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 此処最近の(と言っても2週間ほども無いのだが)普天間基地移設問題を追っていると、にわかには信じ難いことなのだが、オバマ大統領が来日し、第2回の日米首脳会談が開催されたのは11/13。未だ1月もたっていないのである。
 
 その一月の間にこの日米間の懸念事項がとんでもない事になり、年内決着は断念するに至った経緯は、幾つかの記事にまとめてきた。


 これらの記事を通じて一貫して訴えてきたのは、鳩山首相の無定見・無方針・無能振りであり、それに起因する閣内行動の不統一である。また、それらをひっくるめて「高い支持率」で甘やかしているマスコミと国民の見識を問うて来た。


1.普天間基地移転を巡る問題―捕捉―

 さて、最初に先回の記事「変身、変心、また変針」以降に知った経緯をまとめておこう。()番号は先回の続きである。

(16) 12/3 社民党の福島党首は無投票4選で党首の地位を維持した。
 一見普天間基地とは無関係に思えるニュースだが、報じられているところによると、普天間基地移設問題で福島党首が弱腰を見せた場合、強硬派=普天間基地県外・国外移設派の対立候補を擁立する動きがあり、これを抑えるためには普天間基地での強硬路線=県外・国外移転を福島党首としては主張する必要があったのだという。
 この報道が正しいならば、急に普天間基地移設が「党の根幹に関わる大問題」に化けた事も、連立政権離脱と言う脅しをかけてきた事も充分理解できる。
 と言うことは、社民党党首選挙のために、日米安保体制及び日米の信頼関係が危機に曝されているわけだ。
 中国や北朝鮮(それにロシアもだな)にしてみれば、笑いが止まらない状態だろう。
社民・福島党首が無投票4選へ 普天間強硬で党内対立回避 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091203/stt0912032147014-n1.htm

(17) 12/3 この日、鳩山首相は岡田外相と北沢防衛相に対し、「現行日米合意以外の選択肢を検討するよう指示」したそうである。
 と言う事は、
 ①これまで「現行日米合意以外の選択肢を検討する」指示は鳩山首相から出されておらず
 ②岡田外相の嘉手納統合案は岡田氏の独自検討であり
 ③日米首脳会議はおろかそれ以前の衆院選挙でも宣伝されていた「沖縄県民の想い」は全く具体的代替案として具現化して居なかったと言う事であり
 ④鳩山首相、岡田外相は共に各個で「自民党政権時代に現行日米合意に至った経緯」を調べるばかりであったという事になる。
 鳩山首相の「重く受け止める」も、民主党のマニュフェストも、所詮その程度の「重さ」であったことが露呈している。
普天間移設問題で首相「グアムも検討」 社民は歓迎 http://sankei.jp.msn.com/topics/politics/1433/plt1433-t.htm

(18) 12/3夜 自民党の石破氏は報道番組で以下のように述べた。
>社民党について「国のために連立政権から離脱すべきだ。
>日米合意の(沖縄県)名護市沿岸部以外のどこに移設先があるのか」と批判した。
 防衛相時代の石破氏には私も言いたい事があるが、上記の発言には賛意を示す。
「国のために社民党は連立離脱すべきだ」普天間問題で自民・石破氏 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091204/stt0912040025000-n1.htm

(19) 12/4 鳩山首相は普天間基地移設問題に付いて、次のように発言した。
 1> 「グアムに全部移設することが米国の抑止力ということを考えたときに妥当かは検討する必要がある」
 2> グアム移転案に関し、「グアム(の地元)は期待している」
 3> 「日米合意は重いが、辺野古しかないのか。
 4> 嘉手納(基地統合案)も含めて他の地域はないのか今、検討している。
 5> 社民党の(連立離脱)問題が出てきている中で検証に力を入れてやってもらいたいと(両大臣に)言った」
 6> 「当然のことながら辺野古は生きている」
 4>の「今、検討している」は、具体的には「昨日から、まじめに検討し始めた。」であるのは上記(18)の通りである。 
 1>、2>の発言からすると、どうやら鳩山首相は合衆国民主党党首ばかりでなく、合衆国大統領も兼任している心算らしい。なるほど、オバマ大統領に甘えるわけだ。
 3>は本当に重いのかもしれない。何しろ、外相・防衛相に日米合意以外の選択肢検討を依頼したのは、昨日だ。選挙中や日米首脳会談前に何をしていたかと言うと、前述の通り「経緯を調べる」のに忙しかったのだろう。2回に渡る日米首脳会談で、普天間基地移設が抽象論のみに終わったのも無理は無い。
 1>2>で合衆国大統領を兼任しながら6>の発言は不思議だ。社民党党首選挙も終わった事だし、「やっぱり現行日米合意どおり」への道を選ぶための布石か。
普天間移設問題で首相「グアムも検討」 社民は歓迎 http://sankei.jp.msn.com/topics/politics/1433/plt1433-t.htm 
 
(20) 12/4 日本側が普天間基地移設問題の年内決着を断念した事に対し、米国務省は
>「ノー・リアクション(反応なし)」という言葉を繰り返し、
>日本政府から正式に説明があるまで静観するとの姿勢を強調した。
と報じられている。
>「日本側の計画見直し作業を手助けするため協力していく」と語った。
とも報じられているから、「外交にLast Wordはない(交渉決裂も、次の交渉へのスタート)」の見本のようなものだ。
米国務省:普天間年内見送り「ノー・リアクション」http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-153752-storytopic-53.html


2.日米首脳会談は何だったのか

 さて、それではこの普天間基地移設問題のひとつの節目、先の日米首脳会談では、一体どんな合意がなされていたのか。そこはひとつのスタートポイントだろう。
 報じられているところでは、そのスタートポイントは、次のようであった。

日米首脳会談 共同会見の要旨http://www.asahi.com/politics/update/1114/TKY200911130445.html
 ■首相 普天間飛行場移設ではハイレベルのワーキンググループを設置し、できるだけ早い時期に解決すると申し上げた。日本政府として前政権の日米合意を重く受け止めている。ただ、選挙の時に、県外、国外(移設)と申し上げたことも事実。沖縄県民の期待感は強まっている。大変困難な問題で、時間がたてばより解決が難しくなる。

 ■大統領 作業部会は、在沖米軍再編に関する日米合意の履行に焦点を絞るものだ。作業を迅速に完了することを希望している。
 
 オバマ大統領相手に鳩山首相が「Trust Me.」と大見得切ったのもこのときである。
 
 翻って現状はどうであろうか。
 オバマ大統領が「日米合意の履行に焦点を絞り」「作業を迅速に完了する事を希望」した作業部会は、焦点を絞るどころか全く焦点の合わない状態に辛うじて「現行日米合意も未だ選択肢として生きている」状態に陥り、日本側で「年内決着は断念」され、その説明は未だアメリカ政府に対しては無い。オバマ大統領の期待は完全に裏切られた形だ。
 
 一方鳩山首相の発言を見ると、まず「ハイレベルのワーキンググループ」は全く機能しなくなった。現行日米合意の履行どころか、その代替案さえまともに無い状態である。ワーキングなどできる状態ではない。
 「できるだけ早い時期に解決する」どころか、一体何時解決するのか、検討もつかなくなった。
 ①選挙の時に、県外、国外(移設)と申し上げた
 ②沖縄県民の期待感は強まっている
 ③大変困難な問題で、時間がたてばより解決が難しくなる
 この3点では鳩山首相の日米共同会見当時の発言は正しかった。

 僅か一月足らず前の話である。
 
 オバマ大統領の期待は全て裏切られ、鳩山首相の発言は、肝心な部分が粉砕され、困難ばかりが増している。


3.安全保障なくして、連立政権は安泰か?

 そもそも、今の連立政権は欠陥政権であると言うのが私の持論だ。
 何しろ連立政権の共通公約は、安全保守策を避けて通るという「体たらく」だ。平和ボケの日本だから「異例」とは言われないが、孫子の昔から「兵は凶事」。安全保障策がまともに無い政府など、政府として失格と考えるのが「グローバルスタンダード」だ。
 
 その政府失格の「連立政権」が、何の因果か民主党が大勝したために揃って政権与党になりおおせた。
 地位が人を作る事だって世の中にはあるのだが、鳩山首相は首相として失格。岡田外相は外相として失格。「未だまとも」に見える北沢防衛相も合格点とは言えまい。況や社民党、国民新党の連立与党に至っては論外だ。今の政権与党の地位は、民主党にも社民党にも国民新党にも、教育効果を発揮していない。
 
 だから、国の安全保障体制に関わるような問題が、社民党の党首選挙などと言う、コップの中の嵐にもならない些事で解決を邪魔され、引き延ばされている。これ即ち我が国の安全が脅かされていると言う事だ。
 
 社民党の党首選挙如きのために。
 
 「国敗れて山河あり」と言うが、安全保障が敗れたら、連立政権なんて吹っ飛ぶのである。
 それは鳩山首相や民主党にとっては自業自得だから、情状酌量の余地は無いが、巻き込まれるこちとらは適わんのである。
 
4.如何にするや、鳩山首相

 だが、日本の安全を脅かしているのは、社民党の性とばかりは言えない。
 所詮はマイナー政党。四の五の抜かすならば切ってしまえば良いだけの筈が、切るどころか阿っているのは、民主党と鳩山首相の性である。

 特に、鳩山首相であろう。
 
 何度も書いているが、彼は日本国首相である。日本の元首である。
 
 普天間基地移設問題だって、先頭に立って解決すべき立場にあり、責任がある。
 であると言うのに昨日いっていることと今日言っている事が違い、合衆国大統領を全くのペテンにかけ、「友愛」だの「思い」だの「重く受け止め」だののキャッチコピーばかりバラまいているだけでは、事態は悪化するばかりだ。
 
 先の国会で、鳩山首相は「財政悪化は自公前政権のせいだ。」と責任転嫁していた(*1)が、普天間基地移設問題の深刻化は、何処からどう見ても鳩山首相・民主党・現連立政権の性であり、自公前政権の性にも、リーマンショックの性にも、出来ないのである。
 
 如何にするや、鳩山首相。
 
 如何に、国民。


<注釈>
(*1) 彼は、民主党が長い事参議院を牛耳る有力な野党第一党であったことを、都合よく忘れている。