村上 龍
最後の家族
村上龍の作品らしくない、作品といっておきます。(書評にも書かれていますが)
彼の目的は、今の日本の家族の在り方に対してひとつの大きな疑問を投げかけています。

家族の「絆」とは何か。

リストラに悩む父親、家族の問題に悩みカウンセリングに通う母親、引きこもりの長男、そんな家族から自立をなんとか見出そうとしている長女・・彼らの生活を冷静な視点で淡々と綴り、かつ最後には明るい未来があるとほのめかした結びは読んでいて救われました。
最近のニュースでも記憶に新しい、肉親同士で恨みあい最後は殺してしまういう哀しい結末。こういうことは、もうリアルで十分ですよね。

長男が隣家で起こるDV(ドメスティック・バイオレンス)を目撃し、虐待されている女性を救おうとすることから、一家にひとつの大きな事件が起こります。
「人を助ける・守りたいと思うことで、自分が救われる」ということが、この小説の中でのくだりがあります。父親は、家族。母親は息子。長男は隣家の女性。。それぞれ自分の中に抱えている問題が、実は相手の存在があるからこそなのですが、それが一方通行では単なるお仕着せであり、思いやりにならないということ。人間はその中でどうやって気持ちを通じあっていくか、努力していくことによって自分が成長していくかを考えていかなければならないのです。

村上さんは、この小説を書くにあたって、心理学者やカウンセラー、実際にひきこもりの子供を持つ家族など実にたくさんの方の取材をしたとのこと。それだけ今回は真実味を帯び、私はぐっと引き込まれました。
村上作品の新しいジャンルとして、是非注目したい小説です。