原題:X Standards for Unknown
アシモフの科学エッセイ(9) ハヤカワ文庫NF
かつて、ハヤカワNF文庫で出ていた、アシモフの科学エッセイシリーズの一つ。
アシモフを知らない人のために一寸解説すると、SF小説作家として非常に知られており、先頃映画化された「アイ・ロボット」の原作者、と言えばおおかた通じるだろうか。尤も、映画「アイ・ロボット」の原作「我はロボット」は、映画のど派手アクションとは似ても似つかぬ知的な小説である。
この「知的」と言うところに留意されたい。とかくSF作家と言うと荒唐無稽な大ボラ吹きと思われがちだ。勿論そう言うSF作家もいるのだが、アシモフにしろ、アーサー・C・クラークにしろ、SFでも古典と言われるほどの作家の中には、荒唐無稽とも法螺とも無縁な作家が存在する。
確かにSF作家であるが生化学者でもあり教育者でもある多芸多才な人がアシモフである。(※1)
「科学エッセイ」と言うと厳めしく思えるが、そこは天性の文筆家(※2)にしてストーリーテラーであるアシモフ博士のエッセイ。ユーモアとウイットに富んだ科学史などを描き出してくれる。ハレー彗星から整数論までその範囲も実に多彩だ。
本書の中では、占星術の不合理性と「普及」を批判した「夜の軍隊」がその白眉と言えよう。
こんな優れたエッセイが、安価にして大量販売される文庫で読めないと言う今の出版状況は、間違いなくかつてに比べて不幸だろう。
まあ、Amazonをはじめとするネット通販が、「欲しがる人の所に欲しがる本を届ける」「知っている人には知っている本を届ける」と言う機能を果たしてはいるのだろうが・・・ぶらりと入った本屋で、装丁だかタイトルだかに目を留めて手にした一冊の本が、一生の宝となると言う事態こそ、本屋の存在理由では無かろうか。
だから、私は、デカイ本屋(※3)、マニアックな本屋(※4)が好きなのだ。まあ、最近行っていないが。
<注釈>
(※1)ロシア革命の混乱を避けてアメリカに亡命したユダヤ系アメリカ人。アシモフにシコルスキー、カルトべりにブロンソンと、ロシアも革命で大分損をしている。
(※2)天職、と言うのはあるものだ、とアシモフの文章を読んでいると思う。そりゃ法螺や自己弁護がないとは断言できないが、「考えるのと同じスピードでタイプを打てる。」と言うのは、タイピストとしても超一流と言うことだろう。しかもその考えるスピードが、遅いというなら兎も角、とんでもなく速いのだから。
(※3)神田、お茶の水に林立する、書泉系列、三省堂など
(※4)神田の文華堂など。
アシモフの科学エッセイ(9) ハヤカワ文庫NF
かつて、ハヤカワNF文庫で出ていた、アシモフの科学エッセイシリーズの一つ。
アシモフを知らない人のために一寸解説すると、SF小説作家として非常に知られており、先頃映画化された「アイ・ロボット」の原作者、と言えばおおかた通じるだろうか。尤も、映画「アイ・ロボット」の原作「我はロボット」は、映画のど派手アクションとは似ても似つかぬ知的な小説である。
この「知的」と言うところに留意されたい。とかくSF作家と言うと荒唐無稽な大ボラ吹きと思われがちだ。勿論そう言うSF作家もいるのだが、アシモフにしろ、アーサー・C・クラークにしろ、SFでも古典と言われるほどの作家の中には、荒唐無稽とも法螺とも無縁な作家が存在する。
確かにSF作家であるが生化学者でもあり教育者でもある多芸多才な人がアシモフである。(※1)
「科学エッセイ」と言うと厳めしく思えるが、そこは天性の文筆家(※2)にしてストーリーテラーであるアシモフ博士のエッセイ。ユーモアとウイットに富んだ科学史などを描き出してくれる。ハレー彗星から整数論までその範囲も実に多彩だ。
本書の中では、占星術の不合理性と「普及」を批判した「夜の軍隊」がその白眉と言えよう。
こんな優れたエッセイが、安価にして大量販売される文庫で読めないと言う今の出版状況は、間違いなくかつてに比べて不幸だろう。
まあ、Amazonをはじめとするネット通販が、「欲しがる人の所に欲しがる本を届ける」「知っている人には知っている本を届ける」と言う機能を果たしてはいるのだろうが・・・ぶらりと入った本屋で、装丁だかタイトルだかに目を留めて手にした一冊の本が、一生の宝となると言う事態こそ、本屋の存在理由では無かろうか。
だから、私は、デカイ本屋(※3)、マニアックな本屋(※4)が好きなのだ。まあ、最近行っていないが。
<注釈>
(※1)ロシア革命の混乱を避けてアメリカに亡命したユダヤ系アメリカ人。アシモフにシコルスキー、カルトべりにブロンソンと、ロシアも革命で大分損をしている。
(※2)天職、と言うのはあるものだ、とアシモフの文章を読んでいると思う。そりゃ法螺や自己弁護がないとは断言できないが、「考えるのと同じスピードでタイプを打てる。」と言うのは、タイピストとしても超一流と言うことだろう。しかもその考えるスピードが、遅いというなら兎も角、とんでもなく速いのだから。
(※3)神田、お茶の水に林立する、書泉系列、三省堂など
(※4)神田の文華堂など。