上に見上げたものなのは普天間飛行場グアム移設の可否を判断出来てしまうと、報じられている事だ。
 普天間基地に現在居る米軍を収容するに足る施設がグアムにあるかないかとか、周辺住民が歓迎するか否かぐらいは知る事ができるだろう。だが、普天間基地に置いている部隊を、沖縄に置くかグアムに置くかではアメリカにとっても大きな違い。その違いを北沢防衛相は、推測する事はできても、断定する事はできない。
 言い換えれば、北沢防衛相がいかに目を皿のようにし、耳をダンボのようにしてグアム現地の情報を収集しようとも、普天間基地にある米軍をグアムに移設する必要条件を判定できるのみで、充分条件は推測の域を出ない。
 それで「普天間飛行場移設の可否を判断へ」は、報道タイトルのミスリードであろう。
 本文にあるとおり、「一括グアム移設案の実現可能性などを探りたい」のが精々だ。
 まあ、いずれにせよ、その実現可能性は極めて低いとしか思えないが。
北沢防衛相きょうグアム訪問 米軍基地視察で普天間飛行場移設の可否を判断へ http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091208/plc0912081124005-n1.htm

(30) 12/8(火) 同盟関係深化の政府間協議をめぐり、米政府が日本政府に、開催の先送りを通告していたことが明らかになった。12/4(金)の閣僚級日米共同作業部会の際に打診があったと言う。いわば、その際に示された駐日米大使の「激怒」が、実行を伴ったものであることが裏書された訳だ。
 口先で「重く受け止める」ばかりの鳩山首相との相違が、ここでも際立っている。
米、同盟協議先送りを通告 普天間問題混迷に反発 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091208/plc0912082022023-n1.htm

(31) 12/8(火) 長島防衛政務官の普天間基地県外・国外移転論を非難する。
>「基地のコストを減らしてくれという人たちは、日本が有事のリスクをどれくらい米国と分担するのかという議論を全くしない。
>とにかく迷惑施設だからどこかに行ってくれという議論が横行している」
 「政治主導」は鳩山政権のキャッチフレーズの一つだが、少なくとも普天間基地移設問題に関する限り、政治主導と言いつつ何も決断せず、寝言か夢物語ような議論しかしないから、官僚の方がよほどまともに見えてしまう。
「普天間県外移設」を批判 長島防衛政務官「あっち行けといえるか」http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091208/stt0912082002010-n1.htm


<注釈>
(*1) その公算は大である。
(*2) 「理解してもらえる」と思えるだけの提案を持っていく、とも解釈できるが・・・怪しいなぁ。この前は駐日米大使に堂々と「年内決着断念」と言いに行って、激怒されてるからなあ。
(*3) 一体今までは何をやっていたのかね??政権交代してからも久しく、2回も日米首脳会談をやって居る間、情報収集さえしていなかったのかね。
 していなかったんだよな。そう言うんだから。