にほんブログ村
帝国海軍のパラダイムシフト1 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30703565.html
帝国海軍のパラダイムシフト2 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30703595.html
帝国海軍のパラダイムシフト3 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30703619.html
帝国海軍のパラダイムシフト1 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30703565.html
帝国海軍のパラダイムシフト2 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30703595.html
帝国海軍のパラダイムシフト3 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/30703619.html
4.パラダイムを突き詰める―暫減邀撃戦と18インチ砲戦艦・大和級
帝國海軍が建てた作戦の一つが「暫減邀撃戦」である。早い話が、日本海海戦の拡大太平洋版だ。
バルチック艦隊を迎撃したように、最後の艦隊決戦に勝利する事を目的とし、今回の米海軍は初期兵力で我が方を凌駕しているから、その分を決戦前に減らすべく、前衛の水雷戦隊=巡洋艦・駆逐艦が夜襲をかける。巡洋艦や駆逐艦の主砲では、戦艦に対しては豆鉄砲だ。遠目が聞く昼間は戦艦の主砲の射程には近づけない。だが夜なら、レーダーが実用化される以前の夜は、水雷戦隊が戦艦に肉薄できるチャンスだ。水雷戦隊の主砲は豆鉄砲だが、魚雷は違う。当たれば喫水線下に大穴が開く。戦艦といえども無事では済まない。夜襲で肉薄すれば、砲に対し格段に速度が遅く、射程も短い魚雷でも発射・命中の機会があり得る。
後に酸素魚雷が開発されて長射程・高速の雷撃が可能になったり、航空機の役割が偵察のみならず航空雷撃まで拡大されたりはあっても、「暫減邀撃戦」のコンセプトは変わらなかった。
勿論暫減で数を減らした後の艦隊決戦に勝利しなければ、この作戦は成立しない。帝國海軍はそれを、此処の艦艇の戦闘能力向上によって実現しようとした。艦艇、特に数ががっちり決まっていて海軍休日中は新造艦が出来ない戦艦=主力艦は、缶の重油専焼化で高速化を図り、砲の大迎角化で射程を延ばし、舷側にはバルジをつけて防御力を向上した。新造艦・代替艦が建造できる巡洋艦・駆逐艦は攻撃力を重視し、水雷艇に駆逐艦並みの装備を要求した結果、荒天で転覆してしまうと言う「友鶴事件」なんてのも起きている。水雷戦隊も戦艦群ももう訓練に励んだのは、軍歌「月月火水木金金」に歌われているとおりだ。
米海軍は、パナマ運河を通過しようとする以上、18インチ砲以上の戦艦は保有し難いであろうと予測し、海軍休日が終わると同時に史上唯一の18インチ砲戦艦・大和級を計画したのも、この「暫減邀撃戦」作戦による。最後の艦隊決戦で、米海軍には無いであろう18インチ砲を以って優位に立とうと考えたわけだ。
つまり、18インチ砲戦艦・大和級並びにその作戦である「暫減邀撃戦」は、従来のパラダイム「主力艦は戦艦である。」を突き詰めていった結果である
バルチック艦隊を迎撃したように、最後の艦隊決戦に勝利する事を目的とし、今回の米海軍は初期兵力で我が方を凌駕しているから、その分を決戦前に減らすべく、前衛の水雷戦隊=巡洋艦・駆逐艦が夜襲をかける。巡洋艦や駆逐艦の主砲では、戦艦に対しては豆鉄砲だ。遠目が聞く昼間は戦艦の主砲の射程には近づけない。だが夜なら、レーダーが実用化される以前の夜は、水雷戦隊が戦艦に肉薄できるチャンスだ。水雷戦隊の主砲は豆鉄砲だが、魚雷は違う。当たれば喫水線下に大穴が開く。戦艦といえども無事では済まない。夜襲で肉薄すれば、砲に対し格段に速度が遅く、射程も短い魚雷でも発射・命中の機会があり得る。
後に酸素魚雷が開発されて長射程・高速の雷撃が可能になったり、航空機の役割が偵察のみならず航空雷撃まで拡大されたりはあっても、「暫減邀撃戦」のコンセプトは変わらなかった。
勿論暫減で数を減らした後の艦隊決戦に勝利しなければ、この作戦は成立しない。帝國海軍はそれを、此処の艦艇の戦闘能力向上によって実現しようとした。艦艇、特に数ががっちり決まっていて海軍休日中は新造艦が出来ない戦艦=主力艦は、缶の重油専焼化で高速化を図り、砲の大迎角化で射程を延ばし、舷側にはバルジをつけて防御力を向上した。新造艦・代替艦が建造できる巡洋艦・駆逐艦は攻撃力を重視し、水雷艇に駆逐艦並みの装備を要求した結果、荒天で転覆してしまうと言う「友鶴事件」なんてのも起きている。水雷戦隊も戦艦群ももう訓練に励んだのは、軍歌「月月火水木金金」に歌われているとおりだ。
米海軍は、パナマ運河を通過しようとする以上、18インチ砲以上の戦艦は保有し難いであろうと予測し、海軍休日が終わると同時に史上唯一の18インチ砲戦艦・大和級を計画したのも、この「暫減邀撃戦」作戦による。最後の艦隊決戦で、米海軍には無いであろう18インチ砲を以って優位に立とうと考えたわけだ。
つまり、18インチ砲戦艦・大和級並びにその作戦である「暫減邀撃戦」は、従来のパラダイム「主力艦は戦艦である。」を突き詰めていった結果である
5.新たなパラダイム―真珠湾攻撃―
暫減邀撃戦並びに大和級戦艦は、従来のパラダイムを突き詰めた結果だけにオーソドックスであり、正統派であり、正攻法である。海軍の兵科で言えば、砲術科の夢であり、水雷科の夢でもある。砲術科と水雷科は、海軍の中でも人気の高いところであり、人気が高いと言う事は、組織としても充実していたと言う事だ。
だが、その正統派である暫減邀撃戦だけで日本が大東亜戦争=日米戦争に突入しなかったのは、それだけ帝國海軍の苦悩=「暫減邀撃戦で果たして勝てるか」が深かったと言う事であり、帝國海軍に新たなパラダイムを受け入れるだけの柔軟性があったと言う事だろう。
新たなパラダイムの胎動は、主流である砲術科でも水雷科でもなく、航空科に起きていた。「法則4. 新しいパラダイムは部外者から始まる」の通りである。
帝國海軍は、決して航空機・航空戦力に疎かったとは言えないだろう。世界で初めて空母として進水したのは、日本の鳳翔である。
「空母として進水した」と言うのが実は味噌で、巡洋艦等から改造された空母はそれ以前にあり、例えばアメリカ最初の空母CV-1ラングレイは石炭運搬船から改造されている。空母としての建造開始はイギリスのハーミスの方が早いのだが、進水・竣工は鳳翔の方が早いので、「世界で初めて空母として進水した」のは間違いなく鳳翔である。
航空機の技術的発達に伴い、「暫減邀撃戦」の一環として水雷戦隊に依る夜襲と共に航空雷撃も考えれたから、双発で長距離を飛行した上雷撃できる、陸上攻撃機・略称「陸攻」が開発され、96式陸攻、1式陸攻が配備された。特に後者は長大な航続距離を誇り、なおかつ両者とも双発機にも拘らず艦艇に対する航空雷撃と言う運動性能を要求される任務を遂行した(※1)。これは、搭乗員たちの技量もさることながら、当時の日本の航空機設計技術が世界トップレベルにあった証拠であろう。
新たなパラダイムの胎動は、主流である砲術科でも水雷科でもなく、航空科に起きていた。「法則4. 新しいパラダイムは部外者から始まる」の通りである。
帝國海軍は、決して航空機・航空戦力に疎かったとは言えないだろう。世界で初めて空母として進水したのは、日本の鳳翔である。
「空母として進水した」と言うのが実は味噌で、巡洋艦等から改造された空母はそれ以前にあり、例えばアメリカ最初の空母CV-1ラングレイは石炭運搬船から改造されている。空母としての建造開始はイギリスのハーミスの方が早いのだが、進水・竣工は鳳翔の方が早いので、「世界で初めて空母として進水した」のは間違いなく鳳翔である。
航空機の技術的発達に伴い、「暫減邀撃戦」の一環として水雷戦隊に依る夜襲と共に航空雷撃も考えれたから、双発で長距離を飛行した上雷撃できる、陸上攻撃機・略称「陸攻」が開発され、96式陸攻、1式陸攻が配備された。特に後者は長大な航続距離を誇り、なおかつ両者とも双発機にも拘らず艦艇に対する航空雷撃と言う運動性能を要求される任務を遂行した(※1)。これは、搭乗員たちの技量もさることながら、当時の日本の航空機設計技術が世界トップレベルにあった証拠であろう。
だが、その世界トップレベルの航空機設計技術と、優秀な(恐らくは当時世界最高の)搭乗員を以ってしても、「空母機動部隊による対艦攻撃」を決断する事は容易な事ではない。「法則5. パラダイムシフターには勇気が必要である」の通りである。何しろそんな事、実現した者は居ない。
1939年には第2次大戦が勃発し、欧州では戦争が始まったが、英独の航空機は輸送艦等には一定の戦果を挙げるものの、主力艦=戦艦に対する戦果と言うとイタリア艦隊に対する英海軍空母による奇襲、タラント夜襲ぐらいしか見るべきものが無い。
タラント夜襲は1940年11月だから、真珠湾攻撃の約1年前だ。このとき英空母イラストリアスを飛び立った21機の雷撃機(複葉羽布張りの古式ゆかしいスォードフィッシュ雷撃機(※2))はタラントのイタリア艦隊を奇襲する事に成功し、戦艦3隻のうち1隻「コンテ・ディ・カヴール」を沈没着底させ、他の2隻を大破させた。魚雷一発の命中で沈没・着底してしまった「コンテ・ディ・カヴール」には、構造上組織上の大問題がありそうで、「流石はイタリア海軍」と言うところだが、帝國海軍航空科としては、大いに勇気付けられた事だろう。
しかしながら、「イタリア海軍将兵の勇敢さは、その艦艇の大きさに反比例する。一番勇敢なのはフロッグマン部隊で、魚雷艇部隊がこれに次ぐ。」とも言われるぐらいで、イタリア海軍戦艦と言うのは別格なのか、このタラント夜襲はパラダイムシフトとは見なされなかった様だ。だからリーマンブラザース破綻に端を発する今の経済状況を、「経済のPearl Harbor」と呼ぶ人は居てもも「経済のタラント夜襲」とは言わない。(それともイタリア人なら、そう呼ぶのだろうか。)
実際、ドイツ海軍戦艦を相手としては、1941年5月の対ビスマルク戦に於いて、同じスォードフィッシュ雷撃機(※3)がかけた波状攻撃は、戦艦ビスマルクを航行不自由に陥らせ、英水上艦艇の射程内に捕らえさせたが、撃沈に至る損害を与えたのは英戦艦部隊。従来のパラダイムは、未だ健在だった事になる。
そのパラダイムを変え、新たなパラダイム「海洋の支配者は航空機であり、主力艦は航空機を搭載する空母である。」にシフトさせよう、シフトを実践しようと言うのは、勇気と先見の明(もしくは強い思い込み)のある者。帝國海軍航空科であり、その要求にこたえる日本航空機業界であり、連合艦隊司令長官に就任した山本五十六大将であった。
パラダイムシフターがトップに座れば、シフトは、少なくともパラダイムをシフトさせようと言う試みは加速される。
結果は諸兄御承知の通りだ。
1941年12月8日。日本の空母6隻を中心とする機動部隊は、ハワイは真珠湾の米海軍基地を航空機で攻撃。戦艦5積を一挙に撃沈し、従来のパラライム「主力艦は戦艦である」が完全にシフトした事を全世界に見せ付けた。
「法則6. パラダイムは、変えうる。そしてパラダイムがシフトすると、従来の成功は0になる。」を実践した訳だ。
1939年には第2次大戦が勃発し、欧州では戦争が始まったが、英独の航空機は輸送艦等には一定の戦果を挙げるものの、主力艦=戦艦に対する戦果と言うとイタリア艦隊に対する英海軍空母による奇襲、タラント夜襲ぐらいしか見るべきものが無い。
タラント夜襲は1940年11月だから、真珠湾攻撃の約1年前だ。このとき英空母イラストリアスを飛び立った21機の雷撃機(複葉羽布張りの古式ゆかしいスォードフィッシュ雷撃機(※2))はタラントのイタリア艦隊を奇襲する事に成功し、戦艦3隻のうち1隻「コンテ・ディ・カヴール」を沈没着底させ、他の2隻を大破させた。魚雷一発の命中で沈没・着底してしまった「コンテ・ディ・カヴール」には、構造上組織上の大問題がありそうで、「流石はイタリア海軍」と言うところだが、帝國海軍航空科としては、大いに勇気付けられた事だろう。
しかしながら、「イタリア海軍将兵の勇敢さは、その艦艇の大きさに反比例する。一番勇敢なのはフロッグマン部隊で、魚雷艇部隊がこれに次ぐ。」とも言われるぐらいで、イタリア海軍戦艦と言うのは別格なのか、このタラント夜襲はパラダイムシフトとは見なされなかった様だ。だからリーマンブラザース破綻に端を発する今の経済状況を、「経済のPearl Harbor」と呼ぶ人は居てもも「経済のタラント夜襲」とは言わない。(それともイタリア人なら、そう呼ぶのだろうか。)
実際、ドイツ海軍戦艦を相手としては、1941年5月の対ビスマルク戦に於いて、同じスォードフィッシュ雷撃機(※3)がかけた波状攻撃は、戦艦ビスマルクを航行不自由に陥らせ、英水上艦艇の射程内に捕らえさせたが、撃沈に至る損害を与えたのは英戦艦部隊。従来のパラダイムは、未だ健在だった事になる。
そのパラダイムを変え、新たなパラダイム「海洋の支配者は航空機であり、主力艦は航空機を搭載する空母である。」にシフトさせよう、シフトを実践しようと言うのは、勇気と先見の明(もしくは強い思い込み)のある者。帝國海軍航空科であり、その要求にこたえる日本航空機業界であり、連合艦隊司令長官に就任した山本五十六大将であった。
パラダイムシフターがトップに座れば、シフトは、少なくともパラダイムをシフトさせようと言う試みは加速される。
結果は諸兄御承知の通りだ。
1941年12月8日。日本の空母6隻を中心とする機動部隊は、ハワイは真珠湾の米海軍基地を航空機で攻撃。戦艦5積を一挙に撃沈し、従来のパラライム「主力艦は戦艦である」が完全にシフトした事を全世界に見せ付けた。
「法則6. パラダイムは、変えうる。そしてパラダイムがシフトすると、従来の成功は0になる。」を実践した訳だ。
<注釈>
(※1) 戦前の演習で、長門、扶桑、金剛の3隻に対し96式陸攻で攻撃をかけると言う演習があったそうだ。
結果は、金剛 魚雷3本命中 大破 扶桑 魚雷5本命中 短時間に沈没 長門に至っては「魚雷36本命中 瞬時にして轟沈」と言う凄まじい判定を喰らったそうだ。(ソリャ、沈むわ。)
当時の対空砲火の撃墜判定には、問題があったかもしれない。が、当時の演習用魚雷は光りながら航走し、艦底を通過した事で命中判定としていたそうだから、この魚雷命中数は、相当信じて良さそうだ。
(※2) 英空母は装甲甲板を持って頑丈だが搭載機数が少ない。攻撃機21機は搭載機33機のイラストリアスとしてはほぼ全力出撃だ。
(※3) と言うより、この頃イギリスにある雷撃機は、殆どスォードフィッシュだけか。ボーファイター双発戦闘機は雷装できるはずだが、雷撃したって話は聞かないしな。
(※1) 戦前の演習で、長門、扶桑、金剛の3隻に対し96式陸攻で攻撃をかけると言う演習があったそうだ。
結果は、金剛 魚雷3本命中 大破 扶桑 魚雷5本命中 短時間に沈没 長門に至っては「魚雷36本命中 瞬時にして轟沈」と言う凄まじい判定を喰らったそうだ。(ソリャ、沈むわ。)
当時の対空砲火の撃墜判定には、問題があったかもしれない。が、当時の演習用魚雷は光りながら航走し、艦底を通過した事で命中判定としていたそうだから、この魚雷命中数は、相当信じて良さそうだ。
(※2) 英空母は装甲甲板を持って頑丈だが搭載機数が少ない。攻撃機21機は搭載機33機のイラストリアスとしてはほぼ全力出撃だ。
(※3) と言うより、この頃イギリスにある雷撃機は、殆どスォードフィッシュだけか。ボーファイター双発戦闘機は雷装できるはずだが、雷撃したって話は聞かないしな。