海上保安庁というと、英語でJapan Coast Guard。直訳すれば沿岸警備隊だが、海の警察官・国境警備隊であり、我等が海上自衛隊共々、帝國海軍の末裔で、まあ、弟分だろうな。


 日本の海の警察官・国境警備隊としての任務は終戦までは帝國海軍の任務であり、国によっては今でも海軍の任務。Royal Navyこと英国海軍では今でもそうだ。であればこそ、「太陽の没する事のない」大英帝国=大植民地帝国を誇った戦前戦中の英国海軍には、警備のための航続距離を重視した「条約型重巡洋艦より大きい(重い)軽巡洋艦」なんて妙な艦がゴロゴロしていた。
 
 それはさておき、戦後帝國海軍の一部任務の継承者として誕生した海上保安庁は、帝國海軍の末裔であるが故に、その船艇名の一部は帝國海軍の艦艇名を踏襲している。「ゆきかぜ=雪風」「しまかぜ=島風」などなかなか詩的な名前が多いのだが、一方で「たちかぜ」「はたかぜ」など、海上自衛隊と重複してしまう名前もあるのはちょいと気になるところではある。
 また、たかだか消防艇が「ひりゅう」と称してしまうのは、やはり情けないものがある。(「飛龍」はミッドウエイに散った4隻の空母の1隻である。)
 
 さはさりながら、海上保安庁の船艇名の中でも圧巻なのは、「ひめぎく」型巡視艇。ネームシップの旧名を「すずかぜ」と言い、「あさかぜ」「あきかぜ」「しぎかぜ」「うずかぜ」「しまかぜ」「ゆきかぜ」・・・・と、「ナントカかぜ」が現役だけでなんと100隻以上もある。
 
 「津軽には、七つの雪が降る。」とは歌にもあるが、「日本には、百以上の風が吹く」訳だ。なるほど、日本語が深く自然に根ざした言語である証拠だな。

 だがしかし・・・これまた海上保安庁が帝國海軍の末裔故か、この船艇名もまた、海上自衛隊の艦艇名と同様に、原則「平仮名」が正式船艇名になっている。
 
 力が抜けるったらありゃしない。
 
 その上、意味が分からない。
 
 「さつかぜ」と言うのがどういう字を書いて、一体どういう意味なのか、真剣に知りたいと思うのは、私だけでは無い筈だ。
 「薩風」と書いて「薩摩に吹く風」というのが正解らしいのだが・・・他にも「あわかぜ」「おさかぜ」「はかぜ」「とりかぜ」なんかが「漢字で書いてあれば、意味のあたりぐらいはつくものを」と惜しまれる船艇名だ。
 
 海上保安庁の測量船の一部「昭洋」「拓洋」等はちゃんと漢字の名前なのだから、漢字使ってもよさそうなものだが。
 
 ひょっとして、「帝國海軍式命名法」では平仮名名前しか認められない、ということか?
 
 でも、「ぽおらすたあ」「すこおぴお」「おりおん」(これはこれで力が抜ける。)等は帝國海軍式命名法ではないが、平仮名名前だぞ。