夕方、大我は、花壇にいた。
大我は花壇に花束を置く。
今日は死んだ奈美の命日だったが奈美の母校は存在しないため仕方なくこの場に置く事とした。
「何してるの?」
そこに青井亜美がやってきた。
「この花束は何?」
「別に何でもない」
大我は去ろうとした。
「私、今の病気治りそうなの」
大我は思わず振り返る。
「だから聴力を失う心配はないみたい」
「そうか…良かった」大我は嬉しく感じた。
「私…高校生活残り少ないけどでもこの残り少ない高校生活を楽しもうと思う」
亜美は誰とも関われないで1人でいたがしかし大我との出会いで友達が出来明るくなれたようだった。
そして大我も今は1人じゃなくなった。
「今思うとお前と俺は似ていたな」
「そうだね。そして今の状況も同じだね」
それを遠くから蓮と奈美が見ていた。
「大我楽しそうだね」
「そうだな」
ずっと死んだ彼女をひぎずっていた大我が今では前を向いて生きていると思うと蓮は嬉しく感じた。
この時期、大我の心境に変化があった。
翌日、大我が花壇に行くとそこに蓮と奈美がいた。
「なんでいつもいないお前達がいる」
「昨日、お前が花を見ているのを見て俺たちも見たくなったんだ」
すると亜美もやってきた。
「2人もいたの」
「まぁな」
大我は何故が今蓮と奈美がいる事に対しあまり快く思えなかった。
「そういえば大我君、彼女イルの?」
「…前はいた。別れたけど」
「そうなんだ…でもなんで別れたの?」
大我は思わず声が詰まった。
そして大我は数年前の出来事を思い出した。
別世界の奈美と初めて出会ったのは入学式だった。
別世界の奈美は明るくて笑顔が似合う少女だった。
大我はそんな奈美に惹かれ振り向いてもらうために努力してそして奈美と付き合う事が出来た。
しかし奈美は病気になり学校に来なくなった。
大我は奈美の病気は治ると信じていたが結局奈美は死んでしまった。
奈美は生前花壇によく来ていたがしかし死後、当たり前だが奈美はいないため大我はずっと1人で花壇を悲しく見ていた。
そんな時に天使が現れ大我はこの世界に来た。
ふと大我は気付いた。
――俺はもしかして亜美の事を好きなのか?
奈美の死以来、それを乗り越える事が出来ていなかった大我にとっては亜美は久しぶりに好きになった相手だった。
そしてそのモヤモヤは数日間続いた。
ある日、大我が屋上にいるとそこに亜美がやってきた。
「どうしたの、屋上に呼んで」
大我は緊張していた。
――こんなに早く告白して良いのか
大我は迷っていた。
すると雨が降ってきた。
「雨だわ」
亜美は思い出す。
「……私…ずっと好きだった人がいた」
大我は注目する。
「同じ病院に入院していて好きだったけど雨の日彼は死んじゃった」
「それ以来恋愛をするのはやめようと思った」
「……どうしてそんな」
「失って傷付くぐらいなら付き合わない方が良い。まだ同じ悲劇が起こりそうで」
亜美はトラウマを感じていた。
「……そんなの…ただの逃げる言い訳だろ」
亜美は大我を見る。
「あなたに何が分かるの? 色々失ってまだ失うかもしれない私の気持ちを」
「そんな事したって何も変わらない。余計自分が駄目になっていくだけじゃないか」
大我は気付いた。
――俺もこの世界に逃げたんだ…俺も亜美の事言えない
「…うるさいよ…同じ立場じゃないくせに」
亜美は帰ろうとしたが大我は亜美の手を掴む。
亜美は振り返る。
「俺も形が違くでも大切な人が戻ってくるとずっと信じていた。でも俺は知った。過去を受け入れて未来に歩んでいかないといけない時もあると」
雨の中、2人はずぶ濡れになってしまう。
「あなたに何が分かるの」
亜美は行ってしまった。
大我はショックだった。
同時に前の自分を見ているように感じた。
翌日、蓮たちが屋上にいるとそこに重い表情の亜美がやってきた。
「どうしたの?」奈美は心配する。
「大我君の事だけど…大我君ってどんな人なの?」
「大我ね」鎧は前に出る。
「大我は何を考えているのかよく分からない奴で色々困ってるんだよ」
「お前は黙ってろ」修は鎧を後ろに突き飛ばす。
月美は亜美を見る。
「大我は無表情で最初は威圧的だったけどでも本当は優しくて彼には救われた人もいる。ただちょっと分かり合うのが難しいだけで」
「そうだったんだ」
そして亜美は昨日の事を話した。
「そんな過去が」
「恋愛しようがどうしようが私の勝手だしトラウマなのに大我はそれを拒否する」
「……悪いが俺も大我と同じ意見だ」千は意見した。
全員が千を見る。
「あなたね」美羽は千を睨む。
「トラウマなんか言い訳にならない。それより前に進まないと」
「悪いが俺の同意見だ」修も同じだった。
「俺も夢を失うトラウマを味わったがそれでも前を向いて進んだからここにいる」
「あなた達に何が分かるの?」
「分かるさ」剛は意見する。
「俺にも亡くなった兄がいる。だから大切な人がいなくなる気持ち分かるさ」
蓮は亜美を見る。
「大我の彼女は病気で亡くなっているんだ」
「え?」亜美は驚いた
「大我は彼女を病気で亡くし過去に執着していた。だから似たような人と付き合って心の穴を埋めようとした。大我も君と同じように過去を乗り越えられない人間だった」
「でも大我は過去を受け入れて未来に進む事にしたんだ。もしかしたら大我は君が自分と重ねって見えたのかもしれない」
亜美は大我の過去を知り悲しむ。
夜、亜美は部屋でうつ伏せになって考えていた。
「どうしたら良いの?」
すると電話がかかって来た。
それは奈美だった。
「もしもし」
「青井さん…大丈夫かと思って連絡したの」
「…私はどうしたら良いか分からない。このまま大我君と付き合って良いのか」
「……青井さんは大我の事…好きなの?」
「……好きだよ…でもこの気持ちのまま付き合って良いのか分からなくて」
「人間誰でも不安はあるよ。でもそれでいいと思う。人はみんな不安を抱えたまま未来を歩んでいると思う」
亜美はしばらく考えた末、決意する。
翌日、雨の中、大我が屋上にいるとそこに亜美がやってきた。
「亜美」大我は驚く。
「私、あなたが辛い思いをしていたなんて知らなかった」
「誰かが話したのか」
「…でも私も乗り越えたいと思った。こんな嫌な過去を」
大我は注目する。
「俺も彼女の死を乗り越えたと思っていた。でも今もどこかで彼女の事を引きずっている。だが一つだけ決めている事がある。もう過去には戻らない、未来だけを見ると決めている」「過去は過去のまま受け止めていく」
その言葉を聞いた亜美は大我を見習いたいと思った。
「亜美、もう一度言う。俺は亜美の事が好きだ。俺と付き合ってくれないか?」
「…はい。お願いします」
大我は表情は変えないが内心とても嬉しく感じた。
「ありがとう亜美」
亜美は笑顔だった。
そして雨がさっきよりも弱くなった。
空を見るとそこには虹が架かっていた。
「綺麗だね」亜美は笑顔になった。
「初めて見たな。でもこんなに綺麗だったとは」大我は虹を見て感動した。
大我は奈美の言葉を思い出した。
――大我、もし私が死んでも私ばかり考えないで。他の人を好きになっても私はあなたを恨んだりしないから。
大我は思わず心が温かくなった。
――何でこんな事を忘れてしまったんだ。
――奈美、俺は前に進む。これからまた大事なものを失うかもしれない。でも俺はもう立ち止まらない。俺には仲間がいる。俺を支えてくれる仲間がいる
