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災害救援に自衛艦活用 CEOサミットで首相 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091114/plc0911142200011-n1.htm
2009.11.14 21:49

このニュースのトピックス:自衛隊

CEOサミットクロージングセッションで演説する鳩山由紀夫首相(AP) 鳩山由紀夫首相は14日午後(日本時間同)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)最高経営責任者(CEO)サミットで講演し、「東アジア共同体」創設に向けた環境整備の一環として、海外で起きた災害救援などに自衛艦を活用する「友愛の船」構想を明らかにした。

 首相は「自衛艦に自衛隊員だけでなく、非政府組織(NGO)やアジアの多くの人たちが協力して乗り込み、紛争や人の命が危ないと聞けば、手術など医療で協力する。災害から救うためにも協力する」と説明。海賊対策にも有効だと述べた。

 東アジア共同体に関しては「今までの繁栄のための協力だけでなく、命のため、緑作りのため、『友愛の海』作りのため、新しい協力関係をつくり上げることが求められる」と強調した。      (共同)
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 報じられているのは、またぞろ鳩山首相の「パフォーマンス」と言って良いだろう。国会審議はろくに審議もせずに強行採決しなければ年度末の執行に間に合わないと言っているのに、国際会議や外遊に飛び廻る暇はあるらしいというのは不思議だが、今度はシンガポールでCEOサミットなるものに出席し、そのクロージングセッションで「東アジア共同体」創設に向けた環境整備の一環としてブチ上げたのが、「友愛ボート(*1)」構想なるものである。

<注釈>
(*1) 名前からして力が抜けるが、これは鳩山首相の「感性」=趣味であるから、まずは置こう。


1.「友愛ボート」構想

 報じられている鳩山首相の言によると、「友愛ボート」構想とは以下の通りだそうだ。
1> 「命を守るための協力として友愛ボート、フラタニティーボート構想を持っている。
2> 日本の自衛艦にNGO(非政府組織)の人やアジアの多くの人が協力して乗り込んで、
3> あちらに紛争があったぞ、人の命が危ないぞといえば、その船が行って医療の手術(*1)などの協力を行う。
4> あるいは大規模な災害を救うため、医療の援助(*2)をするなど
5> 柔軟に活用できる船をつくる」

 引用した発言は便宜的に切って番号をつけてある。
 念のために整理すると、この鳩山首相の「友愛ボート」なるものは以下のようになる。
① 海上自衛隊の自衛艦にNGOや外国人「アジアの多くの人」を乗せる。(上記 1>)
② その自衛艦を紛争地域(上記3>)や災害地域(上記4>)に派遣する。
③ 派遣先では「医療の手術」(上記3>)や「医療の援助」(上記4>)を行う。
(④) 「友愛ボート」に選定された自衛艦は、「友愛ボート」任務に専念させる(上記5>)
(⑤) 「友愛ボート」は自衛艦=軍艦であり(上記2>)、紛争地域に赴く(上記3>)が、その任務中の戦闘行為は想定していない。

 上記の「整理」の内、④と⑤に()を付けたのは、鳩山首相の発言には直接でてこない、私なりの解釈もしくは推論だからである。
 
 (④)は、「柔軟に活用できる船をつくる」とまで言っているのだから、いつでも「友愛ボート」任務につける船を確保しておくと言う事であると解釈し、紛争ぐらいなら前もって準備も出来るだろうが、「大規模な災害」は何時どこで起こるか予測も付かないのだから、その船は常に持っていなければならないだろうと推定し、そこから演繹した結果である。
 言うまでもないが海上自衛隊の艦艇は別に平時だからって遊んでいるわけではない。平時の軍隊は訓練をし、技量を高め、戦時に備える事で抑止力となるのが仕事であるから、「友愛ボート」なんかに指定されなくてもやる事は沢山ある(*3)。その自衛艦が「友愛ボート」に指定されると言う事は、少なくとも遠洋航海を含む演習が大いに制限されるし、乗せて行くべきNGOや外国人が何処に集結するかを考えたら、相応の空港の近くに貼りつきになるはずで、そうなると「友愛ボート」任務に専念せざるを得ないだろうと言う、推測である。
 
 (⑤)は「常識的判断」と言うべきだろうか。
 紛争地域に軍艦が乗り込む以上、その紛争に巻き込まれる可能性は多分にあると考えるのが常識だろう。その軍艦の抑止力を以って、紛争に巻き込まれずに済む可能性は勿論あるし、丸腰の民間船で「NGOの人やアジアの多くの人」で送り届けるよりは遥かに安全であろうと言う点には同意するが、それでもなお紛争に巻き込まれ、攻撃を受ける可能性は当然考慮しなければならない。
 その自衛艦が攻撃を受けた場合、乗り組んでいる「NGOの人やアジアの多くの人」は兎も角、海上自衛隊が反撃もせずにむざむざ殺されるなんて事を期待すべきでないと言うのもこれまた常識的判断だ。交戦規定や憲法や集団的自衛権やその他諸々の制約があるのは確かだが、それらすら生存本能・正当防衛の前には吹き飛ぶ可能性も相当にある。その場合、この紛争地域の紛争に、ひとり「友愛ボート」任務の自衛艦ばかりでなく、日本と言う国そのものが巻き込まれる事を意味するのだが、とてもじゃないが社民党まで擁する民主党を中心とした現政権も鳩山首相も、それだけの覚悟を固めて「友愛ボート」を宣言したとは信じられない。これまた「常識的判断」だ。
 故に、鳩山首相は「友愛ボートが紛争地域に於いて戦闘行為を行う可能性と言うものを全く度外視していると」考える方が、「友愛ボートとして派遣された自衛艦が整備どころかかけらも無い交戦規定や「憲法9条」を守って紛争当事者の攻撃を甘んじて受け、沈没する事も辞さない事を期待している。」あるいは「友愛ボートとして派遣された自衛艦が紛争当事者に対し反撃し、日本がその紛争に参戦する事を容認している。」と考えるよりは合理的であろうと言う「常識的判断」だ。

 自信はない。

 紛争地域に軍艦が赴くのに、戦闘行為を度外視するなんてのは私の常識外である。私程度で考え得る理由としては、以下の通りである。
(1) 当該地域の紛争は陸上に限られ、海上の「友愛ボート」護衛艦には紛争の火の粉はかからない。
(2) 護衛艦は「友愛ボート」として派遣されているのだから、これを攻撃する紛争当事者などあり得ない。
(3) 「友愛ボート」護衛艦には他の交戦を許された強力な艦艇が護衛に付くので、紛争の火の粉は護衛官にはかからない。

 (1)は紛争当事者がろくに海上兵力も航空兵力も持たない状態ならそうなるだろう。そういう紛争も勿論無いではないが、そういう紛争ばかりではないのは、余りに明らかだ。鳩山首相は「友愛ボート」を派遣する紛争を仕分けするつもりなのかもしれないが、その仕分けには相応に情報が、時間が必要であり、とても「柔軟に使える」とは思えない。
 (2)は・・・論外だろう。「丸腰のものは討たれない。」「憲法9条で国を守れ。」と言う空念仏と全く変わる所がない。こう信じているのならば、恐るべき事だが鳩山首相は、日本の陸海空三自衛隊の最高指揮官はJos某の同類と言う事である。いかにもありそうな事だけに、なおさら恐ろしい。
 (3)は恐らくは米海軍による強力な護衛を前提としての事だろう。これはこれで現実的な解釈かも知れないが、米海軍が常に強力な護衛を派遣できるとは限らないし、その護衛を潜り抜けての攻撃だってありうる。第一、強力な護衛に守られているのならば、何も護衛艦=軍艦でNGOやら外国人を運ぶ意義は半減する。それに、少なくとも米海軍なりどこかの海軍なりの強力な護衛が集結するまで「友愛ボート」は紛争地域に近づけず、これまた「柔軟」には程遠い。
 
 一番ありそうなのは・・・やはり(2)「友愛ボートは攻撃されない」信仰だろうか。
 「友愛ボートとして派遣された自衛艦が紛争当事者に対し反撃し、日本がその紛争に参戦する事を容認している。」のと、どっちが恐ろしいだろう。


<注釈>
(*1) 手術は普通は医療目的で行うものだが・・・美容整形手術や、改造手術は別か。
(*2) 「医療の手術」と「医療の援助」は何か違うのだろうか。
(*3)無論、燃料代=防衛費の一部が許す限りではあるが。