1-4-1 ABC兵器を考える
最近は余り言わなくなったが、昔は「ABC兵器」と言えば大量殺戮兵器の代名詞だった。AとはATOMIC(原子)であり、早い話が核兵器。今も昔も押しも押されもせぬ、大量破壊兵器の大御所だ。
CとはChemical(化学)。文字通りの化学兵器、代表的なのは毒ガスだ。オウム真理教の地下鉄サリンテロから第一次大戦の塹壕戦まで、使用例は枚挙に暇がないが、大量殺戮兵器としての歴史が古いだけにABCの内C=化学兵器だけがジュネーブ条約で「非人道的」として禁じられている。禁じられていてもオウムのようなテロリストやフセインのイラクのように、その禁止を破る輩には事欠かないのだが、一方で「大量殺戮」をやらかすには、散布する毒ガスの量も、散布する方法も条件も相当に厳しくなり、容易なことではない。
使いにくく、大きな被害を与えにくいと言うことは、それだけ軍事的兵器としても政治的兵器としても威力を削ぐものであり、ジュネーブ条約違反という事実も政治的兵器としてもデメリットがあるだろう。
BとはBIO(生物)、意味するところは生物兵器、早い話が細菌兵器だ。かつては「核兵器の後継」とも目され、それ故に「最終戦争」を核戦争ならぬ細菌兵器戦争と想定したSFもいくつかあるのだが、現実の使用となるとこいつもあれこれ難がある。近いところでは炭疽菌テロが上げられようが、お世辞にも感染力が強いとは言いがたい炭疽菌が細菌兵器の古典にして未だ定番である理由は、「運搬・散布の容易さ」にある。
逆に言えば他のもっと感染力の強い細菌兵器は、案外運搬や散布が難しいのだ。
もっと難しいのが「意図した被害に押さえ込む」事だ。いくら政治的効果を狙った大量殺戮兵器とは言え、相手に言うことを聞かせるのが目的である以上、兵器に望む被害規模というものがある。予めワクチンを作って置いて自軍自国民にはこれを投与することで、敵軍・敵国民にだけ有効な細菌兵器とすることは一応可能だろうが、ワクチンを打たなかった者に感染が広がり、第三国や全世界に被害が飛び火する可能性がある。
さらには、「効果が出るまでに時間がかかる」と言うのも兵器としての欠点だ。
かくしてABC兵器の内、C=化学兵器は核兵器以上とは兵器としても政治的兵器としてもなりえず、B=細菌兵器は兵器としての実効性さえ現状では危うい。
どちらも我が国が装備化を議論する対象では、今のところなさそうだ。
1-4-2 SF兵器を考える
CとはChemical(化学)。文字通りの化学兵器、代表的なのは毒ガスだ。オウム真理教の地下鉄サリンテロから第一次大戦の塹壕戦まで、使用例は枚挙に暇がないが、大量殺戮兵器としての歴史が古いだけにABCの内C=化学兵器だけがジュネーブ条約で「非人道的」として禁じられている。禁じられていてもオウムのようなテロリストやフセインのイラクのように、その禁止を破る輩には事欠かないのだが、一方で「大量殺戮」をやらかすには、散布する毒ガスの量も、散布する方法も条件も相当に厳しくなり、容易なことではない。
使いにくく、大きな被害を与えにくいと言うことは、それだけ軍事的兵器としても政治的兵器としても威力を削ぐものであり、ジュネーブ条約違反という事実も政治的兵器としてもデメリットがあるだろう。
BとはBIO(生物)、意味するところは生物兵器、早い話が細菌兵器だ。かつては「核兵器の後継」とも目され、それ故に「最終戦争」を核戦争ならぬ細菌兵器戦争と想定したSFもいくつかあるのだが、現実の使用となるとこいつもあれこれ難がある。近いところでは炭疽菌テロが上げられようが、お世辞にも感染力が強いとは言いがたい炭疽菌が細菌兵器の古典にして未だ定番である理由は、「運搬・散布の容易さ」にある。
逆に言えば他のもっと感染力の強い細菌兵器は、案外運搬や散布が難しいのだ。
もっと難しいのが「意図した被害に押さえ込む」事だ。いくら政治的効果を狙った大量殺戮兵器とは言え、相手に言うことを聞かせるのが目的である以上、兵器に望む被害規模というものがある。予めワクチンを作って置いて自軍自国民にはこれを投与することで、敵軍・敵国民にだけ有効な細菌兵器とすることは一応可能だろうが、ワクチンを打たなかった者に感染が広がり、第三国や全世界に被害が飛び火する可能性がある。
さらには、「効果が出るまでに時間がかかる」と言うのも兵器としての欠点だ。
かくしてABC兵器の内、C=化学兵器は核兵器以上とは兵器としても政治的兵器としてもなりえず、B=細菌兵器は兵器としての実効性さえ現状では危うい。
どちらも我が国が装備化を議論する対象では、今のところなさそうだ。
1-4-2 SF兵器を考える
もう少し視野を広げてSF=空想科学小説で「核兵器以上」を探してみよう。
真っ先に思いつくのは「反陽子爆弾」「反物質爆弾」である。先述の通り、核兵器はその核反応による本の数パーセントの質量欠損をエネルギーとしているのに対し、正反物質による対消滅を利用するこれらの兵器は「反物質と同質量の正物質を反応させ、全質量をエネルギーにする」ものであるから、反物質の倍の質量の全エネルギーE = MC^2 ×2 (M:反物質質量)が解放される。単純に考えれば、核兵器の百倍の威力だ。
問題は未だに爆弾なんてものに仕立て上げられるだけの反物質なり反陽子なりが見つかっていない(※1)ことと、見つけたところで正物質(つまりこの世に満ち溢れている質量を持ったあらゆる物)に触れた瞬間に対消滅を起こしてエネルギーと化してしまう反物質を、捕獲し、保存し、貯蔵し、必要なとき(だけ)爆発させる技術が未確立であることだ。
それに比べれば莫大な質量を凄まじい高密度で持つブラックホールを敵にぶつける方が未だ現実的だろう。光さえ脱出できない凄まじい質量が敵軍、敵国所か質量によっては敵惑星、敵恒星まで飲み込んでくれる。
これまた問題は手頃な大きさのブラックホールをどうやって手に入れて必要なところに持ってくるかだ。それに、隣国への使用は推奨できない(※2)。
核兵器以上の大量殺戮兵器として気象兵器だとか地殻変動兵器打とかが登場するSFもある。が、これらも地球や大洋の反対側なら兎も角、近隣諸国に攻撃しか蹴るには難がありすぎる。
レーザー砲やビーム兵器はSFと言うより現実の兵器だが、現実化して見ると案外「卑小」である感は否めない。
当たり前だがレーザーやビームは直進しかしない。砲兵で言うと「直接射撃=砲から見える所を撃つ」しか出来ないから、地上配備では射程は水平線まで。せいぜい30kmしか届かず、大和の18インチ砲は勿論、通常の野砲の特殊砲弾にも劣る射程では、いくら高出力化が成功しても、地上兵器としては一寸情けない。
空中に上げれば遠くまで直接見えるから、射程は延びる。弾道ミサイルの初期段階迎撃に計画されたABL(Air Bone Laser)と言うのは多分正解だろう。これで思いのままの高出力レーザーがあれば「敵国を空中から監視し、必要なところにはレーザーの鉄槌を下す」ところが空想できるのだが・・・「金を食う割には成果がない。」と予算カットの憂き目にあってしまった。
こうしてみると我が国が装備しても良さそうなのは、アメリカが諦めた空中レーザー砲ABLぐらいだな。
だが、発射直後に速攻で探知すれば、弾道弾迎撃には使えるかも知れないが、地下奥深く引きこもっている(であろう)金将軍を仕留めるのは難しそうだな。
真っ先に思いつくのは「反陽子爆弾」「反物質爆弾」である。先述の通り、核兵器はその核反応による本の数パーセントの質量欠損をエネルギーとしているのに対し、正反物質による対消滅を利用するこれらの兵器は「反物質と同質量の正物質を反応させ、全質量をエネルギーにする」ものであるから、反物質の倍の質量の全エネルギーE = MC^2 ×2 (M:反物質質量)が解放される。単純に考えれば、核兵器の百倍の威力だ。
問題は未だに爆弾なんてものに仕立て上げられるだけの反物質なり反陽子なりが見つかっていない(※1)ことと、見つけたところで正物質(つまりこの世に満ち溢れている質量を持ったあらゆる物)に触れた瞬間に対消滅を起こしてエネルギーと化してしまう反物質を、捕獲し、保存し、貯蔵し、必要なとき(だけ)爆発させる技術が未確立であることだ。
それに比べれば莫大な質量を凄まじい高密度で持つブラックホールを敵にぶつける方が未だ現実的だろう。光さえ脱出できない凄まじい質量が敵軍、敵国所か質量によっては敵惑星、敵恒星まで飲み込んでくれる。
これまた問題は手頃な大きさのブラックホールをどうやって手に入れて必要なところに持ってくるかだ。それに、隣国への使用は推奨できない(※2)。
核兵器以上の大量殺戮兵器として気象兵器だとか地殻変動兵器打とかが登場するSFもある。が、これらも地球や大洋の反対側なら兎も角、近隣諸国に攻撃しか蹴るには難がありすぎる。
レーザー砲やビーム兵器はSFと言うより現実の兵器だが、現実化して見ると案外「卑小」である感は否めない。
当たり前だがレーザーやビームは直進しかしない。砲兵で言うと「直接射撃=砲から見える所を撃つ」しか出来ないから、地上配備では射程は水平線まで。せいぜい30kmしか届かず、大和の18インチ砲は勿論、通常の野砲の特殊砲弾にも劣る射程では、いくら高出力化が成功しても、地上兵器としては一寸情けない。
空中に上げれば遠くまで直接見えるから、射程は延びる。弾道ミサイルの初期段階迎撃に計画されたABL(Air Bone Laser)と言うのは多分正解だろう。これで思いのままの高出力レーザーがあれば「敵国を空中から監視し、必要なところにはレーザーの鉄槌を下す」ところが空想できるのだが・・・「金を食う割には成果がない。」と予算カットの憂き目にあってしまった。
こうしてみると我が国が装備しても良さそうなのは、アメリカが諦めた空中レーザー砲ABLぐらいだな。
だが、発射直後に速攻で探知すれば、弾道弾迎撃には使えるかも知れないが、地下奥深く引きこもっている(であろう)金将軍を仕留めるのは難しそうだな。
<注釈>
(※1)今のところ「見つかって」いるのは、研究室の中で人工的に生成した物だけ。「物」と言うよりそれこそ電子、陽子、原子のレベルで、勿論生成した次の瞬間には対消滅してしまう。
(※2)普通、戦争の相手は利害が直接対立する事が多い、隣国なのだが。
(※1)今のところ「見つかって」いるのは、研究室の中で人工的に生成した物だけ。「物」と言うよりそれこそ電子、陽子、原子のレベルで、勿論生成した次の瞬間には対消滅してしまう。
(※2)普通、戦争の相手は利害が直接対立する事が多い、隣国なのだが。
1-4-3 卑近な処を考える
「核兵器以上の大量殺戮」を考えるから、近隣諸国には使用が躊躇われるようなシロモノになってしまう。もっと卑近な例で考えればどうだろうか。
例えば、一寸ふるいがFAE(気化燃料)爆弾・弾頭がある。燃料を気化させた後に爆発させ、後半に渡って爆風による大被害をもたらそうという爆弾・弾頭は「貧者の核兵器」とも言われるほどの、極限的ながら相当な被害をもたらす物だ。
問題は、燃料の気化と点火の効果的なタイミングが、気温や風力によって相当に変化すること。タイミングが悪いと、全然被害がでなかったり「大きな音がしてお終い」なんて事になる。タイミングには地形もか変わってきそうだ。地形、気温、風力、ひょっとすると日照までも検知して、点火のタイミングを調整する技術を確立すれば、一つの解かも知れない。
中国やロシアが力を入れていると言われる、コンピュータウイルスの利用というのも新たな方法として検討の余地はある。ただ、具体的に見える兵器ではないので、抑止力とするためには、定期的にデモンストレーションをしてみせるとかしなければならないし、北朝鮮やその他のIT事情が遅れた国には、効果が限定的になる可能性が大きい。
こうして考えてみると今のところ核兵器に勝る政治的兵器は、無いというのが結論だろうか。
例えば、一寸ふるいがFAE(気化燃料)爆弾・弾頭がある。燃料を気化させた後に爆発させ、後半に渡って爆風による大被害をもたらそうという爆弾・弾頭は「貧者の核兵器」とも言われるほどの、極限的ながら相当な被害をもたらす物だ。
問題は、燃料の気化と点火の効果的なタイミングが、気温や風力によって相当に変化すること。タイミングが悪いと、全然被害がでなかったり「大きな音がしてお終い」なんて事になる。タイミングには地形もか変わってきそうだ。地形、気温、風力、ひょっとすると日照までも検知して、点火のタイミングを調整する技術を確立すれば、一つの解かも知れない。
中国やロシアが力を入れていると言われる、コンピュータウイルスの利用というのも新たな方法として検討の余地はある。ただ、具体的に見える兵器ではないので、抑止力とするためには、定期的にデモンストレーションをしてみせるとかしなければならないし、北朝鮮やその他のIT事情が遅れた国には、効果が限定的になる可能性が大きい。
こうして考えてみると今のところ核兵器に勝る政治的兵器は、無いというのが結論だろうか。