イギリスと言えば「大英帝国」。「紳士の国」と言うイメージもあるだろう。歴史的に見ると、イギリスの外交は必ずしも紳士的ではない・・・どころか全くその逆である事例も多々あると思うのだが、「太陽の没することのない帝国」を築き上げたことは、今でも自慢の種なのだろう。お国自慢は人間の根元的な感情の一つだ。
 そのイギリスが鉄道を発明したというのも歴史的事実だから、これまた自慢の種にするのはよくわかる。
 だがしかし・・・
 
 報じられているのはその英国の鉄道事業の優先交渉権を、日本の日立製作所画賛化する共同出資会社が獲得したことについて、「一部メディアや反対派から怒りの声が起きている。」というもの。
 
 優先交渉権を獲得し損ねたカナダ、独、英の企業による共同出資会社が、「この決定に「非常に残念」とする声明を発表した。」と言うのはまあ良しとしよう。
 「不正があったというなら兎も角、資本主義市場原理に基づく自由競争で優先権を獲得された/したなら、天地俯仰に何ら恥じることはない。 
 然るに声明だと?ここで言う「一部メディアや反対派の怒りの声」を煽っていないか?」と思わなくはないが、商売がうまくいかなければ、不平の一つも出よう。
 
 米国初の金融破綻以来、特に英国が喰らった影響が大きく、英国の経済が苦しいというのも理解する。仄聞するところに依ると、英国£の対円レートは、金融危機以来半分になってしまったとか。
 逆に言うと日本の円は英国£に対し≒2倍に値上がりしたわけで、これは日本からの輸出にとって極めて不利な条件だ。
 
 日立はこの不利な条件を突破して、少なくとも優先交渉権を獲得したことになる。
 
 それが不当なダンピングや不正によるものだったら、それこそライバルの「カナダ、独、英の企業による共同出資会社」が黙っては居まい。黙っていると言うことは相応の事が日立にはあったのだろうと推測され、またその推測は(推測の域を出ないが)説得力がある。
 「鉄道は英国が発明した。
  鉄道網は日本が発明した。」
と言うのは、立ち読みしたさる本のフレーズだが、日本ほど鉄道が独立採算で商売になっている国はないそうで、その理由が日立始め日本メーカの造る鉄道及び鉄道車輌と言うハードウエアにあるとすれば、イギリス政府でなくても買いたくなるだろう。

 それに対し報じられているところでは、日本のメーカが英国の鉄道事業を受注することで、英国人の雇用機会が損なわれると懸念を示す。早い話が「バイ・アメリカン」ならぬ「バイ・ブリティッシュ」を主張している訳だ。
 
 かつて、蒸気機関を以って産業革命の先陣を切り、世界の工場名を恣にし、「世界第2位の海軍と世界第3位の海軍を同時に敵に廻しても勝てる世界第1位の海軍を保有する」と言うドクトリンを掲げて実現していたかつての大英帝国が・・・・自国の鉄道事業に、日本のメーカが参入するのが気にいらんのだと。
 
 誇りというのは確かに大事だが、盲目的な自尊心や中華思想は、結局おのが器を狭めるばかりですぜ、エゲレスさん。