普天間基地移設問題を巡る鳩山首相と現政権の対応は、混乱と言うより錯乱に近い。
その根本原因は、普天間基地移設問題を先頭に立って解決すべきトップリーダー・鳩山首相の無定見・無方針・無能にある。
1.普天間基地移設を巡るここ十日程の動き
ここ十日ほどの動きをまとめると、以下のようになる。(「泰山鳴動鼠一匹」に書いた経緯に追記)
(1) 11/25 社民党は緊急提言を打ち出し、普天間基地の即時返還と県外国外への移設を求めた。つまり現行日米合意を否定しろと、民主党政権に迫った。
そんな即時返還にアメリカが応じるかと言うのは、社民党の知った事ではないらしい。つまり社民党は政権与党ながら、政府の外交交渉には、全く責任を持たないと自ら宣言した。
社民が緊急提言「普天間飛行場の即時閉鎖・返還」「硫黄島やグアムなど県外・国外への移設を」 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091125/plc0911251432007-n1.htm 2009.11.25 14:31
そんな即時返還にアメリカが応じるかと言うのは、社民党の知った事ではないらしい。つまり社民党は政権与党ながら、政府の外交交渉には、全く責任を持たないと自ら宣言した。
社民が緊急提言「普天間飛行場の即時閉鎖・返還」「硫黄島やグアムなど県外・国外への移設を」 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091125/plc0911251432007-n1.htm 2009.11.25 14:31
(2) 11/27早朝、鳩山首相と仲囲真沖縄県知事は秘密裏に会談し、普天間基地移設問題について話し合った。
(3) 11/27 社国両党首は会談し、「政府と両党政策責任者で構成する米軍普天間飛行場移設問題に関する協議会を設置するよう首相官邸サイドに求めることで合意した。」と発表。
亀井国民新党党首は「県外・国外への移転が基本だと考えている」と発言し、先の社民党緊急提言に同調している。国民新党もまた政権与党ながら、政府の外交交渉に全く責任を持たないと宣言した事になる。
社民、国民新が普天間見直しで連携 「県外・国外移転が基本」http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091127/plc0911271318011-n1.htm
亀井国民新党党首は「県外・国外への移転が基本だと考えている」と発言し、先の社民党緊急提言に同調している。国民新党もまた政権与党ながら、政府の外交交渉に全く責任を持たないと宣言した事になる。
社民、国民新が普天間見直しで連携 「県外・国外移転が基本」http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091127/plc0911271318011-n1.htm
(4) 11/28 前日に沖縄県知事と鳩山首相が秘密会談を実施したとの報道が流れた。11/30に両者の公式会談が行われる事は既知であり、その下調整に普天間基地問題を話し合ったのだろうと言う、極めて正確な報道だが、首相周辺は秘密会談の存在を否定した。
沖縄県知事と秘密会談か 首相サイドは否定 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091128/plc0911281935008-n1.htm
沖縄県知事と秘密会談か 首相サイドは否定 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091128/plc0911281935008-n1.htm
(5) 11/29夜、記者会見した鳩山首相本人は、11/27に沖縄県知事と秘密会談したことを認め、普天間基地を中心に話し合った事を認めた。
この時点で、秘密会談は秘密でなくなった訳だ。
鳩山首相が沖縄知事との秘密会談認める 普天間問題 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091129/plc0911292213014-n1.htm
この時点で、秘密会談は秘密でなくなった訳だ。
鳩山首相が沖縄知事との秘密会談認める 普天間問題 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091129/plc0911292213014-n1.htm
(6) 11/30AM 鳩山首相と仲井真沖縄県知事の公式会談が行われ、この席で仲井真知事は「「県外、国外移設への要求が高まっている」と、県民感情を説明した上で、政府が普天間飛行場の早期の危険性除を求めた。」と報じられている。これに対し鳩山首相は結論を出す時期を明言しなかったが、「年内決着も視野」と報じられているから、来年1月の市長選挙を待つ構えではなくなったらしい。
首相が沖縄県知事と普天間問題で会談 年内決着も視野に検討 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091130/plc0911301151009-n1.htm
首相が沖縄県知事と普天間問題で会談 年内決着も視野に検討 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091130/plc0911301151009-n1.htm
(7) 11/30昼 福島社民党党首は都内で記者団に対し、普天間移設問題を「拙速で決めるなと強く言いたい。」と強調した。
「拙速に決めるな。」と言えば聞こえは良いが、それは「早期には解決するな。」と同義語であり、時間がたつほど解決が難しくなるとされる現状では「解決するな。」と言うのとほぼ等しい。
日米安保条約の弱体化をマニュフェストに掲げる社民党としては、「国民との約束」を果たそうとしたのだろう。
社民・福島党首、普天間移設 「拙速に決めるな」 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091130/plc0911301312012-n1.htm
「拙速に決めるな。」と言えば聞こえは良いが、それは「早期には解決するな。」と同義語であり、時間がたつほど解決が難しくなるとされる現状では「解決するな。」と言うのとほぼ等しい。
日米安保条約の弱体化をマニュフェストに掲げる社民党としては、「国民との約束」を果たそうとしたのだろう。
社民・福島党首、普天間移設 「拙速に決めるな」 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091130/plc0911301312012-n1.htm
(8) 12/1 現行日米合意に沿って普天間移設を年内決着する方向で政府が動き出したと報じられている。
つまり、社民―国民新党の提言は門前払いを喰った形だ。
普天間移設「年内決着」へかじ 現行計画の沖合移動案軸に http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091201/plc0912010055001-n1.htm
つまり、社民―国民新党の提言は門前払いを喰った形だ。
普天間移設「年内決着」へかじ 現行計画の沖合移動案軸に http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091201/plc0912010055001-n1.htm
此処までが「泰山鳴動鼠一匹」までにまとめた経緯だ。
その後・・・
その後・・・
(9) 12/1 上記(8)に対し、社国両党は早速「態度硬化」を表明。元々両党の緊急提言を門前払い食らわしたんだから、それぐらい予定の内だろうが・・・
多難な普天間「年内決着」 首相の調整は? 社国両党は態度硬化http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091201/plc0912010057002-n1.htm
多難な普天間「年内決着」 首相の調整は? 社国両党は態度硬化http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091201/plc0912010057002-n1.htm
(10) 12/1一方で北沢防衛相はこの週末にも日米閣僚級の作業部会を開催、年内決着の方向へ作業を開始した。
北沢防衛相「今週末にも日米閣僚級のWG開催の可能性」 普天間飛行場移設問題で http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091201/plc0912011032007-n1.htm
北沢防衛相「今週末にも日米閣僚級のWG開催の可能性」 普天間飛行場移設問題で http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091201/plc0912011032007-n1.htm
(11) 12/1夕 他方、岡田外相は今月4日から沖縄訪問を表明。現地の声を率直に聞くのだそうだが、アフガニスタンを電撃秘密現地視察しながらイージス艦2,3隻分の大金をどぶに捨てる事しかできなかった外相が、今更沖縄に行って何が出来るものかと思う。
それでも、嘉手納基地統合案への未練を見せつつ「中身も時期も最終的に決めるのは鳩山由紀夫首相だ」と首相の決意を立てているのだから、同じ閣僚でも社国両党首よりは数等マシだろう。
普天間移設「決定は首相」 岡田外相が4日から沖縄再訪問 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091201/plc0912011809010-n1.htm
それでも、嘉手納基地統合案への未練を見せつつ「中身も時期も最終的に決めるのは鳩山由紀夫首相だ」と首相の決意を立てているのだから、同じ閣僚でも社国両党首よりは数等マシだろう。
普天間移設「決定は首相」 岡田外相が4日から沖縄再訪問 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091201/plc0912011809010-n1.htm
(12) 12/2 社国両党主並の「マシでない」閣僚が平野官房長官。この日、「3党の連立を組んでおり、そこで議論をせずに年内に(結論を出す)ということにはならない」と記者会見で述べた。
これは、普天間基地移設問題の早期解決で合意したはずの、先の日米首脳会談結果を真っ向から否定するものだ。ならば先の首脳会談後、遅くとも翌日鳩山首相が「現行日米合意を前提にせず」と言い出した時に表明すべき事だろう。
それを今頃言い出すのは、社国両党に阿っているか、そもそも日米安保が存在する事自体が気に入らないかであり、少なくとも前者の理由なら民主党を離党すべき理由であろう。
普天間決着、来年に持ち越しも 平野官房長官 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091202/plc0912021857007-n1.htm
これは、普天間基地移設問題の早期解決で合意したはずの、先の日米首脳会談結果を真っ向から否定するものだ。ならば先の首脳会談後、遅くとも翌日鳩山首相が「現行日米合意を前提にせず」と言い出した時に表明すべき事だろう。
それを今頃言い出すのは、社国両党に阿っているか、そもそも日米安保が存在する事自体が気に入らないかであり、少なくとも前者の理由なら民主党を離党すべき理由であろう。
普天間決着、来年に持ち越しも 平野官房長官 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091202/plc0912021857007-n1.htm
(13) 12/2 所が鳩山首相はこの「マシでない」閣僚の方に肩入れしてしまった・・・らしい。
「らしい」と自信がないのは、鳩山首相の発言が支離滅裂だからである。
いや、今まででも充分支離滅裂なのだが、今回は一回の発言の中で矛盾を起こしている。
1>「連立政権は大事にしていきたいとの思いだ。
2>社民党と十分に打ち合わせをしている段階ではない」
3>「できるだけ速やかに(結論を)出したいと常に言っている」
4>年明けになった場合の日米関係への影響について「どんな状況でも影響ができるだけないよう努力したい」
>平野博文官房長官は記者会見で「与党3党で議論せずに年内(決着)とはならない」と指摘。
>政府高官も「まずは連立政権が続くことが大事」と述べた。
「らしい」と自信がないのは、鳩山首相の発言が支離滅裂だからである。
いや、今まででも充分支離滅裂なのだが、今回は一回の発言の中で矛盾を起こしている。
1>「連立政権は大事にしていきたいとの思いだ。
2>社民党と十分に打ち合わせをしている段階ではない」
3>「できるだけ速やかに(結論を)出したいと常に言っている」
4>年明けになった場合の日米関係への影響について「どんな状況でも影響ができるだけないよう努力したい」
>平野博文官房長官は記者会見で「与党3党で議論せずに年内(決着)とはならない」と指摘。
>政府高官も「まずは連立政権が続くことが大事」と述べた。
例によって適当に切った。番号を振ったのは鳩山首相自身の言葉。振っていないのは鳩山首相以外の発言だ。
一見して判るとおり、上記1>と2>は矛盾する。「連立政権を大事にするが、社民党と打合せをする段階ではない。」と言うのは「打ち合わせはしないが連立政権には留まってくれ。」と言う社民党に対する泣き落としと解釈すればよいのだろうか。
そうかもしれないし、ただの言い間違いかも知れない。そうであっても上記3>は「来年の市長選挙もあれば知事選挙もある。」と言っていたのとは矛盾する。尤もその言は、2回の日米首脳会談を経て漸くなった日米共同宣言にも矛盾するのだから、大した問題ではないが。
4>に至っては、ただ努力目標と希望的観測を述べるだけ。アメリカ民主党の党首も兼任した気になっているのか、鳩山首相。
さらに言えば、上記1>~4>の鳩山首相発言を通読しても、報道タイトルにあるような「越年強まる」と言う結論は出て来ない。精々「首相、越年を容認」だろう。
その結論を出しているのは、上記の平野官房長官と政府高官の発言。鳩山首相以外の発言が無いと、この記者会見は結論が不明確であった事になる。
普天間問題、越年強まる 首相「打ち合わせ不十分」 http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120201000626.html
一見して判るとおり、上記1>と2>は矛盾する。「連立政権を大事にするが、社民党と打合せをする段階ではない。」と言うのは「打ち合わせはしないが連立政権には留まってくれ。」と言う社民党に対する泣き落としと解釈すればよいのだろうか。
そうかもしれないし、ただの言い間違いかも知れない。そうであっても上記3>は「来年の市長選挙もあれば知事選挙もある。」と言っていたのとは矛盾する。尤もその言は、2回の日米首脳会談を経て漸くなった日米共同宣言にも矛盾するのだから、大した問題ではないが。
4>に至っては、ただ努力目標と希望的観測を述べるだけ。アメリカ民主党の党首も兼任した気になっているのか、鳩山首相。
さらに言えば、上記1>~4>の鳩山首相発言を通読しても、報道タイトルにあるような「越年強まる」と言う結論は出て来ない。精々「首相、越年を容認」だろう。
その結論を出しているのは、上記の平野官房長官と政府高官の発言。鳩山首相以外の発言が無いと、この記者会見は結論が不明確であった事になる。
普天間問題、越年強まる 首相「打ち合わせ不十分」 http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120201000626.html
(14) 12/3 首相の変心あらたかと言う事か、北沢防衛相も「解決が年を越しても、日米間が不穏な空気になることはない」と発言。
止めはやはり小沢一郎氏。
>社民党幹部は十一月三十日、小沢氏に直談判。
>小沢氏は「何でもおれが決めていると思われるのは嫌だ」と言いながらも、社民党の主張に一定の理解を示したという。
つまり社民党としては、現行日米合意に沿った早期解決を図りかねない鳩山首相に見切りをつけ、その大ボス・小沢一郎氏に直談判してお墨付きを得てしまったわけだ。
越年論 急速に拡大 普天間問題 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009120390070849.html
止めはやはり小沢一郎氏。
>社民党幹部は十一月三十日、小沢氏に直談判。
>小沢氏は「何でもおれが決めていると思われるのは嫌だ」と言いながらも、社民党の主張に一定の理解を示したという。
つまり社民党としては、現行日米合意に沿った早期解決を図りかねない鳩山首相に見切りをつけ、その大ボス・小沢一郎氏に直談判してお墨付きを得てしまったわけだ。
越年論 急速に拡大 普天間問題 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009120390070849.html
(15) 12/3 福島社民党党首は、現行日米合意履行ならば連立政権離脱の可能性もあると明言した。
現行日米合意のままの決着は「党の根幹に関わる」のだそうだ。
党の根幹に関わるような重大事ならば、連立政権に参加する時に明らかにすべきだし、外交の基本は前政権の合意条約はそのまま受け継ぐ事にあるのだから、それを覆す主張は政権発足時なり、オバマ大統領来日時なりに明示すべき筈なのだが、そんな常識的発想は社民党には無い。
無理も無い。鳩山首相からしてないのだから。
この発言に対する鳩山首相の発言は以下のように報じられている。
1>「社民党は今までも辺野古移設に大変厳しい思いを持っていたから、重く受け止めねばならない」
2>首相は一方で、「外交交渉で相手がある話だ。複雑な感情がからみ合う中で、日米でいったん合意したことも重く受け止めなければならない」
で、福島社民党首の発言も、現行日米合意も、どっちも「重く受け止める」ばかりで、やっぱり結論を出していない。或いは結論を引っ込めた事が明らかになったのみ。
福島社民党首、名護移設なら「重大な決意」 連立離脱の可能性に言及 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091203/plc0912031001003-n1.htm
現行日米合意のままの決着は「党の根幹に関わる」のだそうだ。
党の根幹に関わるような重大事ならば、連立政権に参加する時に明らかにすべきだし、外交の基本は前政権の合意条約はそのまま受け継ぐ事にあるのだから、それを覆す主張は政権発足時なり、オバマ大統領来日時なりに明示すべき筈なのだが、そんな常識的発想は社民党には無い。
無理も無い。鳩山首相からしてないのだから。
この発言に対する鳩山首相の発言は以下のように報じられている。
1>「社民党は今までも辺野古移設に大変厳しい思いを持っていたから、重く受け止めねばならない」
2>首相は一方で、「外交交渉で相手がある話だ。複雑な感情がからみ合う中で、日米でいったん合意したことも重く受け止めなければならない」
で、福島社民党首の発言も、現行日米合意も、どっちも「重く受け止める」ばかりで、やっぱり結論を出していない。或いは結論を引っ込めた事が明らかになったのみ。
福島社民党首、名護移設なら「重大な決意」 連立離脱の可能性に言及 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091203/plc0912031001003-n1.htm