沢木 耕太郎

この小説は、読んでいて「痛い」の一言につきます。
主人公たちの山への熱い「思い」と喪失した肉体への「痛み」が、私に沢木さんの文章を通して激しく伝わってきたからでしょうか?

「凍」は、天才クライマー山野井夫婦の、チベットの難壁の一つギャチュンカンという山へ挑んだ記録です。
難所の上に、悪天候が続きビバーク(一時的に避難)をしていたところに、襲う雪崩。凍傷や疲れによる睡魔のため、死の淵すれすれで、奇跡の生還を果たします。
これで彼らは手足の指を失うことになるのですが、最後はハンディキャップをものともせず、再度登山にチャレンジし、新たな壁を征服するのに成功したと言う報告でこの本は終わります。
半ば、あきれるというか信じられません・・。なぜその敢えて過酷な環境へ向かっていくのか?自分の限界を試すというより、ひとつの信念を貫き通すがために、彼らは山を登るという気がしてなりません。

人間はいろんなものを発明して、進化しているように見えても、実は大自然の前ではたった一つの小さな生物に過ぎないということを思い知ります。

彼らの素の力で、到底勝つことは出来ない大きな自然に挑んでいく姿がとても、雄々しく感じられました。特に今回の登山は夫婦で登り、まさに生きるか死ぬかのところで二人の「愛」も試されるところ。彼らは相手を尊重することをどんなときも忘れず、「登山」という大好きな時間を共有する、その心意気が、カッコイイ。

ドラマティックな彼らの生き方、私たちの日常には全然参考にはなりませんが、素敵だと思いました。