先回の「国内軍需産業は必要である」は、私の記念すべきブログ記事第1号でありますが、一般論として述べており、日本に特定の議論にはなっておりません。(もちろん念頭に置いていたのは我が国、日本なのですが。)
 しかしながら広く世界を見渡すと、数百もあるという国の内、国防に用いる兵器を全て、弾薬から戦闘機まで国産で賄っている国は、数えるほどです。米国、ロシア、中国、フランス(※1)ぐらいでしょうか。
 で、何故そうなるか。現実は厳しい(でも日本の力ならば克服可能)というのが今回の話。

(9) 国内軍需産業は必要だが、国情にベストマッチした兵器が他国に売れるとは限らないし、兵器の輸出に政治的規制がかかる場合もある。このような場合、国産兵器は国内にしか需要がないことになり市場規模が制限される。
(10) 市場規模が制限されれば、数が売れない。開発費はその少ない数に割り振らねばならないから、国産兵器の単価が高くなりやすい。
(11) その開発費は近年、兵器の高度化に伴って増大しており、西欧諸国でさえ単独では開発費を賄えず、航空機や軍艦などを中心に、国際共同開発する事が増えた。(※2)即ち、独自国産開発と言うのはそれだけ困難になった。
(12) さらに、兵器の高度化は開発のためのバックグランド技術にも高度なものを要するようになった。弾薬や銃器のような比較的単純な兵器でさえ、独自開発できる国は、そう多くない。
(13) かくして世の大半の国は、兵器の国産=独自開発よりも、他国で開発された兵器を輸入・装備している。この方が兵器の単価を抑えられる場合もあり、数を揃えるには良いこともある。

(14) 翻って我が国・日本はと言うと…今の所核兵器を開発する予定はないが、F-1、F-2といった支援戦闘機を曲がりなりにも国産あるいは日米共同開発しているから、まずバックグランド技術としては相応のレベルにある。日本が開発もしくは共同開発していない兵器についても、そのうち一部はライセンス国産即ち「設計図を買ってきて国内メーカで製造」したものであり、F-15制空戦闘機、Patriot地対空ミサイルなどがこれである。ライセンス国産ならば、日本流のアレンジや小改修を実施できる可能性があるが、機密Black Boxとされている部分は、勝手にいじれないだろうから、「国情に合わせる」のも限界がある。
(15) さらには、未だ海外調達つまり海外から(※3)の輸入品であるものもある。調達はするが、数があまりに少ないのでライセンス国産してもコストが高くなるなどメリットが少ないもの等がこれにあたる。が、スタンダード艦対空ミサイルなどは、相応の数調達されるのに今だ海外調達品。口惜しい限りである。

(16) では、我が国はどこまでの兵器を国産=独自開発すべきでしょうか。

(17) 「可能な限り、全て」と私は主張したい。先述の通り、それを可能とするだけのバックグランド技術はほぼ完備している(※4)。となれば後はコスト、防衛費の問題となる。
(18) 勿論財政事情厳しき中、諸物価高騰(※5)の折、防衛費抑制のために「多少国情に合わずとも、単価の安い海外調達品」という圧力が高まるのも理解できます。
(19) が、抑止力と言うのは装備された武器の数ばかりではない事をお忘れなく。無論それを操作・指揮する将兵の技量とその上位の戦略決定もさることながら、国産武器なればこそ修理・改修・大増産を直接行えるのであり、これが抑止力足りうるのです。
 
 以上により、

 「国産兵器作れぇ!」   (樺山資紀にはほど遠いなぁ)

<注釈>

(※1)イギリスを加えれば、見事に五大核兵器保有国じゃないか。まあ、必然でしょうが。
 核兵器は普通、輸入もライセンス生産もできないから、国産しかない。

(※2)国際共同開発ゆえに、途中で空中分解・開発中止となることもあるから、要注意である。

(※3)殆ど米国から、だが

(※4)このあたり、結構独断入ってます。

(※5)最近の燃料価格高騰は、米軍にも我が自衛隊にも影響し、訓練時間を削減せざるを得ないとの情報もあります。