にほんブログ村
転載開始==================================================================
民間宇宙船を公開 11年に旅客乗せ初飛行 英ヴァージン・グループ http://sankei.jp.msn.com/science/science/091208/scn0912081335003-n1.htm
2009.12.8 13:29

このニュースのトピックス:宇宙

7日、米カリフォルニア州モハーベ砂漠の施設で公開された民間宇宙船(AP=共同) 民間宇宙旅行の商業化を目指している英ヴァージン・グループは7日、旅客を乗せて宇宙空間を飛行する宇宙船「スペースシップ2」を米カリフォルニア州モハーベ砂漠で旅行予定者らに初公開した。2011年に宇宙の旅が実現する予定。

 スペースシップ2は全長約18メートル、両翼を含めた幅が約13メートルで、炭素繊維を使うなどして機体を軽量化。乗客6人、パイロット2人が搭乗する。

 母船につり下げられて離陸後、高度約15キロで分離されて宇宙空間まで上昇。乗客は着陸まで約2時間の旅の中で4~5分間の無重力状態を楽しめるという。

 旅行代金は事前訓練を含めて1人約20万ドル(約1790万円)で、300人超が予約。日本人では、ライブドアホールディングスの社長だった平松庚三さんや、外資系企業社員の稲波紀明さん(32)が申し込んでいる。(共同)
========================================================================転載終了
1.1 宇宙親子爆撃機、見参!
 報じられているのは英・ヴァージングループが2011年初飛行を目指して開発した民間宇宙船「スターシップ2」。公開されたのはアメリカはカリフォルニア州モハーベ砂漠と言うから、航空宇宙産業が発達した米国で製造しているものか、はたまた演出か、報道からは断じかねる。
 
 全長18m、全幅13m、炭素繊維を多用した軽量の機体で、乗客6人とパイロット二人を乗せ、母船に吊り下げられた状態で高度15kmまで上昇した後に、分離・上昇し、着陸までの2時間の間に4~5分間の無重力状態を体験できると言った諸元と、事前訓練込み1人約20万ドル(約1790万円)の旅行代金ながら、既に予約が300人も入っていると言うから、世の中、不況不景気と言いながらも、金のあるところにはあると言うことであろう。
 
 勿論、所得制限が30ドルでかかってしまうような北朝鮮は、「金のあるところ」ではないわけだが。
 
 それはさておき、大気圏内を高度15kmまでこの宇宙船「スターシップ2」を運ぶ母船もなかなか奇抜なデザインだ。普通の航空機を2機横並びにつなげた様な双胴機で、その主翼のど真ん中に宇宙船「スターシップ2」をぶら下げるから、ぶら下げた状態は「妙な形の三胴機」であり、「巨大化して化けて出てきたロッキードP-38ライトニング」と見えない事もない。
 尤も、私が真っ先に想起したのは、「ペロ8」こと「双胴の悪魔」ロッキードP-38戦闘機よりも、第2次大戦にドイツが何種類か作った「ミステル(宿り木)爆撃機」、通称「親子爆撃機」だ。
 爆装した無人の双発爆撃機の上に単発戦闘機をドッキングさせて離陸し、目的地に近づいたらドッキングを解除して無人の爆撃機を目標に突っ込ませると言うもので、「親子爆撃機」とは言い条、親機は大型の双発機ではなく、その双発機に背負われている小型の単発戦闘機の方である。現行の巡航ミサイルやUAVの先駆者と見る事も出来るが、「奇想天外兵器」の一種と言って良いだろう。
 とは言え、既存の双発爆撃機(Ju-88やHe111) と単発戦闘機(Fw190やMe109)の組合せであり、専用機ではないから、今回公開された史上初の民間宇宙船「スターシップ2」とその母機(名前は「マザーシップ2」だろうか)程の整ったデザインではない。
 
 この「スターシップ2」の様に「宇宙船」を地上発射ならぬ空中発射とする利点は、宇宙船の内臓燃料(それは普通ロケット燃料であろうから、大気圏外でも燃えるよう酸化剤込みの燃料である)を消費することなく、母機の燃料で一定の高度と速度を得る事であり、言い換えればある程度の位置エネルギーと運動エネルギーを「タダで」稼ぎ出せる事だ。
 そうは言っても地球の引力を振り切って宇宙に飛び出すには、第二宇宙速度こと秒速11km、地上の音速(0.34km/s)で言うと実に「マッハ32」の極超音速が必要である。これに対し母機がジェット機では稼げる速度は精々マッハ2。大した稼ぎにはならない。
 ましてや公開されたスターシップ2の母機は到底超音速を出せそうにない形状だから、「スターシップ2」分離時の速度はマッハは0.8と言うところだろう。
 たかだが高度15kmと速度0.8マッハでも有効であるのは、恐らくは「飛行時間2時間」で戻って来るし、「無重力状態は4から5分」しかないことから、地球の引力を振り切るどころか、人工衛星軌道に乗るために必要な第一宇宙速度=秒速8kmにも至らない飛翔であるからだろう。端的に言えば、懐かしきV2ミサイル以来の弾道飛翔だ。
 
 ところで、理系として物理を学んだ事のある者なら忘れてはいけないのだが、「無重力状態」は宇宙旅行をするから体験できるのではない。
 自由落下状態にあれば、「無重力状態」は体験できる。例えば、地上でエレベーターに乗っている際に吊り下げているワイヤが切れて自由落下を始めたら、(そうならないようにあれこれ安全装置が付いてるのだが、それらが全て作動しないと仮定して)、誰でも無重力状態を体験できる。地面に激突するまでの短い時間なので、無重力状態を満喫する暇がないだけだ。
 実際、弾道飛翔させて飛行機の中に無重力状態を作り出し、宇宙飛行士の訓練をやる事がある。国際宇宙ステーションや衛星軌道上のスペースシャトルなどで「無重力状態」が長く続くのは、衛星軌道上を周回する事で、「常に落下し続けている」状態にあるからだ。
 
 言い換えれば、宇宙飛行の醍醐味は、実は無重力状態には無い。
 航空機よりも遥かな高みに昇り、「地球の丸み」を実感する事。それこそが宇宙旅行の醍醐味ではなかろうか。
 そう、私が大金持ちならば、この民間初の宇宙旅行に参加したに違いないと思えるほどの。
 
 宇宙(そら)だ!男の行く所!!