1-1 我々は、最強の戦闘機を欲する。
先述の通りF-4は長い事航空自衛隊の第一線にあった。とは言え、F-104Jに代わる主力戦闘機として導入されて以来幾星霜。F-15Jと言う双発単座と言う「ジェット戦闘機の王道を行く」次の世代の主力戦闘機も配備されて、その任務は徐々に迎撃戦闘から「支援戦闘機(※1)」としての役割、言い換えれば対艦及び対地攻撃にシフトしてきたのは否めないところだろう。制空権確保の対戦闘機戦闘は、若手のF-15Jイーグルに任せて、敵艦隊・敵船団・敵地上部隊へ、時には肉薄(※2)して攻撃を掛けるのが任務である。
であるならば、そのF-4の後継機を選定するに当たって、その任務は「半ば支援戦闘機」であるべきだろうか。極端な話、後継機にA-10ウォートホグ攻撃機を選定すべきだろうか?
現在公表されているF-X候補のリストは、そんなことは考えていない。支援戦闘機任務に重点を置いている機種としてはF-15Eストライクイーグル、兼任重視と言う意味ではF-35Joint Strike Fighter、ユーロファイター・タイフーン、F/A-18があるが、最有力候補とされていたF-22ラプターは正真正銘掛け値無しの制空戦闘機であり、「支援戦闘機」任務、特に対艦ミサイルの搭載には一寸無理がある。
であるならば、そのF-4の後継機を選定するに当たって、その任務は「半ば支援戦闘機」であるべきだろうか。極端な話、後継機にA-10ウォートホグ攻撃機を選定すべきだろうか?
現在公表されているF-X候補のリストは、そんなことは考えていない。支援戦闘機任務に重点を置いている機種としてはF-15Eストライクイーグル、兼任重視と言う意味ではF-35Joint Strike Fighter、ユーロファイター・タイフーン、F/A-18があるが、最有力候補とされていたF-22ラプターは正真正銘掛け値無しの制空戦闘機であり、「支援戦闘機」任務、特に対艦ミサイルの搭載には一寸無理がある。
「制海権は制空権である。」とはかつて学研X図鑑の宣伝文句に引用されており、元は戦時中のキャッチコピー(※3)であるが、制空権の致命的重要性を述べている。この思想は現在に於いても充分有効であり、航空自衛隊が代々「最強の戦闘機」を欲してきたのもこの思想によるのだろう。さらには、支援戦闘機の任務ならば、搭載量さえあれば何も「最強の戦闘機」でなくとも務まると言う考えだろう。
実際、F-4ファントムIIなら今までの支援戦闘機任務には充分対処できたであろう。また現主力戦闘機F-15はF-15Eストライクイーグルなんて発展型がある通り、搭載量にも発展性にも相応の余裕がある。
さらに言えば、空軍の本来任務という意味では制空権確保は空軍の本来任務ではない。
「御前達は好きなだけ敵戦闘機をやっつけてくれば良い。
だが御前達が帰ってきたときに、基地の食堂で敵が飯を食っていたら、戦争は負けなんだ。」とは、ある爆撃機パイロットが戦闘機パイロットに言った台詞だそうだが、From the SeaならぬFrom the Sky即ち「空からのPower Projection」こそが空軍の本来任務であると言うことを、端的に表している(※4)。制空権も、制空戦闘も、制空戦闘機も、そのための手段であって、目的ではない。
故に、非対称戦争のように「制空権確保に大して手間がかからない」状況では、制空専用戦闘機と言うのは贅沢と言うことになり、「マルチロールファイター」「スイングロールファイター」が幅を効かせることになる。F-22ラプターを米空軍が製造中止とする(かも知れない)のは、この辺の理由であろう。
言い換えれば米空軍(の少なくともトップには)今の数のF-22で制空権は確保しうると考えている事になる。
実際、F-4ファントムIIなら今までの支援戦闘機任務には充分対処できたであろう。また現主力戦闘機F-15はF-15Eストライクイーグルなんて発展型がある通り、搭載量にも発展性にも相応の余裕がある。
さらに言えば、空軍の本来任務という意味では制空権確保は空軍の本来任務ではない。
「御前達は好きなだけ敵戦闘機をやっつけてくれば良い。
だが御前達が帰ってきたときに、基地の食堂で敵が飯を食っていたら、戦争は負けなんだ。」とは、ある爆撃機パイロットが戦闘機パイロットに言った台詞だそうだが、From the SeaならぬFrom the Sky即ち「空からのPower Projection」こそが空軍の本来任務であると言うことを、端的に表している(※4)。制空権も、制空戦闘も、制空戦闘機も、そのための手段であって、目的ではない。
故に、非対称戦争のように「制空権確保に大して手間がかからない」状況では、制空専用戦闘機と言うのは贅沢と言うことになり、「マルチロールファイター」「スイングロールファイター」が幅を効かせることになる。F-22ラプターを米空軍が製造中止とする(かも知れない)のは、この辺の理由であろう。
言い換えれば米空軍(の少なくともトップには)今の数のF-22で制空権は確保しうると考えている事になる。
では「冷戦が終結し」かつ「財政事情が悪化している」我が国としては、F-Xに対する「最強の戦闘機」と言う従来の考えを改め、支援戦闘機任務に重きを置くべきだろうか?
否。断じて。
先ず第1に、冷戦が終結して万歳三唱していれば済むのは、その冷戦が端的にベルリンの壁をはじめとする「鉄のカーテン」として現出していた欧州正面だけである。極東に於いては北朝鮮の核兵器開発・核恫喝・弾道弾発射を始め、台湾併合を虎視眈々と狙う中国があり、大国としての復活を目論むロシアがあり(※5)、冷戦は終結していない所かプレーヤーが増えた(=親分が居なくなった)分だけ戦争の敷居は下がっている。
なおかつそのプレーヤーの中に、10%以上という高い軍備拡張率を長年続けている中国が入っている。その空軍は海軍と共に軍備拡張著しく、ソ連製の新鋭戦闘機の他に、国産でも戦闘機を開発・配備している。しかもその数は、人民解放軍の伝統に従って、容易ではない数だ。
第2に、これは自衛隊発足以来の懸案なのだが、兎に角我が3軍は数が少ないことを想起しないといけない。こいつはそれこそ徴兵制でも敷かない限り、言い換えれば志願兵制である限り付いて廻る懸案だが、特に航空自衛隊は海上自衛隊よりもさらに専門性が高い(※6)から、少数精鋭で高い抑止力を保つしかない。なおかつその劣勢は、対米6割の劣勢を訓練で補おうとした海軍休日の頃よりも厳しいものと想定しうる。
従って将兵の質、即ち練度と士気の向上もさることながら、最良の装備を配備すべきである。
第3に、国防と言えども国民の血税によるものだから、コストパフォーマンス・経済効率を考慮すべきであるが、経済効率だけ考えては、国防策は誤ることになるだろう
言い換えればしっかりした国防策あってこそのF-X論議になるのであるが、現状の国防策=専守防衛にそっても、あるいは前進防衛=予防戦争に方針転換したとしても、「最強の制空戦闘機」は不可欠である。
私の考えるところでは、F-Xに「最強の制空戦闘機」を必要としないのは、我が国独自の核武装による大量報復戦略を採用した場合ぐらいだ。
勿論最悪なのは、「独自核武装による大量報復戦略を採用しないのに、F-Xを最強制空戦闘機から格下げしてしまう。」事である。
上記から、我が国はF-Xとして最強の制空戦闘機を欲する。
否。断じて。
先ず第1に、冷戦が終結して万歳三唱していれば済むのは、その冷戦が端的にベルリンの壁をはじめとする「鉄のカーテン」として現出していた欧州正面だけである。極東に於いては北朝鮮の核兵器開発・核恫喝・弾道弾発射を始め、台湾併合を虎視眈々と狙う中国があり、大国としての復活を目論むロシアがあり(※5)、冷戦は終結していない所かプレーヤーが増えた(=親分が居なくなった)分だけ戦争の敷居は下がっている。
なおかつそのプレーヤーの中に、10%以上という高い軍備拡張率を長年続けている中国が入っている。その空軍は海軍と共に軍備拡張著しく、ソ連製の新鋭戦闘機の他に、国産でも戦闘機を開発・配備している。しかもその数は、人民解放軍の伝統に従って、容易ではない数だ。
第2に、これは自衛隊発足以来の懸案なのだが、兎に角我が3軍は数が少ないことを想起しないといけない。こいつはそれこそ徴兵制でも敷かない限り、言い換えれば志願兵制である限り付いて廻る懸案だが、特に航空自衛隊は海上自衛隊よりもさらに専門性が高い(※6)から、少数精鋭で高い抑止力を保つしかない。なおかつその劣勢は、対米6割の劣勢を訓練で補おうとした海軍休日の頃よりも厳しいものと想定しうる。
従って将兵の質、即ち練度と士気の向上もさることながら、最良の装備を配備すべきである。
第3に、国防と言えども国民の血税によるものだから、コストパフォーマンス・経済効率を考慮すべきであるが、経済効率だけ考えては、国防策は誤ることになるだろう
言い換えればしっかりした国防策あってこそのF-X論議になるのであるが、現状の国防策=専守防衛にそっても、あるいは前進防衛=予防戦争に方針転換したとしても、「最強の制空戦闘機」は不可欠である。
私の考えるところでは、F-Xに「最強の制空戦闘機」を必要としないのは、我が国独自の核武装による大量報復戦略を採用した場合ぐらいだ。
勿論最悪なのは、「独自核武装による大量報復戦略を採用しないのに、F-Xを最強制空戦闘機から格下げしてしまう。」事である。
上記から、我が国はF-Xとして最強の制空戦闘機を欲する。
<注釈>
(※1)「支援戦闘機(略称FS)」と言うのは陸自の特科(砲兵)と同様我が国独自の呼称で、諸外国では「攻撃機Attacker」或いは「戦闘爆撃機Fighter Bomber」だろう。ドイツ語ならJabo(ヤーボ)だ。
(※2)誘導にせよ無誘導にせよ、爆弾で爆撃するには原則として目標上空を通過しなければならない。
ミサイルはもとより、無誘導ロケット弾よりも目標に接近=肉薄しなければならない。爆撃よりも近寄らなければならないのは、機関砲掃射ぐらいだろう。
(※3)とは当時は呼ばなかったろうから、うーん「戦時標語」かな。
(※4)あるいはそれ以上に、爆撃機パイロットとしての誇りと意地を表している。
ある意味、滑稽かも知れない。が、微笑ましい。
おのが職業・職責に自信を持てぬものが、自尊心なぞ持ち得ようか?
況わんや部下を率いて、あるいは部下だけを、死地に赴く/赴かせるなど不可能であろう。
(※5)忘れちゃいけないな。ロシアと日本の間には、東欧のような緩衝国はない。何しろ我が領土の一部は未だにロシア占領下なんだから、国境は接している。
(※6)それを言うなら現在の軍隊は、かつてに比べて格段に専門性が高いのだが。
農民に胴巻きと槍を持たせれば一応兵になった頃とは違う。日曜飛行家を機種転換訓練さえすれば戦闘機乗りに出来た頃とも。
(※1)「支援戦闘機(略称FS)」と言うのは陸自の特科(砲兵)と同様我が国独自の呼称で、諸外国では「攻撃機Attacker」或いは「戦闘爆撃機Fighter Bomber」だろう。ドイツ語ならJabo(ヤーボ)だ。
(※2)誘導にせよ無誘導にせよ、爆弾で爆撃するには原則として目標上空を通過しなければならない。
ミサイルはもとより、無誘導ロケット弾よりも目標に接近=肉薄しなければならない。爆撃よりも近寄らなければならないのは、機関砲掃射ぐらいだろう。
(※3)とは当時は呼ばなかったろうから、うーん「戦時標語」かな。
(※4)あるいはそれ以上に、爆撃機パイロットとしての誇りと意地を表している。
ある意味、滑稽かも知れない。が、微笑ましい。
おのが職業・職責に自信を持てぬものが、自尊心なぞ持ち得ようか?
況わんや部下を率いて、あるいは部下だけを、死地に赴く/赴かせるなど不可能であろう。
(※5)忘れちゃいけないな。ロシアと日本の間には、東欧のような緩衝国はない。何しろ我が領土の一部は未だにロシア占領下なんだから、国境は接している。
(※6)それを言うなら現在の軍隊は、かつてに比べて格段に専門性が高いのだが。
農民に胴巻きと槍を持たせれば一応兵になった頃とは違う。日曜飛行家を機種転換訓練さえすれば戦闘機乗りに出来た頃とも。
1-2 F-22は現時点に於いて世界最強の戦闘機である。
既に散々人口に膾炙して居る処なので、軽く述べるだけにしようと思うが、新ためて・・・「F-22ラプターは現時点に於いて世界最強の戦闘機である。」
根拠は色々あるが、ざっと上げると以下のようになるだろうか。
(1)ステルス性と格闘性を兼ね備えた現時点で唯一の戦闘機である。
(2)超音速巡航能力を持つ唯一の戦闘機である。
(3)米国の既存主力戦闘機も模擬空戦で圧倒的な強さを見せた。無論ロシア製や中国製の新鋭機との模擬空戦は未だ実施していない(だろう)が、現存しているスホーイの利点は「プガチョフ・コブラ」や「クルビット」を可能にする機動性ぐらい。F-22の第1撃はその機動で凌げても、第2撃には対処できまい。中国のJ-10の実力は不明だが、ユーロファイターより格段に優れるとも思えない。
根拠は色々あるが、ざっと上げると以下のようになるだろうか。
(1)ステルス性と格闘性を兼ね備えた現時点で唯一の戦闘機である。
(2)超音速巡航能力を持つ唯一の戦闘機である。
(3)米国の既存主力戦闘機も模擬空戦で圧倒的な強さを見せた。無論ロシア製や中国製の新鋭機との模擬空戦は未だ実施していない(だろう)が、現存しているスホーイの利点は「プガチョフ・コブラ」や「クルビット」を可能にする機動性ぐらい。F-22の第1撃はその機動で凌げても、第2撃には対処できまい。中国のJ-10の実力は不明だが、ユーロファイターより格段に優れるとも思えない。