- 石田 衣良
- うつくしい子ども
そんな犯罪を犯す側も、未成年者だったりする。
メディアは、大げさに取り上げるが、逆に事件が多すぎて、驚かない自分が居たりする。
・・・世の中は麻痺している。
サカキバラ少年の事件も、数年前に起きたことだが、あの報道は世の中を震撼させた。
その事件をオマージュとしたのか、この石田さんの小説「うつくしい子ども」でも、殺人者は中学1年生。彼が小学生の女の子を猟奇的に殺害するという衝撃的な事件をきっかけに、周囲の人間模様を切々と描いた内容だ。
殺人者の弟を持つ兄、通称「ジャガ」と新聞記者「山崎」の2人の視点で、事件後の街の人たちの反応やメディアの騒ぎが語られていく。
石田さんは、池袋ウエストゲートパークでも手腕を発揮したが、今の子ども達の不安定(時に残忍で計算高い)な気持ちを描くのが上手い。常に私たちが、そういう時代と対峙しているとはいえ、なかなか若年者の視点まで下りて、彼らの心情に近づいていくのは、難しい。
この話は、最終的には希望があるという前向きな終わり方で、良かったのだが、実際はそうは行かない。被害者・加害者の家族、ともに悲惨な道が待ち受けるだろうから。