思想侵略!-田母神前空幕長国会招致に対する各社社説から-

 「思想侵略」とは我ながら過激なタイトルだ。実際、実体にそぐわない誇大タイトルであってくれば良い、とは思う。だが、田母神前空幕長の更迭劇及びその後の国会招致を巡る各新聞社社説に見られる言説は、少なくとも民主主義の危機と断ぜざるを得ず、一寸思いを巡らせば(勘を働かせれば、と言っても良い。)これは大新聞各社が思想侵略の片棒を担ぐ売国行為を行っているのではないかと思わせるものがある。
 
 これは看過して良い問題ではなさそうだ。
 
 何もマスコミの「売国行為」は今に始まったことではなく、センセーショナルくらいの煽動者故の売名・売国行動は明日にも終わるものではないであろうが、今、そこにある危機はしっかり認識すべきである。
 現状認識は戦術の第1歩だそうだから。

1.新聞4社の社説の共通点

 毎日、読売、朝日、日経の四紙の11/12付け社説をまとめて読んだ。田母神前空幕長が国会に招致された事を受けて、各紙とも田母神論文批判、自衛隊批判、政府批判の大合唱である。
 いずれも田母神氏が政府見解に反する論文を公表した事を批判し、その理由を文民統制の故と言う。「自衛官にも言論の自由がある。」と言う田母神氏の尤も至極な主張を「言論の自由のはき違え」「危険な空気」と一蹴し、再発防止策として「幹部教育の見直し」等、思想統制や思想による人事管理を当然のこととしている。この場合、思想統制の方向は「政府見解」である所の村山談話に沿ってなされるべきだと主張して、疑う所がない。
 「むろん、自衛官にも言論の自由はある。」と言ったフレーズもあるにはあるが、その言論の自由を「はき違えるな」とタイトルで制限しているのだから、アリバイ作りの言い訳フレーズと見るべきだろう。

 繰り返しになるが整理すると、毎日、読売、朝日、日経の大新聞4社はその社説で共通して、自衛官は政府見解である村山談話に反する言論を発するべきではないとし、「再発防止」のために田母神氏のような大日本帝国擁護論を排除し、隊員教育、幹部教育を通じて村山談話にある大日本帝国悪玉論を徹底する思想統制をしくように求めている。
 

2.新聞4社の相違点-驚くほどの少なさ-

 あまりに論調が合致している大新聞4社であるが、相違点を探していくと、朝日新聞の「自衛隊は大日本帝国陸海軍を否定することが原点だ」論ぐらいだろうか。これとて、村山談話にある大日本帝国悪玉論の発展系でしかないのだから、基調トーンはほかの3紙とさして変わる所はないのだが、さすがは朝日と言うべきか、徹底した「戦前と断絶すべき」論を展開している。

 
3.再考;言論の自由と文民統制について

 さて、私が何故慄然としたかをそろそろ書こう。
 一つには、大新聞4社の社説の論調があまりにも揃っていたこと。特に朝日と読売では、タイトルからしてそっくりだ。
 これら大手新聞社の論調が似たり寄ったりで大差ないのは以前から知っていたが、それにしても同じ日にこうも類似したタイトルを付けるとは、予め打ち合わせでもしたのではないかと勘ぐりたくなる。
 まあ、社説のタイトルの打ち合わせぐらいは特に問題ではない。ある種のカルテルかも知れないが、大した実害にはならない。
 が、いくら自衛隊という限られた集団に対してであれ(いや、限られているからこそ、か。それは、自衛隊に対する差別意識そのものだ。)思想統制や信条に対する差別を、事も在ろうに言論の自由の守護者であるはずのマスコミが、容認どころか推奨する、否、思想統制せよと糾弾するその異常さは、戦慄とか慄然とか言う表現だも未だ足らない恐怖を私に感じさせたのである。
 
 その思想統制が「政府見解=村山談話=大日本帝国悪玉論」と言う「正しい方向である。」と言うのは、何の慰めにも言い訳にもならない。思想統制を実施する者(※1)は、大概自分が正しいと思う方向に思想統制するのである
 
 勿論、「政府の言うことに軍人が従う事が文民統制である。」と言うのも言い訳にならない。何度も書いているが、文民統制にも自ずと範囲があり、個々人の思想信条や歴史観まで統制する理由にはならない。それらは自由な議論の対象であるべきで、それは軍隊の中でも自由であるべきだ。自由な議論が在ってこそ、強い軍隊になれるのだから。
 
 これまた何度も書いているが田母神氏はおのが大日本帝国擁護論を絶対のものとはしていない。それは自由な議論の対象としている。

<注釈>
(※1) 逆に思想を統制しないと正しい方向に進まないと言うほど、方向にも思想にも自信がない状態、と言うことだが。


4.警戒せよ、思想侵略に-政府見解を、近隣諸国の歴史観を、自衛官に強制せよと、マスコミが言う怪-

 さらに言えば、その村山談話=大日本帝国悪玉論は、マスコミだけでなく近隣諸国、分けても中国、韓国、北朝鮮のお気に入りであり、自衛隊への村山談話強制が間違いなく国防力の低下を招くことと考え合わせるならば、今マスコミが嬉々として訴えているこの思想統制が、「日本侵略を狙う、少なくともその可能性を排除しない、外国勢力による思想侵略」と考えてはいけない理由はない。
 マスコミは図らずも(かどうかは判らないが)、この思想侵略の片棒を担ごうとしているのである。

 「戦争煽り」?そうかも知れない。
 治に居て乱を忘れず戦いに備えるのは武門の習い。ひいては国防をまともに考えようとする民主主義国家における国民の努めであろう。
 だが忘れないで欲しい。
 自衛隊に対する思想統制を訴え、国防力の低下を引き起こそうとしているのは大新聞4社をはじめとするマスコミとそれに同調する国民(の一部、かな)だ。そのような事態が日本侵略の危機を高めていると私は警告しているが、私が警告しているから日本侵略の危機が高まるわけではない。

 私は魔法使いでも予言者でもないのだから。

 さて、諸君はどう考えるか。