F-4ファントムII戦闘機は、希代の傑作ジェット戦闘機である。
デビューはヴェトナム戦争に遡るから、相当古い機体だ。双発復座と言うその形態は、ジェット戦闘機としても当時は珍しく(※1)、軽くはねた主翼端と盛大に垂れ下がった水平尾翼や大型化した機体共々「醜いアヒルの子」などとも言われ、「チンパンジーが操縦しているミグに内側に廻り込まれる」機体だったが、米海軍を皮切りに、米空軍・米海兵隊も採用し、英海軍・英空軍、西ドイツ空軍、イスラエル空軍、スペイン空軍、ギリシャ空軍、豪空軍、韓国空軍、我等が航空自衛隊など西側諸国(※2)で採用され、ジェット戦闘機としては異例と言える5000機以上が生産され、国によっては未だ現役バリバリの、ロングセラー且つベストセラーのジェット戦闘機となった。
思い起こせば「双発戦闘機」なるものは、第2次大戦のレシプロ戦闘機の頃は殆ど「見果てぬ夢」であった。レシプロ戦闘機の主力は我等が零式艦上戦闘機(通称「ゼロ戦」)をはじめとして圧倒的に単発機。エンジンが二つある双発機は、航続距離や武装、時には速度の点で単発機より有利であるが、機体がどうしても大きく重くなり、運動性能に欠ける傾向がある。
このため第2次大戦のレシプロ双発機は、爆撃機ならともかく戦闘機としては、ゼロ戦だメッサーシュミットMe109だ、フォッケウルフFw190だ、グラマンF6Fだ、ノースアメリカンP-51だといった華々しい単発戦闘機に対しどうもパッとしない。
高速力と航続距離に徹し、単座双胴(正確には三胴か)と言う特異な形状のロッキードP-38ライトニングと、やはり高速力で戦闘機と言うより偵察機・戦闘爆撃機・夜間戦闘機として成功した全木製機(※3)デ・ハビランド・モスキートが「成功したレシプロ双発戦闘機」と言えるぐらいで、後はレーダと斜め銃を積んで夜間戦闘機として生き延びた月光とか、対爆撃機専門迎撃機・屠竜(※4)とか、直球勝負ならぬ変化球投手(それも結構な癖球の)として歴史に名を残すものばかり。はなはだしいのになると、メッサーシュミットBf110の様に「戦闘機に護衛さえる戦闘機」なんて不名誉な名を残してしまったり(後に夜間戦闘機として汚名を挽回するが。)、或いは全く名を知られず消え去ってしまったりしている。
だが、ジェット戦闘機は違う。最初のジェット戦闘機メッサーシュミットMe262も、グロスター・ミーティアも、ジェット双発戦闘機である!・・・と、言いたいところだが、何のことはない当時のジェットエンジンが、単発では推力にも信頼度にも不足をきたすと言うのが正味の所だ。1発あたりの推力も信頼性も十分あれば、単発機が双発機より軽くできるのは、ジェット戦闘機でも変わりは無い。それ故に、単発単座戦闘機のミグ(Mig-21など)は、双発復座のファントムIIよりも「内側に廻り込む」事ができた。
但し、ジェット戦闘機に求められる機能は、レシプロ機の頃よりも多岐に渡る。特に戦闘爆撃機或いは攻撃機としては搭載量に余裕のできる双発機が有利であるし、射程と信頼性を向上してきたミサイルをはじめとする新たな空対空兵装にも搭載量が必要だ。F-4ファントムIIが多くの国々で長い事現役でいられたのも、この双発ゆえの搭載量余裕が効いている。(※5)
デビューはヴェトナム戦争に遡るから、相当古い機体だ。双発復座と言うその形態は、ジェット戦闘機としても当時は珍しく(※1)、軽くはねた主翼端と盛大に垂れ下がった水平尾翼や大型化した機体共々「醜いアヒルの子」などとも言われ、「チンパンジーが操縦しているミグに内側に廻り込まれる」機体だったが、米海軍を皮切りに、米空軍・米海兵隊も採用し、英海軍・英空軍、西ドイツ空軍、イスラエル空軍、スペイン空軍、ギリシャ空軍、豪空軍、韓国空軍、我等が航空自衛隊など西側諸国(※2)で採用され、ジェット戦闘機としては異例と言える5000機以上が生産され、国によっては未だ現役バリバリの、ロングセラー且つベストセラーのジェット戦闘機となった。
思い起こせば「双発戦闘機」なるものは、第2次大戦のレシプロ戦闘機の頃は殆ど「見果てぬ夢」であった。レシプロ戦闘機の主力は我等が零式艦上戦闘機(通称「ゼロ戦」)をはじめとして圧倒的に単発機。エンジンが二つある双発機は、航続距離や武装、時には速度の点で単発機より有利であるが、機体がどうしても大きく重くなり、運動性能に欠ける傾向がある。
このため第2次大戦のレシプロ双発機は、爆撃機ならともかく戦闘機としては、ゼロ戦だメッサーシュミットMe109だ、フォッケウルフFw190だ、グラマンF6Fだ、ノースアメリカンP-51だといった華々しい単発戦闘機に対しどうもパッとしない。
高速力と航続距離に徹し、単座双胴(正確には三胴か)と言う特異な形状のロッキードP-38ライトニングと、やはり高速力で戦闘機と言うより偵察機・戦闘爆撃機・夜間戦闘機として成功した全木製機(※3)デ・ハビランド・モスキートが「成功したレシプロ双発戦闘機」と言えるぐらいで、後はレーダと斜め銃を積んで夜間戦闘機として生き延びた月光とか、対爆撃機専門迎撃機・屠竜(※4)とか、直球勝負ならぬ変化球投手(それも結構な癖球の)として歴史に名を残すものばかり。はなはだしいのになると、メッサーシュミットBf110の様に「戦闘機に護衛さえる戦闘機」なんて不名誉な名を残してしまったり(後に夜間戦闘機として汚名を挽回するが。)、或いは全く名を知られず消え去ってしまったりしている。
だが、ジェット戦闘機は違う。最初のジェット戦闘機メッサーシュミットMe262も、グロスター・ミーティアも、ジェット双発戦闘機である!・・・と、言いたいところだが、何のことはない当時のジェットエンジンが、単発では推力にも信頼度にも不足をきたすと言うのが正味の所だ。1発あたりの推力も信頼性も十分あれば、単発機が双発機より軽くできるのは、ジェット戦闘機でも変わりは無い。それ故に、単発単座戦闘機のミグ(Mig-21など)は、双発復座のファントムIIよりも「内側に廻り込む」事ができた。
但し、ジェット戦闘機に求められる機能は、レシプロ機の頃よりも多岐に渡る。特に戦闘爆撃機或いは攻撃機としては搭載量に余裕のできる双発機が有利であるし、射程と信頼性を向上してきたミサイルをはじめとする新たな空対空兵装にも搭載量が必要だ。F-4ファントムIIが多くの国々で長い事現役でいられたのも、この双発ゆえの搭載量余裕が効いている。(※5)
とは言え、さしもの大ヴェテランF-4ファントムIIもよる年波には勝てず、物持ちの良い事で有名な我等が自衛隊(※6)からもとうとうリタイアが始まった。
即ちF-4ファントムIIの後継機選定が必要になった。
これが現在のF-X。次期主力戦闘機選定である。「現在の」と但し書きをつけたのは、日本の次期主力戦闘機選びは常に「F-X」と呼ばれ、古くは空自初の戦闘機「ハチロク」ことF-86セイバー(※7)の後継機選びから使われている呼称だからである。
即ちF-4ファントムIIの後継機選定が必要になった。
これが現在のF-X。次期主力戦闘機選定である。「現在の」と但し書きをつけたのは、日本の次期主力戦闘機選びは常に「F-X」と呼ばれ、古くは空自初の戦闘機「ハチロク」ことF-86セイバー(※7)の後継機選びから使われている呼称だからである。
<注釈>
(※1)今ではF-15Eストライクイーグルや、Su-33フランカーなど数多い。
(※2)ソビエト連邦崩壊以前、まだ冷戦華やかなりし頃だ。IIAF即ち帝政イラン空軍なんてユーザーもあるが・・・導入当時の帝政イランが親・西側であった事による。何しろ、F-14まで買ってしまった/売ってもらえた空軍だ。
(※3)これも相当特異な構造だ。但し、第2次大戦の頃の技術では、全金属機よりも全木製機の方が表面を滑らかにできたとする説もある。
比強度(質量あたりの強度。木材よりアルミ合金の方が強い。)のために全木製機は確実に重いんだが、往々にして高速で知られている。ソ連のラボアチキンLa-5とか、フィンランドのピヨレミルスキとか。
(※4)この機体で成層圏飛んでくるB-29に対し、相応の打撃を与えた、我等が先人の努力には、全く頭が下がる。
(※5)搭載量だけで、第2次大戦後からヴェトナム戦争まで現役だったレシプロ単発攻撃機A-1スカイレイダーとか、未だに圧倒的な搭載量と航続距離を誇る「足掛け二世紀大爆撃」B-52ストラトフォートレスとかあるから、「より多く」と言うのは軍用機にとって非常に重要なようだ。
(※6)第二次大戦の155ミリカノン砲「ロングトム」が長い事現役だったり、第二次大戦の主力小銃・M-1ガラント半自動小銃が未だにピカピカで儀杖隊の装備だったりする。やっぱり、三自衛隊の中でも特に陸自が一番物持ちは良いか。
(※7)試験的に買ったデ・ハビランド・ヴァンパイヤ戦闘機は2機だけだから、後継機もヘッタクレも無い。
(※1)今ではF-15Eストライクイーグルや、Su-33フランカーなど数多い。
(※2)ソビエト連邦崩壊以前、まだ冷戦華やかなりし頃だ。IIAF即ち帝政イラン空軍なんてユーザーもあるが・・・導入当時の帝政イランが親・西側であった事による。何しろ、F-14まで買ってしまった/売ってもらえた空軍だ。
(※3)これも相当特異な構造だ。但し、第2次大戦の頃の技術では、全金属機よりも全木製機の方が表面を滑らかにできたとする説もある。
比強度(質量あたりの強度。木材よりアルミ合金の方が強い。)のために全木製機は確実に重いんだが、往々にして高速で知られている。ソ連のラボアチキンLa-5とか、フィンランドのピヨレミルスキとか。
(※4)この機体で成層圏飛んでくるB-29に対し、相応の打撃を与えた、我等が先人の努力には、全く頭が下がる。
(※5)搭載量だけで、第2次大戦後からヴェトナム戦争まで現役だったレシプロ単発攻撃機A-1スカイレイダーとか、未だに圧倒的な搭載量と航続距離を誇る「足掛け二世紀大爆撃」B-52ストラトフォートレスとかあるから、「より多く」と言うのは軍用機にとって非常に重要なようだ。
(※6)第二次大戦の155ミリカノン砲「ロングトム」が長い事現役だったり、第二次大戦の主力小銃・M-1ガラント半自動小銃が未だにピカピカで儀杖隊の装備だったりする。やっぱり、三自衛隊の中でも特に陸自が一番物持ちは良いか。
(※7)試験的に買ったデ・ハビランド・ヴァンパイヤ戦闘機は2機だけだから、後継機もヘッタクレも無い。