1.4 その後の空冷エンジン にほんブログ村 技術・工学

 航空機のロータリーエンジンは第1次大戦後、アルミ合金が普及して星型空冷エンジンが実用化されると消滅した。エンジンと同様に高速回転するため、大馬力とすることは困難であり、普及したのは180HPどまりでは、第1次大戦後のより速くより重くなった全金属機を飛ばすには馬力不足になった。
 「ロータリーバンク」が機体によっては顕著にならなかったのは、機体とエンジンの質量比のためとも考えられ、そうだとするとやはり第1次大戦後の全金属機(*1)に於いては「ロータリーバンク」は顕著とならず、ロータリーエンジンの利点とはならなかっただろう。
 第一、「ロータリーバンク」のような曲技飛行を利点とする機種は、戦闘機と曲芸機ぐらいで、商売からすると大した数ではない。
 
 かくして「ロータリーエンジン」は航空機黎明期の空冷エンジンとして歴史の1ページを飾り、然る後に消えていった。「ロータリーバンク」と言う謎を、なお残したまま。
 
 その後釜とも言うべき星型空冷エンジンはその後発達し、2000馬力級、3000馬力級などと言うモンスターを以って第2次大戦に隆盛を極めたが、B-36ピースメーカー戦略爆撃機で冷戦の入り口を飾ったのを最後に、今は特殊なレーサーや復元機で細々と生きるのみ。プロペラ機のエンジンが大馬力又は軽量のターボプロップか、自動車用水冷エンジンとなってしまって久しい。

 諸行無常?盛者必衰?
 
 そう、そう言えない事もないだろう。
 だが、私ならばそんな言い方はしない。
 ロータリーエンジンは一時とは言え栄光をつかみ、歴史に名を残した。
 一時と言うならば全ての栄光は一時であり、この世に不死なる人間はいないのと同様、永遠不滅の技術と言うものもまずないと考えるべきだろう。
 
 であるならば、一時の栄光を手にしたロータリーエンジンに、それを実現した先人の努力に、相応の敬意を払うべきではないか。


<注釈>
(*1)全金属機の登場は第1次大戦中である。ユンカースJ-Iがその嚆矢である。