1-3 縦深防御の勧め

 スイス政府が発行した「民間防衛」と言う小冊子がある。
 永世中立国スイスは、国民皆兵で、国民には徴兵の義務があり、兵役としての訓練が終わると軍服と軍用自動小銃及び実包(実弾)1式を支給される。一朝事があれば、国民はこの軍服に身を包み、武器弾薬を身につけて指定の場所に集結する手はずだ。だが、近代戦は総力戦とは言え、前線に全国民成年男子を投入するわけには行かない。国家は国家で経済活動をしなければ、前線に補給も出来はしない。だから、戦時といえどもいて氏割合の国民が、成年男子を含め銃後の守りにあたる。「民間防衛」はこの銃後の守りに当たる国民の心得を説いたものだ。

 内容は多岐に渡る。実際に空襲警報が出たとき、食料燃料はじめとする戦略物資の経済統制下(※1)に入った場合、核攻撃を受けた場合、或いは宣伝謀略戦の渦中に放り込まれた場合の対処の仕方等が書かれている。
 
 いろいろと示唆に富む小冊子で、原書房から翻訳が未だ出ているはずだ。その中に、本国政府が降伏してしまった場合の対処まで書かれているのは圧巻だ。
 曰く、本国が武運つたなく降伏し、敗戦国となってしまったら、「黙って時を待て。」と。
 ガンジー流の非暴力不服従ならば未だ良いが、いたずらな武力抵抗で人命を損耗することなく、耐えろと。
 その人命は、捲土重来なった亡命スイス政府と解放軍が到着した際に使えと。その時は、いくら人命があっても足らないだろうと。
 
 美事なまでの国を守る気概であり、負けてなお諦めない精神である。
 
 翻って今度の衆院選挙。投票は明日だ。
 未だ負けと決まったわけではない。いちるなりとも望みはある。
 が、それでもなお、民主党政権が誕生してしまったとしても・・・・私は諦めない。
 国力も国威も低下するだろう。国益も無茶苦茶になるだろう。一代限りの社会党政権・村山富一首相よりも非道いことになる公算も大だ。
 
 だが、私は諦めない。戦い続ける。
 
 小沢民主党代表代行は、今度の選挙で民主党政権が出来るか否かに、日本の民主主義の完成がかかっていると言ったそうだ。2大政党制が2大政党制として働くか否かの試金石という点では、同意できないこともないが、何しろその「2大」の片割れ、「明日の与党」がこの民主党であり、その連立相手が社民党では「まともな、国家に忠良なる野党を作って出直してこい。」と言いたくなる。
 
 日本の民主主義の完成は未だ遠い。
 明日の選挙で民主党が政権を執るようならば、なおさらだ。


<注釈>
(※1)いわゆる配給制、と言っても判る人も減ってしまったな。私も直接体験した訳じゃないが



1-4 投票へ行け。適わぬまでも、1票を。

 最後に、支持政党に関わらず、広く日本の有権者に訴えたい。
 今のところ日本国籍を有する有権者の筈だから、「国民」と呼びかけても良かろう。(※1)
 
 国民諸君。諸君は有権者であり、投票権を有している。
 投票することは諸君の権利である。が、同時に投票を通じておのが意思を表明することは民主主義国家では義務でもあり得る。
 多くの自由な市民が、それぞれおのが考えを持ち寄り、「広く公儀を興し、万機公論に決す」る事により、一人の天才や王様、将軍様や主席が全てを決するよりも正しい判断を行おうとするのが民主主義だ。
 
 故に、国民諸君は自らの頭で考え、判断して投票しなければならない。
 
 他人や風説、しがらみや地縁・血縁、デマや報道の奴隷となることなく、自ら考え、自ら判断し、自由な市民として投票することが求められる。
 
 平易なことではない。
 が、「政権交代」がかかる明日の選挙では尚のこと、この点を考慮の上、投票されたい。


<注釈>
(※1)在日外国人にまで参政権が付与されたら、「有権者の皆さん」と言わねばならなくなる。下手して「国民諸君」とやったら、「国籍差別」として糾弾されかねない。