「制海権は通商権である」と言うキャッチコピーは以前にも使った。「制海権は制空権である」ともじったものだが、後者の方は大東亜戦争中のスローガンであるとの御指摘も頂いた。「・・・通商権である」の意味するところは、制海権を得る目的に焦点を当てたもの、とも同じ記事で書いた。「制海権は通商権である」 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/21536213.html

 制海権ならぬ通商権の確保と言う意味では、大東亜戦争中の日本よりも現代日本の方がより重大である。何しろ石油からして中東からはるばる運ばねばならないし、エネルギー源だけでも石炭、ウラン、天然ガス、何れも産地は地球の反対側と言って良い。無論工業原料も、食料もその大半は回路海外から運び込まれるし、逆に売る方の工業製品はそれこそ全世界に販売している。「満蒙(満州と蒙古)は日本の生命線」なんてスローガンも戦時中にはあったそうだが、今や日本の生命線=通商路は、全地球に及んでいると言っても過言ではない。
 かかる長大な通商路の安全は、海洋国・日本にとっての重大関心事であるはずだ。その通商路の相当部分は、アフリカはソマリア沖を通る。
 
 ここに海賊=通商破壊者が跳梁跋扈するとあっては、日本の繁栄と反映を望む者であれば、おちおち枕を高くして眠ってもおれないだろう。
 日本政府の中にもそう考える者がある程度居るようで、漸く重い腰を上げた与党プロジェクトチームが「海上警備行動の発令による海上自衛隊艦船の派遣を了承した。」と言うのが報じられているところ。
 
 現法律下での「海上警備行動」では日本人と日本船籍しか守れず、通商権確保に甚だ心許ないが、報道に依れば「海上保安官が海自艦に同乗して取り調べなどを担当する。」そうであるから、苦肉の策ではあるが、何とか対策しようと言う努力の跡は認められる。それはそれで評価しよう。
 ソマリア沖海賊対策派遣の上で、中国にさえ後れをとるとは情けないが、それも麻生内閣だから漸く動き出した(福田内閣では今だ動けまい。)と思えば、腹立ちも紛れる。
 
 現法制下の限界も麻生首相は承知のようであり、であればこそ、ソマリア沖派遣のための新法検討の動きもある。これについては「まず派兵ありきだ」とか「海上保安庁でも不可能ではない」とか共産党がかみついているようだが、補給艦も洋上補給能力も持たない海上保安庁では遠洋展開は極めて能力が限られ、事実上プルトニウム輸送船護衛に建造された「しきしま」ただ1隻(交替も何も無し)に押しつけてまで「自衛隊を派兵するな」と言う主張は・・・共産党の主張が理不尽だったり不可解だったりするのは毎度の事ながら、日本人全体の国防意識・知識のレベルの低さとも、無縁ではないだろうと、改めて嘆息せざるを得ない。
 
 とは言え、漸く動き始めた海上護衛任務。
 引き続き、明確な交戦規定の速やかな成立を祈りたいものだ。(難しそうだけれど。)
 
 「交戦規定、作れぇぇぇぇ!」