報じられているのは大阪の核シェルター直輸入会社の発表。この2ヶ月に2年分に当たる売り上げがあったと言うから、単純計算で12倍。「1100%の売り上げ増」と言うことになる。
 
 サブプライムローンに端を発した「百年に一度の未曾有の危機」と言えども、世間一般が一斉に貧乏になったわけではなく、売れる物は売れるという好例だろう。

 勿論、核シェルターという商品にとって、日本が未だ未開のフロンティア市場であることも背景にはある。
 「核シェルター」と言うと何か大仰な物の様に聞こえるが、早い話がちゃんと防備された防空壕である。大東亜戦争の昔には多くの家庭で庭やら裏山やらを掘って防空壕を作ったそうだが、「核シェルター」はその近代版。物としては地下に埋めるモジュール式の地下室と思えば先ず間違いない。誰も彼もがNORAD(北米防空司令部)を持てる訳ではないのだから。
 
 その防備は、モジュラー式地下室の壁の材質もさることながら、「地下に埋める」事による効果が大きい。放射線は水か土が1mあれば百分の1に減衰すると言われるから、地下2mに丸埋めすれば、地表の1万分の1の放射線しか受けず、大分凌ぎやすい。
 勿論核シェルターを丸ごと埋めてしまっては、クローズドサイクルを組めるぐらいの大規模な地下室でない限り、呼吸が続かないから、外気を取り入れて、外気から放射性物質を取り除くための仕掛けが必要になるが・・・案外、数人の人間をまかなうぐらいなら、この仕掛け、大規模な物にはならない。手回し式のエアフィルターで事足りてしまう。

 だから、「核シェルター」という大仰な名前にも関わらず見た目は扉が厚かったりごつかったりするだけの地下室だ。
 
 「そんな物が核兵器に対して役に立つのか。」と言う疑問は当然あるだろうが、これまた結構馬鹿に出来ない。無論核兵器なんて大破壊力持つものの直撃や数kmほどの至近弾に対しては、さしもの市販「核シェルター」もひとたまりもないが、一寸離れれば壊れることはない。地上に放射能の嵐が吹き荒れようとも、地下シェルターでしばらく暮らせば、その放射線も減衰する。爆発の際発生する一次放射線の減衰はもっと早いから、ちゃんとした設備とちゃんとした準備(食料や水など)を持っていれば、核シェルターは相当に有効である。

 であるから、諸外国、特に先進国では公共の核シェルターという物が多々あるし、スイスに至っては新築の家には核シェルターの設置が義務づけられ、全国民を収容して余りあるほどの核シェルターを、随分前から整備維持している。

 イギリスはロンドンの地下鉄にはごつい防爆扉が備えられていて、第2次大戦時には防空壕として役に立ったが、今では核シェルターの機能もあるのに違いない、と私は踏んでいる。

 さてかくもこの世には核兵器よりも核シェルターの方が遙かに普及している(当たり前だな。)のだが・・・「世界唯一の被爆国日本」には、上記報道にもある通り

> 日本は世界で唯一の被爆国だが、国内に核シェルターはほとんどない。

 これもまた、戦後平和ぼけ日本の一風景か。

 しかしながら、報じられているとおり、少なくともここ2ヶ月間の間に相応の数の核シェルターが売れたと言う。

 北朝鮮の長距離弾道弾発射が、日本人の防衛意識に望ましい変化をもたらしたとすれば、これはひょっとして「災い転じて福となる。」かも知れない。

 我々日本人が、我々の歴史の中で、何度か演じて見せたように。